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ソファーの行方☆ 秋の句

奇しくも配送・回収の関係で、一日だけ新旧のソファーが並んだ。

回収される方の古いソファーを見て、

「このソファーは燃やされるの?」

と娘が聞く。

「燃やされないよ。埋め立てゴミになるんだよ。」

「ずーっと、ポツンとそこにいるの?」

「ポツンではないけれど・・・」

昔社会見学で行ったごみ処分場を思い出し、

そこにこのソファがずっとある光景が浮かび、

だんだん私も悲しくなってきた。

そしてその光景を娘に説明することは出来なかった。

捨てるってこういうことなんだ、

ということを突き付けられる。

「まだこのソファー使いたいよ。二つ使うのはダメなの?」

だけど、子どもたちが飛び跳ねたりしているうちに

完全にお尻にバネを感じるようになった今、

もうリサイクルショップへも行けない。

「大事に使えばね、リサイクルも出来たんだよ。」

「でも、壊れてなかったらリサイクルにも出さないでずっと使うよ。」

そうだ、その通りだ。

このソファーはとってもお気に入りなんだ。

何と言ってもこの家が建った時に夫と二人で選んだソファーなんだ。

正確に言うと、まだ結婚前だった。

私と彼(夫)が出会ったちょうどそのタイミングで、

家が建った。

彼は病気のお母さんのために、最後の親孝行として家を建てる決心をしたのだという。

彼のお父さんは彼が大学生の頃に亡くなっている。

建て替えるつもりが結果的に近くの土地に新築を建てることになったらしい。

そして家が完成したのと同時に、私と出会ったのだった。

初めて家を訪れた時、テレビとパソコンだけが床に直置きされていて

二人で寝そべってミスチルの「HANABI」を聴いた。

結婚もしていないのに、私はなぜか彼と彼のお母さんと三人で

周囲への引っ越しの挨拶にまわり、

新居に置く新しい家具を彼とデートしながら選んだ。

古い家から持ってきたものもあったので、

この時二人で選んだのは

ダイニングテーブルセット、テレビ台、カフェテーブル、電話台、

そしてこのソファーだった。


彼のお母さんがここで暮らせたのは一年ほどとなった。

出会ってから三年近く経って、ようやく私たちは結婚をした。

ソファーはとっても良いもので、そこのホームページには

長く使いたいというお客様の声が多く、

在庫がある限り、マット部分などの販売をしてくれるという。

我が家もそれを利用するつもりだった。

だけど、あまりに全部がへたってしまった。

背もたれも、座面も、ヘッドも、オットマンさえバネの硬さを感じるように。

これ全部取り替えたら、普通にソファーが買えそうな気がしてきたのと、

10年以上経っているので、在庫が残っていると思えない事、

そして先日、いつかはこれが欲しいなと思えるソファーに出会ったこと。

「いつか」だった。

まだ子どもは小さいから、新しいソファーでまた飛び跳ねられては困る。

汚す可能性だってまだまだあるだろう。

今のソファーはカバーが取り外せて洗えるし、

へたっているけれど、子どもが大きくなるまでは仕方ないね・・・と。

それが一目ぼれしたソファーが思いがけず

お手頃で手に入る機会があり、これは今がチャンス!

きっとタイミングは今なんだなと感じて、

予定よりもずいぶんと早く、買い替えることにした。

新しいソファーが来る前に、このソファーで家族写真を沢山撮った。


「今日はこのソファーで寝たい」と娘が言う。

生まれたばかりの頃、夜中に泣くたびにこのソファーに座って授乳をしていた。

布団の上だともたれる場所がなく、意外と長い授乳時間は体が辛い。

出産時の病院にいる数日間は自分自身さえ守られている感覚で

幸福感と安心感しかないのだけれど、

家でいざ新生児との生活が始まると途端に安心感は吹き飛んで、

緊張感に包まれる。

夜中のソファーに座り、赤ちゃんを眺めながら

「この子は誰かが守ってやらなければ生きていけない存在なんだなぁ」と

しみじみと母になった責任の重さを感じた瞬間を

今も覚えている。


10年以上もあれば沢山の思い出がある。

大人の私でさえ、気持ちが揺らぎそうになったけれど、

もう役目は終えているんだと思う。

心が揺さぶられるこんな経験は、きっと娘にとって

「物を大切に」ということ以上に

大事な意味を持つ記憶となるのだろう。

それがこのソファーの最後の役目なのかもしれない。

最後まで大切な存在だったソファー。

気付いたら娘がメッセージを書いてソファーに添えていた。

ありがとう。

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「明日捨てるソファーに集い秋惜しむ」 季語:秋惜しむ

推敲後♪ ↓

「行く秋や捨てるソファーで家族写真」 季語:行く秋


ちなみに、「このソファで寝る!」と寝る前も言っていたけれど、

お父さんに「二階でみんなで寝よう」と優しく声をかけられると

素直に「うん」と言って手を繋いで階段を昇って行った。

優しさって強いなぁ・・・(笑)。

・・・・・

ところで・・・、

投稿前に気になって市のゴミガイドブック調べてみたら、

粗大ごみは埋め立てにはならないことが分かった!

ここまで書いてきてなんですが(笑)。

私の住んでいる市の場合、

破砕処理場で再資源化されるものと、焼却するものと分けられるそう。

今、埋め立てられているのは町内清掃の時に出る「泥」だけなんだそう・・・。

私の社会見学からは随分と時が流れ、そして随分と進歩していた(笑)。

とはいえ、これからの物選びについて改めて深く考える機会になりました!!

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