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【暴君女王】第7話 「記憶しろ!」

これは「チャット小説」として書いたものです。
そのためセリフ以外の感情等の表現を極力簡潔にしてあります。
セリフをもとに想像してお読みください(*vωv)


  早朝、誰にも起こされずにスカーレットは目覚める。
  よほど昨夜のことに苛立っていたのだろう。
  スカーレットはベッドを降りると
  寝巻のまま長椅子に寝そべり朝焼けの風景を眺める


アカネ (ああ…スカーレットも消化不良なんだ…
 まだ不愉快さを引きずってるんだろうな…
 いや!これはチャンス!侍女かルーネが来るまで、思い出せ!
 メルクリオは私の推しキャラなんだから!

 でも正直昨日の様子は推せない…
 よっぽど分かりやすいマルテの方が推せる…
 いやいや、初日からメルクリオはデレるキャラじゃない!
 これで設定どおりなんだ!
 とにかく思い出せ!

 えーと…『命令で来ただけ。何も話すことはない』だから無口だった。
 その次は『あなたは誰にも愛されない。誰も心を開かない。』
 …なんでこんな挑発的なことを…だって相手は暴君女王だよ!?

 次は確か…スカーレットが彼の頬をはって…
 『そんなことをしても無駄。あなたは誰も手懐けられない。』
 これも挑発だ…また平手打ちされてたし…
 そしたら『命令には従った』って…
 そうなんだよね…
 メルクリオはスカーレットの命令通りに動いてただけ…でも
 『お前は私のことをどう思っている?怖いのか?』って質問に『怖くはない』って…
 恐怖で従ってるんじゃないってことだ…
 じゃあ何に従ってるの…?
 『私を愛せ』って命令に対して『元々あなたを嫌ってはいない』って…
 怒ったスカーレットに『出て行け!』って言われて…言う通りに出て行った…

 出て行くときに「なんで何もかも諦めたみたいな顔してんの…?」って
 私、思ったんだ…
 そうだ。出て行く前に言ったメルクリオのセリフ…
 『嘘は言っていない。あなたを好きではないけど嫌ってもいない。
 ここに来ることも嫌じゃない。』って言ってた
 そして…『おやすみなさい。哀れな女王よ』

 …………『哀れな女王』…………
 諦めた表情…………なんか…すごく引っかかる…)


 すると、ノックをする音と共にルーネが慌てたように入ってくる


ルーネ 「共寝係を帰されたのですか!?彼がなにか粗相でも…」
スカーレット 「なんでもない。一人で寝たくなっただけだ。」

アカネ (庇った!?)

ルーネ 「もしなにかご気分を害されたなら、その者は処罰いたします。
 私には何でもおっしゃってください。私はスカーレット様のためなら何でも致します」

アカネ (これか…
 ルーネ君の言葉はうわべだけ。でも自分はスカーレットを愛してることにしてるから従順な行動をとる…
 多分処罰はホントにやるんだろう…
 粗相どころじゃない怒らせ方だったけど…スカーレットは彼を処罰したくないんだ…
 処罰って…多分…あのショーみたいになってたすごい拷問の的になって…その末に…なんだろうな…………

 もしかして…スカーレットは…………拷問も処刑も…………したくないの?)

スカーレット 「侍女を呼べ。着替える。」
ルーネ 「はい!ただいま。」


 ルーネが侍女を呼び、黒のドレスに着替える。
 朝食までまだ時間がある。
 ルーネは心配そうに寄り添う。


スカーレット 「ルーネ…………」

アカネ (あ、選択肢…………え!?)


 1:メルクリオは何かあったのか?
 2:メルクリオは共寝係から外せ。
 3:メルクリオは好きな人が居るのか?


アカネ (え、3は…居ないって言ってたけど…
 このゲームはスカーレットとプリマヴェーラが攻略キャラを奪い合うゲーム…
 まさかこの段階でもうプリマヴェーラに魅了されてる可能性があるの!?

 でもそれはゲームの仕様っていうか…
 このナイトメアの世界でもそれはあるの?

 ていうか3を聞いたら「そう思うようなやり取りや態度があった」ってことになっちゃう。
 2は個人的に嫌だ。
 1しかない…)


 1!


スカーレット 「メルクリオは…何かあったのか?」
ルーネ 「え…………?彼の様子がおかしかったのですか…………?」

アカネ (ああ…そうなるよね…なんて答える?スカーレット)

スカーレット 「とても…疲れているように見えた。」
ルーネ 「…だから帰されたのですか…?」
スカーレット 「…………」
ルーネ 「何とお優しい…………彼は宰相補佐です。
 何かあったのかもしれません。調べますか?」
スカーレット 「ああ…………そうだな…………」
ルーネ 「承知いたしました。」


 ルーネはすぐに出て行った。


アカネ (『春の微笑み』では、国のトップはあくまで女王。
 宰相はあくまで1番偉い大臣でしかない。
 世界は国の重要な決めごとなどは全て宰相はじめ大臣たちが行ってる。
 スカーレット様が午後に見てサインされていらっしゃる書類は彼らから渡されたものだ…

 確かに仕事で何かあったのかもしれないけど…
 多分スカーレットは、あの諦めた表情を「疲れたように見えた」と表現したんだろう…
 あの表情を気にしてるってことは、きっと重要なんだ…

 メルクリオは何を諦めてるの…?

