耳が熱い。背骨せぼねの底は引き締しまる。まるで立ち眩くらみのように、血の気が引いてゆく。

どうして、あんなこと言った。なんでもっと優しくできなかったのか。

悔恨かいこんの情じょうは膨ふくれあがり
悶もだえ苦しむばかり──

☆☆☆

こんにちは。フジミドリです。後悔の念に苛さいなまれる。かつて私、頻繁ひんぱんにございました。

どうしてよいかわからない時間とき。数え切れません。道術どうじゅつを使い、影が潜ひそみました。

種観霊シュミレイした私物語ミーナラティブが、人間関係ひとづきあいで思い悩む方のお役に立てば、嬉しく思います。

☆☆☆

引き寄せの法則──

思い描えがいた夢は叶かなう。そんな不思議しくみがあるのだろうか。うまくいった人の本やブログが、ずらりと並ぶ現代なのだ。

波動はどうで説明されるらしい。量子りょうし論。思い描いた夢と、同じ波動を引き寄せるそうだ。

☆☆☆

ふと思う。疑問が浮かんだ。死ぬ前に望んだ夢は、いつ引き寄せられるのか。

──きっと来世らいせだろうな。生まれ変わりを信じるオレは、思わずそう呟つぶやいていた。

ならば、この世の全て前世ぜんせの夢か。何もかもが叶っている。望んだのは前世の自分。

☆☆☆

引き寄せの法則。何冊か読んでみた。表現が微妙ビミョーに違うけれど、基本は通底つうていしている。

ノートに書いたり、イメージしたり、言葉を重ねたりで、思い描いた夢が叶う。

逆もまた真まことなり。不平不満バカヤロウ。批判嫌悪何あれムカつく。思い続けていれば、引き寄せてしまう。

☆☆☆

これまでの人生、思い悩んだ出来事トラブルや、後悔し続けた過失あやまちや不運も、知らずに自分が引き寄せていたというのだろうか──

顔貌かおかたち、環境、経済状態、仕事、人間関係、そして別れ。すべて思いが引き寄せた。

そんなバカな。思いは浮かぶ。やり切れないだろ。それなら、どう思えばいいのか。

誰か援たすけてくれ。
不安が膨ふくらむ。

☆☆☆

あはは～やれやれ。
思い出したぞ。

夢を描えがいては舞い上がり、ダメだったらイヤだと不安に怯おびえ、ジェットコースター。

オレの人生、山あり谷あり。行動する前に悩んで、しながら迷い、してから後悔。

☆☆☆

ふぅ。息を吐く。力は緩む。モヤモヤが離れていく。仙骨を意識する。思いは中真へ吸い込まれた。引き寄せの法則も消える。

☆☆☆

引き寄せの法則を信仰しんこうしたら、オレはどうなったろう。たぶん、窮屈きゅうくつに感じ始める。

叶って欲しい夢を描き、望まぬ思いは消そうと躍起やっきになって、疲れてしまうかな。

必死の思いで夢を描く。意志は奮ふるい立たせて継続する。良くない思いを消す努力。

☆☆☆

細ささやかな夢が叶っても満足できず、さらに大きな夢を描くだろう。どこまでも続くのだ。

あるいは、夢が叶わないと嘆なげいて自分を責め始める。努力は足りない。やり方が甘い。そして、新しい方法に飛びついて──

やれやれ。この歳６３になると、自分オレという人間が見えてくる。底そこは割れたというか。

☆☆☆

そのうち、面倒メンドー臭くなってやめちまう。バカらしい。こんなことやらんでも、人生なんて成るように成るさと、斜はすに構かまえるはずだ。

ふと思い出す。道術と出逢う前のオレは、本当にそんな人間だった。引き寄せの法則ではないが、似たような本も読んでいる。

あはは～記憶が薄らいでるぜ。確か、そんなこともあったなぁ。まるで前世ボケ？のようだ。

☆☆☆

全て決まってる。初めから終わりへ。まるで映画。今では、そう理解しているのだ。

真実ホントかどうか解らない。ただ、理解することで楽ラクになれた。気持ちが安らいで、のんびり生きるオレに変われたのだ。

健康。お金。仕事。人間関係。趣味──

今ここで楽しむ。起こる現象こと全て、そのままでよい。過去の憂うれいも未来の不安も、中真ちゅうしんを意識すれば、不思議と消えた。

☆☆☆

成功させたい。うまくいかなければイヤだ。その思いに囚とらわれていた。無理もない。

若さだろうか？

今となっては遠い記憶だ。曇りガラス一枚を隔へだてた風景せかい。そんな印象さえ浮かぶ。

☆☆☆

