マッドサイエンティストたちのラプソディ――『よくわかる人工知能』

毎週水曜日にコルク・佐渡島さんとコンテンツ評の勝負をしている、この企画。前回とはがらっとジャンルを変えてこの1冊を。

よくわかる人工知能』清水亮

本書は、人工知能に関して先進的な取り組みを人々へのインタビューと、著者による解説が交互に並ぶという構成になっている。なにしろ、そこに出てくる人々のマッドサイエンティスト度合いがすさまじくて超おもしろいのだ。

博士たちの異常な情熱

最初に出てくるのは、ミスター人工知能こと東京大学の松尾豊准教授。人工知能は人類史の中で「農耕の発明」くらいの変化をもたらすと、さらっと、書いてある。……「農耕」って、そうとうすごいじゃないですか。農耕は、インターネットよりすごいのはもちろん、産業革命よりもすごい気さえする。それと同等レベルだと。

本の中盤に出てくる、慶應大学の前野隆司教授との話もそうとうきてる。たとえば、こんなやり取りが出てくる。

清水 脳の中の情報は海馬を通って長期記憶に行くじゃないですか。海馬が実はZIP圧縮ソフトみたいな機能を果していて、入ってきた情報を取捨選択して物語を作ることによって、長期記憶に持っていくっていうような役割があるんじゃないかと思うんです(中略)

前野 僕も本に書きましたけど、まったく同じですよ。圧縮装置じゃなくて並列を直列に変換する装置と書いた。並列的な情報だと覚えられないので、情報を直列化してストーリーとして覚えるための装置だと思っています。(中略)これをコンピュータに実装することは、当然できると思いますね。

つまり、「こころ」とか「意識」をコンピュータにのせるのは、当然できる、という話だ。これはヤバイ。

極めつけは、最後に出てくる、スーパコンピュータ開発ベンチャー・PEZY Computing代表取締役の齋藤元章さん。この人が言っていることは最初から最後までぶっとんでいる。簡単にまとめるとこうだ。

すごい高速のスパコンをつくる → すごい人工知能つくる → エネルギー問題解決 → 食糧問題も解決 → 人類は労働から開放される → 不老不死も達成 → 世界平和

これは本当にヤバイ。ぜんぶできたら、各種ノーベル賞を5回くらいは取れそうだ。恐ろしいのが、これが本人的にはかなりマジで、根拠もばっちりありそうで、ちゃんとスケジュールまで組んであるところだ。

と、ここまで読んで興味をもったひとは、本書を読んでみてほしい。難しそうな技術の話も出てくるけど、飛ばし飛ばし読んでもこの人達のビジョンは共有できると思う。

なお、記事タイトルの「マッドサイエンティスト」というのは褒め言葉です。彼らに共通しているのは、現状から飛躍した、一般人目線ではありえない未来を、当人はさも当然のように地続きの未来と見ているということだ。結果がどうなろうとも、未来を自分でつくろうというガッツが、すでに超かっこいい。

余談(AI分野の弊社の取り組みについて)

ちなみに、まだあんまりアナウンスしてないのですが、弊社でも人工知能の研究および開発を行ってます。たとえば、cakesの記事下の「おすすめ欄」は人工知能を用いたアルゴリズムで動いている(下図はこの記事に今の時点で表示されているもの)。

こういうモジュール自体はいままでにもあって、多くは「この記事を見た人はこの記事も見ています」というアルゴリズムでつくられている。つまり、記事内容ではなく、ページビューなどの数値の統計情報を使う。でも人工知能を使うと、コンピュータが記事の中身を読んで、似た内容の記事をすすめるということができるようになる。

そうすると何がいいかというと、まず、おすすめの精度が上がる。すでにcakesのリコメンドエンジンは「ランキング」に勝つようになっている。人間はランキングが大好きだから、これは地味だけどすごいことだ。そしてもうひとつ、こちらがより本質的なんだけど、「記事の内容についての情報が自動的に蓄積できる」ようになる。

これを使うと…いろいろできる。たとえばユーザー情報の行動履歴と紐付けて、それを課金とか集客とか広告とか物販に統合したり。この分野を「コンテンツテクノロジー」と呼ぶことにしているのだけど、アドテクノロジーの「次」にくるのはこの分野だと考えていて、ピースオブケイクはそのための会社だ。
 
世界最強の人工知能カンパニーGoogleは、アドテクノロジーと共に大きくなった。コンテンツテクノロジーという次の波を、豊富なコンテンツと人工知能による自然言語処理を武器に、日本から、自分たちの力で直接やれることがたくさんあるのではないかと思う。おもしろい時期だと思うので、興味がある人工知能関連のエンジニアやデータサイエンティストなひとは、ぜひ以下までご連絡ください。できそうなこと、やりたいことについて話がしたいです。

developers@pieceofcake.co.jp

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加藤貞顕

コルク佐渡島、note加藤のコンテンツ会議

コルク代表・佐渡島庸平、noteやcakesの運営会社ピースオブケイクの代表・加藤貞顕が、その週にふれたコンテンツについて書いていきます。毎週水曜日更新(予定)!

コメント4件

積んでたので読みます!
おすすめにより、現在読書途中です。人工知能の今と今後が分かりやすく整理されている本ですね!
人工知能のお話、とても興味があります。こちらの本も購入したので、読んでみます。
そんな凄い事やってる会社でしたか!
恐れ入りました。
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