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【小説】SNSの悪夢

彼女と話し合いをするつもりだったのに、電話の途中で切ってしまった。

感情の赴くまま物を言うのは、止めようと思っていたのに、自分の自制心が腹立たしい。

だけど彼女の言い訳も、その声さえも聞きたくはなくなっていた、こんなはずじゃなかったのに、怒りと共に失望が押し寄せる。

もし離婚の話が先だったなら、こんな気持ちにはなって居なかっただろう。

彼女の気持ちが離れているのが解らなかった、と云うか彼女が自分を思っていたのかさえ分からない。

自分は彼女と生きて行くつもりだったし、彼女もそう思っていたんじゃないのか。

感情は双方向に同意するものではない、けれど金だけを考えたら、自分で無くても男は沢山居る。

暮らし始めてから、自分に幻滅したんだろうか、気持ちも無い結婚だったのか。

彼女の方は如何だったんだろう?自分と結婚した時に好きだとか、守りたいと思う気持ちは有ったんだろうか?

何処まで行っても、先の見えない思考の波を掻き分けて、彼女に連絡して離婚をしなければと、自分の行動を考えていた。

訴えるにしても、自分だけでは時間も掛かる、ここは弁護士を雇わねばならない。

社長に言ってみるか、この騒動の基になったと思うと、声を掛けたりしたくなかったが、こうなると使える物はすべて使おう。

うだうだしている自分に喝を入れて、社長の電話に連絡をする事にした。

「もしもし、如何した?仕事の話はもう直ぐ決まるから、ちょっと待っていてくれ。」携帯電話だと誰か分かって居るから、いきなり結論になる。

「仕事の話しじゃ無いですよ、離婚の話しですよ、いい弁護士を紹介してくれませんか?」こちらも端的に答える。

「離婚なのか?不倫は無いと言ったら良いんじゃないのか?」自分が問題を起こしたことも考えずに話す。

「あれだけSNSで叩かれたら、妻も逃げますよ、それに叩いた中に妻が居るみたいでね、出来たら名誉棄損で訴えたいと思ってね。」嫌味な声で返してみる。

「名誉棄損って争うには時間が掛かるぞ、金も要るしな。」この人は自分の方は向いてくれないんだな、再認識していた。

「これまでの財産も、これから稼ぐ金も全部使いますよ、それでも訴えたいんです、こっちは生活も脅かされたんだ、社長は問題だと思わないんですか?」強い口調になる。

「ちょっとな、噂程度で訴えていたら、金がどれだけ有っても足りないからな~。」怒りを鎮めるつもりか、間延びした声を出してくる。

「自分はどうしても訴えたい、ちゃんとした形でね。」そう言い切った。



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