この歳まで生きると、見聞けんぶんや体験も、地層のように折り重なってくるものだ。良いことも悪いことも沢山たくさんあって──

成就じょうじゅへの綿密めんみつな戦略けいかくを立て、行動する。言葉も尽つくしたのに、叶わなかった願い。

半なかば諦めて、気楽な取り組みで、努力と無縁むえんの道程みちゆきなのに、成し得てしまった僥倖ぎょうこう。

☆☆☆

自分は、何を引き寄せてきたのだろう。

そもそも、これは自分の意志かんがえなのか。望んだつもりで実は、前世の思いに操あやつられて──

成功も失敗も、予あらかじめ決められた通りならば、一喜一憂ジェットコースターはバカらしく感じてしまう。

引き寄せたと思い込んで誇ドヤり、吹聴ふいちょうするなど滑稽こっけいの極きわみ、そう笑われることだろう。

☆☆☆

うまくいった事や成し遂とげた結果も、済んでしまえば、思い出す時間ことはあまりない。

果たせなかった夢や、悔くやんでいる過ちを、いつまでも覚えていたものだ。

狂くるおしくなるほどに──

☆☆☆

後悔する。
なぜあんなことを言ったのか。
どうしてもっと優しく。
やり直せない。

慟哭どうこく──顔が歪ゆがみ口を開あけ、泣き叫ぶ声は喉のどに詰つまる。悲しみの極限きわみで全身からだが震ふるえる。

声を上げて泣けたのは、少し経たってからだ。泣きながら夢が覚さめ、涙は耳に流れ込む。

☆☆☆

あぁ、思い出すねぇ。悶え苦しんでいたよ。身の置おき場所どころ、なかったものなぁ。

時が解決する。そんな慰なぐさめを聞く。いやいや～まるで癒いやされなかったよねぇ。

それが、中真を意識した途端とたんに変わる。思いは吸い込まれ、心地よい波動が溢あふれ出た。

☆☆☆

成功したがる人々──

オレは今、細ささやかながらも、縁えんある生徒ヒトたちに、自分なりの理解を伝えている。

成功するための方法論ではない。もちろん、失敗するための在り方でもないが。

☆☆☆

『キミが合格するんじゃないよね』
「え。どういう意味ことですか」
『合格を決めるのは大学さ』
「あぁ、確かに」

『得点できるかもわからない』
「採点するのは、大学の教官センセイですね」
『答案こたえを書くだけ。キミの名前と』
「それなら、できそうです」

☆☆☆

よし。落ち着いてきたな。この生徒が志望校に合格するかどうか。オレにはわからない。

自分キミが組み上げた人生だからね。

でも、出逢ったならば、できる限りは力になりたいものだ。オレができることで。

☆☆☆

『さぁ、想像してみよう。１年後に合格したキミ。どんな気分かね。俳優のように成り切ってさ。意識の世界で済ませてしまう。

キミが、合格したいけど不合格を恐れているのは、イメージできないからだよ。

それなら、想像で経験しちゃうのさ。

受かった自分という在り方で、周囲まわりを眺めてみよう。見える風景が変わるはずだよ』

☆☆☆

これだけなら、引き寄せの法則。良いことを思って、ハッピーになりましょう。でも、なかなかそう成らなかったりするものさ。

☆☆☆

『今度は、夢が叶わずに、失意しついのキミを想像してみよう。あはは～怖こわがらなくていいよ。

恐れている結果こと、考えたくない姿、やっぱり同じように成り切って経験しちゃうの。

それでハッと我に返る。先刻さっきとは違う気分でしょ。想像だけれど、経験したからね。もう在あり方が変わったのさ』

☆☆☆

禍か福ふくは糾あざなえる縄なわ。良いこと悪いこと。片方で成り立たない。この世の道理どうりだ。

☆☆☆

「なんか、怖ヤバいのなくなりました」
『両方、経験しちゃったものな』
「今度は、後悔が浮かびます」
『それも済ませちゃえばいいよ』

「やっぱ、想像するんですか」
『あの時ああすれば、こうしていたら』
「過去が書き換かわるみたいですね」
『経験した自分という在り方さ』

☆☆☆

引き寄せの法則で、人間にんげんは成功を求める。当然だ。人間とはそのような設定せっていだから。

成功を望むように設定デフォルトされている。失敗は求めない。なんとか回避かいひしようと足掻あがく。

どうしてか──

☆☆☆

細胞の働きが生存せいこうへ向かうためだ。細胞に、失敗するという設定せっていはない。

人間は前へ進むしかない。だから、目も足も前を向く。後戻あともどりできない設定ありかたなのだ。

