目が覚めた。
スマホは夜中の３時を表示する。

寝たのが１１時過ぎ。充分な睡眠時間とは言えまい。もう少し寝ていたいものだ。

が、起こされたら仕方しょうがない。

朝活あさかつなど縁えんのない私である。むしろ惰眠だみんを貪むさぼりたい。生来うまれながらの怠け者あそびにんなのだ。とはいえ。

肉体次元の目覚まし時計と違って、霊的次元れいてきじげんの働き掛けは、有無うむを言わさぬ智空ちからがある。

中真ちゅうしんを意識してゼロになった──

☆☆☆

こんにちは。フジミドリです。

いよいよシーズン１も次回で完結致します。３月からお付き合い頂きまして、本当にありがとうございました。

お読み下さる皆様の波動はどうに支えられ、とても心地よく書き続けられたのです。

さて、今回の私物語ミーナラティブ、人工知能AIと生命科学について書かれた研究者の著書が題材タネです。

霊魂たましいの目を通して観る。種観霊シュミレイすることで、自由自在になりましょう。

シンギュラリティAIが人類を超える日は来るのか──

☆☆☆

まだ少し、ぼんやりする。

寝起きは悪くない方ほうだが、目覚めたばかり。現実世界と霊的次元の狭間はざまを漂ただよう。

道術家どうじゅつかである私は、この現実世界を、スクリーンへ映し出す映画のように感じてしまう。

現実感リアリティが希薄うっすらなのだ。

そして、眠りの間は霊的次元へと移行する。霊的次元──映画でいえば、フィルムに相当するだろうか。

☆☆☆

昨日きのうの著書ほんが思い浮かぶ。

ふらりと立ち寄った書店で目に付いた。見た瞬間、これを読むのだと予感する。

──これ、買っていいですか。

守護しゅごの神霊しんれいへ向けて念を押す。意識を澄すませる。肯定する波動が、微かすかに感じ取れた。

☆☆☆

道術家は、常に守護の神霊を意識する。

自分は護まもられていると、感知かんちしながらの生活くらしはとても心地よい。生まれてから死ぬまで、そして死後の世界もずっと──

事ある毎ごと、私の意識は内うちへ向かう。人体中央にある仙骨センコツを通し、守護の神霊と対話する。

☆☆☆

対話と言っても、声は聞こえない。

私の問い掛けや感想つぶやきに答える、微かすかな波動を感じ取る。心が澄んでないと聴き損そこなう。

道術では、仙骨から発露はつろされるこの波動を、中真感覚ちゅうしんかんかくと呼んでいる。

以前の私は、人生と闘たたかっていた。道術を知ることで、生き方が大きく変わった。

今は、死後の暮らしに備え中真感覚を磨く。この世が稽古場けいこばなのである。

☆☆☆

家へ帰って早速さっそく、買ったばかりの著書を読み進めていく。今の自分に必要だと解わかった。

──もし、買わなかったら！

守護の神霊に従っていれば、間違いはない。いつもながら、しみじみ嘆息おもう。

広告を見たのでも、勧められたのでもない。著書の存在すら知らなかったのだ。

中真感覚はそのように働く。

☆☆☆

著者が、学生と対話する形式である。まず、AIの限界について平易なわかりやすい表現で説かれる。

どうやらAIは人類を超えられない。

なるほど。以前、そう浮かんだことがあるけれど、中真感覚なので根拠えびでんすはなかった。

今こうして確認できた。そのために読んだ。中真感覚が先。根拠は後でよい。

☆☆☆

今や、社会に不可欠となったAIだが、所詮しょせんは便利なIT技術に過ぎないのである。

人類のような感情を持ち、自分で考えて行動する知的ロボットとは、根本が違うのだ。

ではなぜ、このような知的ロボットは造れないのか──意識が解明されてないからだ。

☆☆☆

現時点の科学は、人類を特徴づける意識が何であるかを、まだ解明できていない。心理学や脳科学でも同じ状況である。

意識とは何であるか。それが解らなければ、AIに搭載とうさいすることなどできないのだ。

何も解ってない！

そこで著者は、AIの研究から生命科学へ方向転換する。搭載せずとも、生まれながら意識を持つ人類の神秘に、改めて気づいたのだ。

☆☆☆

なるほど。そういうことか。

私は大学卒業後、社会へ出た。もしも大学院へ進み、研究者となれたらどうだったろう。

これが種観霊の醍醐味おもしろさである。

他者の人生を借り、別の自分パラレルワールドへ成り変わる。数十年の研究成果を意識で経験して、理解へ繋げるのだ。なるほど。そういうことか。

☆☆☆

では、生命科学に未来はあるか？

知能も運動神経もDNAで決まる。IPS細胞を使う遺伝子治療。ペットのクローンは、既にビジネス化された国もある──

次々と展開する話題に、興味は尽きない。

専門知識がスッと入ってくる。面白い。生命科学は、そのような展開なのか。

☆☆☆

しかし──
