さて、家に着いた子犬はおとなしく抱かれたままだ。子どもの頃にも家に犬が居たけれど、世話をするのは始めてだ。子犬はもっとはしゃいだり走り回るものだと思っていた。記憶の中の子犬は鳴いたり走ったり飛びついたりじっとしていることはなかった。そして思い切り動き回った後は、スイッチが切れたように眠ってしまった。 知らないところに来て緊張しているのか、車に揺られて疲れたのか。とにかく手の掛からないおとなしい子だねと話していた。ご飯もあまり食べない。慣れるまで少し時間が掛かるかなと思った。
新婚旅行から帰ってそのまま夫の実家で暮らし始めた。 専業主婦の義母はプロではないが「書く人」だった。長い間文章の講座で勉強し、仲間と同人誌を出すという私とは真逆の行動力のある人だった。小学校の時に文章を褒められたのが嬉しくて、主婦になってから勉強し始めたそうだ。幾つも文章の講座を受講し、そこで知り合った方のグループに参加した後で、自分と気の合う何人かと同人誌を始めて月1回原稿を持ち寄って集まり、お互いに批評して年に一冊本に纏めるという派手さはないが着実に作品を残していた。好き
実家の名古屋に帰省する時に市営地下鉄を利用する。 地下鉄を利用するたびにモヤモヤするのは「女性専用車両」にある『始発から終発まで』の掲示である。何故『始発から終着まで』ではないのか。終発から終着は空白にはならないのか。気になるのは私だけなのか。いつも気になり掲示を見つめてしまう。
生きていると出会いと別れは避けて通れない。楽しいことばかりを選んで暮らしていくわけにはいかない。辛いことを避けていては自分で扉を閉ざすことになる。 今出会った人が先々恋敵になるかもしれず、昨日別れた人が生涯の友に成り得た人だったのかもしれない。うっかりしていると看過してしまうことや忘れてしまうこと。記憶に埋もれさせないように遺しておきたい。 こうして書いていくことは自分の中で『ケリをつける』ことかもしれない。また、みたくなったらぼんやりした記憶からガムテープで閉じて封印した箱
唸る風窓打つ雨や青嵐 剪定の済みし欅の梢鳴る 出水の夜ラジオに新しき電池 アンテナに強風画面フリーズす 線状降水帯天気図赤し 予報士の長く出ている五月雨 明日もまだ雨の降るてふ蝸牛 紫陽花の色濃く見ゆる温き雨 選手権レーストラック飛沫立つ 瀧の如雨の降る夜梅雨まだ来
まだ梅雨入り前だと言うのに台風が近付いている。沖縄は今夜から風雨が強まり、TVに映る海は高い波が打ち寄せている。全国的に今日から2、3日は注意が必要らしい。毎年異常気象と言っては災害級の天気が起きる。もはやそれが常態である。 各地で地震も頻発している。気の休まらないことである。
最後の猫のとらが旅立った。 もう犬も猫も居なくなってしまった。 願いを込めてたくさんのキャットフードを買ったばかりなのに。 もう長く一緒に居られないってわかってはいたけれど。 犬を飼っていた時の経験からあえて手術等の治療を選択しないで家に居たから体重も軽くなり、でも猫らしく軽やかにブロック塀や小屋根の上を歩いていたのに。 いつもはすぐに外に出てしまうのに足元に纏わりついて、ずっと小さな甘えた声で鳴いていた。 これはもういけないんだなと気づいたよ。 最後まで残ってくれてありが
くちなしの鉢植えを買った。 タグに「ヌマタクチナシ」とある。 白くぽってりした花びら、甘く芳醇な香り。 東向きの玄関に置くことができて、とても嬉しい。 たくさんの蕾を咲かせられるように世話をして、来年もその先もずっとこの香りに包まれたい。 朝照らす白きくちなし八重に咲く (令和5年5月30日)