☆☆☆

一方の霊魂れいこんは、成功と失敗を経験して、自由自在に成ると解わかっている。片方だけの経験では、深く理解できないからだ。

霊魂たましいには、目も足もない。前も後ろも向いていない。ただ中真感覚ちゅうしんかんかくのみで動いている。

人類の総和ぜんたいとして観みれば、誰かの成功もうけは誰かの失敗そんしつ。成功だけなら存在できない。

霊魂本当の自分は、そこまで俯瞰ふかんする。

☆☆☆

「なんか色々イロイロ、経験した気分です」
『そしたら、中真を意識すればいい』
「チュウシンですか」

『ちょっと立ってごらん。両腕を上げるの。スッとね。そうすると、ほら、腰が後ろへ引けるでしょ。自然に動いちゃう』

「あぁ、確かに。腰がバランス取ってる感じです。そっか。ここがチュウシン」

☆☆☆

『上がっちゃったとか言うでしょ。本来は、腰に収まってる意識が、上で漂ただよう様子ことを指さすんだよ。下がるとか言わないじゃん』

「あぁ、確かに」

『よくハラが立つって言うよね。腰の真ん中に仙骨センコツって骨があるんだけど、この骨が固かたまっちゃう状態ことを指すのさ』

「知りませんでした」

☆☆☆

息を吐く。

意識は中真に絞しぼり込んでいく。カーブを画えがく仙骨が接する丸い球たま。ちょうど両手の平で包む大きさ。これが霊魂たましいなのだ。

今度は吸う。

中真から、心地よい波動が流れ込んで、身体の隅々すみずみにまで浸透しんとうする。さらには、宇宙一杯いっぱいへと広がっていく。

☆☆☆

『中真を意識すれば、どんな思いも吞のみ込んでくれるよ。爽さわやかな気分になれるのさ』

「初めて聞きました」

『成功と失敗を想像して、中真が呑み込む。ハラに収めるって、そういう意味だよ』

「我慢ガマンすることかと思ってました」
『知らない人が多いね。失われた智慧ちえさ』

☆☆☆

さぁ、オレの伝える在り方は完結おわりだ。若者よ、思い切って進みなさい。たとえどんな結果になろうと、オレはキミの味方だからね。

☆☆☆

『人間関係も同じだよ』
「両方を想像するんですか」
『済ませておくわけ』
「余裕ヨユーですね」

『人付き合いなんて、うまくいくか失敗するかの、どっちかでしょ。心なんて、コロコロ変わるしさ。どっちでもOKにしとくの』

「つい、張り合っちゃうんです」
『マウントってやつだ』

☆☆☆

負けるが勝ち。
人間関係の極意ごくいだろう。

マウントを取って、勝ったつもりでも、相手は恨うらんだり妬ねたんだりするだけだ。

意識の世界で勝ち負けを済ませれば、勝ちに拘こだわる熱意がよくは消えていくのである。

負けても、大したことない。
そう理解したからだ。

☆☆☆

『初めから、負けるつもりで議論ディベートするのさ。 勝たなくていいから余裕で楽しめる』

「勝とうと力りきんでいたんですね。だから慎重ビビリになって、うまく話せなかったのか」

『お前まえ、スゴいな、敵かなわねぇって、ラスト落としどころが決まってるんだからさ。マジ気楽でしょ』

「議論したくなりました。リラックスして、勝っちゃうかもですね。マズいな」

☆☆☆

あはは～思い出す。学生時代。議論ケンカを吹っ掛けては負ける。相手の話ネタを頂く。それをまた他で使った。今もそんな風に生きている。

☆☆☆

『女の子と付き合う時のも同じだよ』
「負けるつもりになるんですか」
『正しい理屈いけんなんて聞きたくないのさ』
「なるほど。共感こうていしてほしい？」

『男って理屈せいろんっぽいから煩ウザいの』
「論理すうがく的だと強いように思ってました」
『オーノウ。女の方が強いんだぜ』
「母親見てると、そう思います」

☆☆☆

おいおい、わかっているじゃないか。キミの前途ぜんとは明るいよ。女性♡♡♡を尊重そんちょうしたまえ。誠実せいじつであれ。オレはホント、やり直したいぜ。

☆☆☆

もしも、やり直せるなら──

いや。もういいよ。
眠りの世界で逢えるから。

ゼロのオレは、何を引き寄せるだろう。
死んだらわかる。楽しみだ。

☆☆☆

☆☆☆

如何いかがでしたか。
お読み頂き、ありがとうございます。

次回、４月２４日午後３時です。
私とミドリの結婚記念日。

ではまた💚