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ここ五年くらいで詠んだ短歌たち 砂味の過去 さよなら世界

(かなしみやくやしさなどがいりまじるすこしかなしいそんなことばだ)




たしかこれ一年前に見た君は僕を笑って陽だまりに居た


動かない君の気持ちよわたくしと云うウイルスで苦しめ腫れろ


どうしてもあんとき殺しといたらなあ、耳の最果てサイレンひびく。


さよならが人生というのなら、まあ、言ってあげないおはよーハロー


どくんど、く、ん、と離れてく我が鼓動。事象統失多少幻聴。


壁越しに咳き込んでるねその人は。私、左手めちゃくちゃ冷たい


紫の夜空に光るあの星の、同じところをふたりで見てるね


ね、愛さえ あればなんにも いらないね? だからあげない魔法も墓も


ケチャップで書くダイイングメッセージ「あなたのことがだいすきでした」


少し窓閉め忘れてる君の部屋からは二月のピアノのにおい


おべんとの白米だとか君の中で嫌いじゃない物になりたいあたし


昔なら絶対着たりしなかったピンクを選ぶあたしあざとい


胃薬とセイチョウ剤を飲んでから身長五十二センチ伸びたの


どこにでも行けばいいさと君の指瞬間接着剤でくっつく


「赤」「青」と染まったベロを見せ合って笑った遠いあの夏の日は


ビー玉を口に含んで飲み下す お腹の中で過去が咲いちゃう


懐かしい匂いをさせて降る雪が「秋は終わり」と告げ口してくる

ぼさぼさと十一月に棲む雪のひとひら咥え、「生きたい」などと


体中めぐる血が言う「新しく!新しくなれよ!」うん、そうするわ


左の手指がいっぽんだけ増える夢を見ました便利かなそれ。



ケンタッキー・フライドチキン。べたべたの変わらぬ私に愛想尽かすの?

ケンタにて、再会果たす。君、いまだべたべたな僕を赦せないんだね。



特急の速さは君の住む街をなかったコトにする悪い魔法




これじゃだめ最初っからして終わってる「ん」で始まるよな言葉はないよ

これもだめぜんぜんだめだみえないよそんなことばじゃみらいもみえない




白いカーテンのレースの隙間から滲む夕陽の言葉「さよなら」

白いカーテンのレースの狭間から笑う朝日の言葉「おはよう」




サイクルの中にはこれまたサイクルが 割ってしまった茶碗飲み干す



落としたら割れる落としたら割れる落とすと割れる絶対割れる






各世界 さよなら 私 もう終わる これが サイゴ ね あいしていたよ







#短歌






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