最終章で唖然あぜんとする。
問いが提示されていた。

あなたは何のために生きているのか──

なんだって？

☆☆☆

著者は有名大学の人気教授。学生からよく、この問いを相談として受けるらしい。

何のために生きているのか──

受験戦争は勝ち抜いて、最高学府へ入学したものの、目標を見失うのだ。やりたいことが見つからない。どう選択するか迷うばかり。

対話形式の構成だから、若者の疑問なやみとして描かれているけれど、現代を生きる大人たちに共通する疑問かもしれない。

☆☆☆

この問いだけで、唖然とした私だが、続いて選択肢を二つ提示され、今度は呆然ボーゼンとなる。

何のために生きているのか──自分と家族をハッピーにするため。或あるいは、社会にとって価値ある何かを残すため。

あなたはどちらを選ぶ？

☆☆☆

自分と家族がパッピーならばよい。

すると、健康で長生きするための情報に翻弄されてしまう。仕事やお金や人間関係や老後について、知恵を振り絞るのだ。

しかし、絶対の安心はない。

予期せぬ出来事が起こるから。ウイルス騒動や今回の戦争は、格好かっこうの具体例だろう。

人類の歴史上、宗教も学問も芸術も政治も、解決できないままに来た。まして、個人では対処法がないのである。

☆☆☆

では、社会にとって価値ある何かを残す？

やれやれ──

自分と家族がハッピーであればよい。価値ある何かを残す。いずれの場合でも、死んだら無むに帰すことが前提なのである。

なんと虚むなしい望みだろう。

☆☆☆

私は唖然とした。呆然となる。

この人たちは、死んだら何もなくなると信じながら、それでも生きているというのか。

無から生まれて無に還かえる。

ゾワッとした。中真が震える。そんな人生観は耐えられない。私なら絶望してしまう。

☆☆☆

改めて感嘆おもう。

私は研究者の道を選ばずに社会へ出た。企業が組み込む境遇は合わず、といって独立起業もままならず、進学塾の契約講師。

よくここまで生きた。

この歳になって財産の一つなく、残り少ない人生設計も皆無なしである。

☆☆☆

しかし、不安がない。

そのような私は、傍はたから見ると奇妙に映るらしい。私とすれば、財産や資格や知己で安心できる方が不思議に思えてしまう。

お金の悩みは、お金に堪能たんのうな指導霊に任す。健康、仕事、人間関係、その他諸々もろもろ。

全てを丸投げおまかせした私の暮らしは、安穏あんのんで心地よい。事ある毎、中真感覚に従うだけ。

☆☆☆

なんのために生きているのか。

ぐっすりと眠る。読書。ブログを書いて交流する。美味しく食しょくす。綺麗キレイな景色に浸り。

しかし、そこに目的はない。決まっている展開なので、ただ坦々たんたんと熟こなすだけなのだ。

仕事と日常の些事に差がない。立って歩く。座って話す。読んだり書いたり。表面的には同じ動作を繰り返すのである。

☆☆☆

常に中真の仙骨を意識している。本体である霊魂たましいを感じるためだ。

知識ではない。肉体の運動でもない。微かな感覚を粘り強く探っていく。

守護の神霊から響く波動メッセージを感知する。それは言葉でもイメージでもないのだ。

☆☆☆

空を見上げる。その背後に霊界の空が感じられて、草花を見れば霊妙な光は輝くばかり。

掃除や整理整頓かたづけは、魂に憑ついた想念おもいを祓はらい、理解が整っていく意識で済ます。

食べながら中真を意識すれば、神なる法則の秘密が解き明かされていくのだ。

時間を決めた瞑想も一時的な滝行も、私には必要ない。日常すべて修行なのである。

その在り方を選べば──

☆☆☆

死んだ後では遅い。
戸惑うばかりである。

肉体を脱ぎ捨てたら、五感は使えない。知識も経験も消える。ただ独ひとり、時空のない世界で漂ただようのだ。茫漠ぼんやりとした永遠とわの不安──

頼れるのは、守護霊の声なき声だけである。今ここで、混沌カオスとなって蠢うごめく想念を掻い潜くぐりながら、ひたすら聴きとる稽古けいこなのだ。

これこそ、私が生きる目的。

☆☆☆

どうして、あなたの信仰は揺らぐことがないのでしょうか。そう尋たずねる人があった。

それまで考えたこともなく、言葉に詰まる。次の瞬間、中真から波動が響き、頭脳で言葉へ変換されていく。

ミドリが待っているから──

愛する者を先立たせた私は、死後の世界たましいのふるさとより他に、信じたい物語もくてきなどないのである。

何のために生きているのか。それは、より良く逝いくためである。逝けば霊魂たましいの花開く。

唯一ただひとつ、待ち焦こがれた望みが叶かなう──

もう一度
会いたいなぁ

次回、６月１９日午後３時☆
シーズン１の最終話となります。
明日午後６時は西遊記で創作秘話♡

ではまた💚