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【暴君女王】第9話 「何を求めているの?」

これは「チャット小説」として書いたものです。
そのためセリフ以外の感情等の表現を極力簡潔にしてあります。
セリフをもとに想像してお読みください(*vωv)


 光がおさまると…スカーレットとヴェネレが向き合っていた。


アカネ (TPS!?
 視点がTPSに…………!)

※TPS=「サードパーソン・シューター(Third-person Shooter)」の略。操作するキャラクターの三人称視点で進行するゲームのこと

アカネ (しかもカメラが…
 私の意志や演出に従って映してくれる…!
 これならスカーレットの表情が見える!!
 これが『翼を広げ、はばたかせる』ってこと…!)

スカーレット 「…朝とは打って変わって力強い歌だな…」
ヴェネレ 「…守護天使様はお喜びのようです。あなたをより強固に守るでしょう」

アカネ (お喜びだよ!マジ感謝!ありがとう!ヴェネレさん!!)

スカーレット 「…貴様に…魔術のような力があるかはわからぬが…
 私を守護天使が守っていると言われるのは…悪い気はしないな…」

アカネ (スカーレット…哀愁をたたえてるけど少しうれしそうな顔してる…
 こんな表情だったんだ…
 ていうか…スカーレット…奇麗…長身でスタイルは抜群だし…
 きつめの顔立ちだけど、きりっとしててかっこいい…
 これで恥じらったら、そりゃマルテもギャップ萌えするわー…
 でもこの哀愁…彼女はやっぱり…すごく…孤独だ…って感じる…
 ああ…表情が見えるだけで全然違う!)

ヴェネレ 「明日の共寝係は私ですが…いかがなさいますか?」
スカーレット 「…貴様…いや…………お前は私を抱きたいか?」
ヴェネレ 「もちろん。あなたを抱くということは、守護天使様を抱くということ。
 そんな素晴らしくこの上ない体験を、望まぬわけがありません。」

アカネ (あ…『重なるもはばたくも自由』って…)


 アカネが『重なれ』と望むと、FPSになる。


アカネ (うお!FPSとTPSの切り替えができる!
 そ、そっか…寝所の様子をTPSで見てるって…なんか覗きしてるみたいで嫌だしな…
 ていうか多分この先、この切り替えをしないといけない場面があるんだ…)


 アカネが『はばたけ』と望むと、TPSになる。


スカーレット 「ふん。良い言い訳を考えるな。良いだろう。明日は共寝係の服で来い。今日はもう下がってよい。」
ヴェネレ 「ありがとうございます。スカーレット様」

アカネ (ありがとーーーう!ヴェネレさんーーー!)


 ヴェネレは部屋を出て行く。
 スカーレットはソファーに腰かけため息をつく。


スカーレット 「私に守護天使だと…?ふっ…笑わせる…
 …だが…もしそのようなものがついていて…私を守ってくれているなら…」


 スカーレットは天を見上げてつぶやく


スカーレット 「私に…力を…………」

アカネ (!?
 スカーレット…なんでそんな願いを…?
 あなたは暴君女王なのに…
 悪口を言ったとかであんな拷問して殺してる人なのに…
 それができる力を持ってるのに…

 でも…求めるってことは…『自分には力がない』と思ってるってことだ…
 権力じゃないのかも…

 スカーレット!あなたは何を求めてるの!?
 望みがあるならはっきり言って!

 もどかしい…あなたの言葉は聞こえるのに…
 私の言葉はあなたには届かない…)


 スカーレットは鞭を投げ捨て、侍女を呼んでドレスを脱ぐと
 寝巻に着替えてベッドに寝る。


アカネ (ああ…スカーレットの寝顔をこうして見れるなんて…
 やっぱりなんか…寂しそうっていうか…哀しそうだな…
 何でも持ってるはずの人なのに…

 ああ!!視点がFPSに…!
 そうかスカーレットが眠りに落ちるんだ…
 こういう時は強制的にスカーレット視点になって一緒に眠っちゃうのか…
 感情もシンクロしてくれたらいいのに…

 いや!眠っちゃうまでに覚えろ!
 ヴェネレは何か隠してる…
 『囚われているのはどちらか』の謎を解け…………)


 朝が来て一人で目覚めるスカーレット。
 侍女を呼んで着替えるとルーネが来るのを待つ。
 ルーネは少し表情が暗かった。


ルーネ 「スカーレット様…朝食のお時間でございます」
スカーレット 「…………」


 二人は無言で歩いていく。
 静寂を破ったのは


スカーレット 「言いたいことがあるなら言え。」
ルーネ 「あの…………」
スカーレット 「言え。」
ルーネ 「…………ヴェネレを呼んで…どうなされたのですか…?」

アカネ (え…………)


 1:なぜ気にする?
 2:歌を歌ってもらった
 3:お前が知る必要はない。


アカネ (これは1でしょ…
 だって『歌うな』って言っておいて呼びつけて…
 ああ、何かあって2の歌わせたってことにはなるか…

 3はスカーレットのことを愛してることになってて…
 それを受け入れてることになってるから選んだら拒絶になる…
 でも…あえて拒絶してやきもち焼かせる…?
 いやいや!お互い『ふり』なんだから、やきもち焼いてくれるのかどうか…
 でもなんかルーネ君ホントに好きになってる感もあるんだよな…

 そもそもなんで気にするのかってとこだから…
 ああ、やっぱ1しかない気がする…
 ただルーネ君って1発死多いんだよなー…

 いや!信じよう!)