 スカーレットの言いなりになるしかないこと?
 そんな単純なことだろうか…)

 しばらくするとルーネが戻ってくる。

ルーネ 「大臣にそれとなく聞きました。確かに少し多忙ではありましたが
 普段と大差はない。とのことです。お気遣いありがとうございます。と言っていました。」
スカーレット 「そうか…ならよい」

アカネ (スカーレット…ホントに暴君なの…?
 確かにセリフだけ見れば「昨日のメルクリオは元気がなくて役に立たなかった。共寝係の任を果たせないような仕事をさせるな」みたいにも取れなくもないけど…
 なんかこうしてスカーレットとして生で行動してると…
 イメージが変わる…)

ルーネ 「明日の共寝係にご期待ください。ちゃんとご満足させるようにさせますので」
スカーレット 「…………」

アカネ (あーもー!ルーネ君もそう思っちゃってるじゃん!
 スカーレットはそういう意味で言ったんじゃないよ!多分!
 て…ん?『明日』?今日は?)

ルーネ 「…私ではいけませんか?」

アカネ (…ん?)

スカーレット 「…私はもう着替えたのだが?」
ルーネ 「ですから…」


 ルーネはスカーレットと長椅子に誘うと隣に座り
 優しく抱きしめ、キスする。
 そしてまた抱きしめると髪をなでる。


ルーネ 「あまりお休みになられていないのでしょう?
 今日は共寝係の居ない日…お望みなら私がお勤めさせていただきます」

アカネ (あ…そっか…攻略キャラは7人。
 火曜がマルテなら月曜はルーネ、水曜はメルクリオなんだ。
 7曜のうち共寝しない攻略キャラのジオーヴェおじさまが居るってことは…
 木曜はジオーヴェなんだな…)

スカーレット 「私はそんなに好色だと?」
ルーネ 「あ…いえ…そういうふうには…私はただ…スカーレット様に尽くしたいと…」


 1:君主だからか?
 2:愛しているからか?
 3:企みに必要だからか?


アカネ (3が本心だろうな…選択肢間違うと殺してくるし…なんかあるんでしょ?
 でも、今ルーネ君はスカーレットを愛してるふりをしてて、スカーレットはそれを受け入れてるふりをしてるんだから…)


 2


スカーレット 「私を愛しているからか?」
ルーネ 「はい…………」


 ルーネの顔を見ると少し頬を赤らめていた。


アカネ (え…マジなの?落ちるの早すぎない?演技?)

スカーレット 「…………その言葉だけで十分だ。」


 スカーレットはルーネから身体を離すと立ち上がる。


スカーレット 「もうじき朝食の時間だろう。行くぞ」
ルーネ 「はい…でもまだ定刻まで少しありますが…急がせますか?」
スカーレット 「いや。散歩して向かえばいい。」


 スカーレットとルーネは一緒に食堂へ遠回りして城内を散歩する。
 すると中庭の方から竪琴と歌声が聞こえてくる。
 スカーレットはその方へ向かう。
 と、民族衣装のような異国の服を着たやや褐色の肌をした青年が居た。


アカネ (あ、あれは…宮廷楽士のヴェネレ!?)

スカーレット 「早起きなのだな。ヴェネレ」

アカネ (やっぱりそうだ!この人も攻略キャラの一人…
 ゲームの設定だと…吟遊詩人だったのを…スカーレットが気に入って無理やり宮廷付きの楽士にしたんだっけ…)

ヴェネレ 「おはようございます。スカーレット様も。」
スカーレット 「たまたま寝付けなかっただけだ。せっかくだ。何か一曲捧げよ」


 ヴェネレは軽く微笑むと、琴を奏で歌う。


(歌) 朝もやの中、露は葉を潤す
 その露はしたたり、静かに地に落ちる
 大いなる意思により、避けることのできぬ
 そのしたたりは葉の涙か、闇の涙かは誰も知れず
 何に囚われているのか、囚われているのはどちらか
 麗しい花をたたえ、鳥たちは集まる
 木々は何も語らず、人知れず露を零す


アカネ (うわあ…奇麗な曲…琴も声も澄み渡る…ヴェネレの歌ってこんななんだ…)

スカーレット 「…………」
ヴェネレ 「ほら…あの葉を見てください。
 朝もやの霧に濡れて輝いています。
 鳥が樹にとまるたび、葉が揺れて露がこぼれる。」
ルーネ 「美しい歌だな。」
ヴェネレ 「ありがとうございます」


 もう一度歌うヴェネレ。
 スカーレットは何も言わず、その葉をしばし眺めると視線を落とす。


アカネ (スカーレット…なぜ何も言わないの…?
 自分の足元を見てる…………うつむいてる…?)


 と、スカーレットは視線を上げ
 ヴェネレに向かって強い口調で言う


スカーレット 「ヴェネレ、許可するまで…………歌うことを禁じる」

アカネ (!?)


 <第8話へ続く>





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