 1!


スカーレット 「気になるか?」
ルーネ 「いえ…その…」
スカーレット 「なぜ気にする?」
ルーネ 「…………今日共寝係なのに…わざわざ連日呼ぶのかと…」
スカーレット 「それは、私が歌を禁じたヴェネレを呼びつけて折檻したのではと心配しているのか?
 それとも…………嫉妬か?」
ルーネ 「…………どちらもです」
スカーレット 「ならば、中庭に行こう」


 中庭ではヴェネレが竪琴を見事に奏でていた。


スカーレット 「どこにも傷などなかろう?」
ルーネ 「はい…」
スカーレット 「ルーネ、昨日の朝の彼の歌を聞いてどう思った?」
ルーネ 「え…美しい歌だと…」
スカーレット 「私は…………歌詞が気になった。だから意味を聞いただけだ。」
ルーネ 「…朝露に濡れた木の葉の美しさを歌った歌だったと記憶していますが…」
スカーレット 「私に喧嘩を売っているのかと思うところがあった。
 まあ…私の勘違いだったが…。
 解くのを忘れて帰してしまったから今夜来たら歌の禁は解く。」
ルーネ 「…そんなところがありましたか…気付かず申し訳ありません…」
スカーレット 「だから私の勘違いだったと言っているだろう?
 というか…嫉妬したというのは本心か?」
ルーネ 「…………共寝係は…すでに決められたものですから…しかたないと思っています…
 でも特別に呼んだことなどほとんど…」
スカーレット 「質問に対する答えになっていない」
ルーネ 「…夜のお相手が欲しければ…私を呼んでくださればいいのにと…………」


 スカーレットは立ち止まり、ルーネの頬を両手で包む。
 その顔は優しさに満ちていた。


スカーレット 「そう思ってくれているなら…嬉しいぞ。」
ルーネ 「スカーレット様…」
スカーレット 「そういう時はお前を呼ぶことにする。許してくれるか?」
ルーネ 「!許すなど…そんなもったいない…」


 ルーネはスカーレットの手を取ると、手の甲にキスする。


アカネ (ルーネ君…これもう…支配達成の時の反応じゃん…
 なんで?なにもしてないよ?)


 ルーネとスカーレットは微笑み合いながら食堂へ行く。
 食堂でもスカーレットに対して料理人のジオーヴェは
 自分の作る料理を喜ぶスカーレットの様子に満足げに喜んでいた。


アカネ (なんか変だ…ここからじわじわと支配していくのかと思ってたけど…
 ジオーヴェおじさまもスカーレットに敵意を持ってるとは思えない…
 難しいはずのナイトメアモードなのに…

 ハッ…
 たしか…イチ推しキャラなのに一番距離があったメルクリオが…
 『あなたは誰も手懐けられない』って…

 もしかしてこのモードのキャラ攻略方法って…『支配』じゃなく
 手懐ける…つまり…

 『懐柔』…………?

 スカーレットの支配もプリマヴェーラの魅了も『相手を自分から離れられなくすること』
 
 一口に『支配』と言っても恐怖によるとは限らない。
 『懐柔』だって支配の変形だ。

 要するに『相手を自分から離れられなくすること』ができればいい!
 『恐怖による支配』に囚われてちゃだめだ!

 それがナイトメアモードのキャラ攻略法…!)


 朝食後休憩を取り、昼食も午後の執務も夕食も、ルーネと仲良く行う。


アカネ (やっぱりルーネ君に芝居っ気が感じられない…
 攻略法を見つけた気がするけど…騙されてるのかな…私…)

ルーネ 「では、本日の共寝係と交代いたします」
スカーレット 「ルーネ」


 スカーレットはルーネを呼び止め近寄ると頬にキスする。
 ルーネは明らかに頬を赤らめ、おじぎをして出て行く。
 その姿は嬉しそうに見えた。

 ルーネと交換に、ヴェネレが共寝係の服を着て入ってくる。


アカネ (うわ…いつもの民族衣装じゃないと…なんかドキッとする…)


 先に床に入っていたスカーレットを見ると
 ヴェネレは礼をして一緒のベッドに入る。


スカーレット 「お前は…私を抱きたいと言っていたが…その前に…少し話をしていいか?」

アカネ (え…?)


 <第10話へ続く>





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