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【暴君女王】第8話 「吟遊詩人の力」

これは「チャット小説」として書いたものです。
そのためセリフ以外の感情等の表現を極力簡潔にしてあります。
セリフをもとに想像してお読みください(*vωv)


アカネ (なんで!?何で歌うのを禁じたの!?
 何が気に入らなかったの…?)

ヴェネレ 「…………分かりました。歌は歌いませんが、琴は奏でてもよいですか?」
スカーレット 「…………それならば許す」


 スカーレットは振り返らずに去っていった。


アカネ (歌はダメだけど琴はいい…?
 声がダメだったの…?)


 スカーレットとルーネはいつもの日課をこなす。
 夕食を終え、自室に帰るとルーネが言う。


ルーネ 「本日は共寝係の居ない日。お一人の時間をお楽しみください。
 もちろん隣の部屋には侍女が控えておりますので、何かありましたらお申し付けを…」
スカーレット 「…………ヴェネレを呼べ」
ルーネ 「え…」

アカネ (え?)

スカーレット 「共寝の服は着なくていい。」
ルーネ 「は、はい…」


 ルーネがヴェネレを呼びに出て行く。
 スカーレットは戸棚から鞭を取り出す。


アカネ (武器あったんかーい!
 鞭は拷問用具に見られがちだけど…実は立派な凶器。
 衝撃が少なくて音だけが派手なタイプもあるけど
 スカーレットが持ってる長くて太い一本の鞭は
 叩けば絡みつき、肌に吸い付いて皮膚をはぎ取る…
 それ以前にその衝撃はすさまじく、振るわれたらショック死することも多い…
 スカーレット…ヴェネレさんのとこ…そんなに怒ってるの…?)

 ヴェネレが朝の服のままスカーレットの部屋へ来る。
 寝室の隣の部屋でスカーレットは仁王立ちで迎える。

ヴェネレ 「何か御用でしょうか?」


  スパーン!

 スカーレットは床に鞭をふるい大きな音をたてる。


スカーレット 「跪け!」


 ヴェネレは床に琴を置くと膝を折る。
 すると選択肢が出た。


アカネ (え!?ここで!?)


 1:貴様の声は耳障りだ
 2:貴様の歌詞は不愉快だ
 3:貴様のすまし顔は目障りだ


アカネ (ちょい待ちーー!スカーレットが彼をここに呼んだ意図も何にもわかってない!
 スカーレットは何に怒ってるの?声?歌詞?歌ってる姿?そういうことだよね?

 ヴェネレさんは…吟遊詩人だったのをスカーレットが気に入って無理やり宮廷付きの楽士にした…
 これがゲームでの設定…これはどのモードでも反映されてるはず…
 でももしかしたら…最高難易度のこのモードだと変わってるの…?
 いや、考察は後!出てきた事実で考えよう。

 スカーレットは彼の何を気にいったの?
 …声なら気に入らない…?十分奇麗な声だった…まあそれは個人の好みもあるかもだけど…
 声ならそもそも城に置いておかないと思う…

 …顔も気に入らなかったら共寝係にしないだろう…
 だと…「歌詞」なんだけど…………どういう歌詞だっけ?
 朝露に濡れる葉っぱの雫の美しさをうたった歌詞だったよね…?)


 2


スカーレット 「…今朝のあの歌…あの歌詞は何だ?」
ヴェネレ 「朝露に濡れる葉の美しさを歌っただけです」

アカネ (だよねえ…)


 1:葉が涙を流すのか!?
 2:美しい花を称えるか!?
 3:囚われているとはなんだ!?


アカネ (ちょっと!選択肢多い!
 待って…この3つ…
 2と3って…幽閉されてるプリマヴェーラのこと!?
 プリマヴェーラを称えたらそりゃ怒る。敵なんだから!)


 2!


スカーレット 「『美しい花』とはプリマヴェーラのことか!?貴様はそれを称えるのか!?」
ヴェネレ 「…………そうか…………音だけ聞けば…わかりませんものね…………残念です…………」

アカネ (え…………これって…)


 ヴェネレが竪琴を手に取る。
 スカーレットが鞭を振り上げると、それを振り下ろすより早く
 ヴェネレは下部のサンドボックスボディを外す。
 すると弦がスカーレットに向かって弓のように飛ぶ。

  グサグサグサ!

 弦がスカーレットの身体を貫く


アカネ (ぐ…射殺…………痛い…体中に刺さってる…顔にも…動けない…痛い…痛い…血が滴る…………)


 「YOU ARE DEAD」




 気が付くとヴェネレが部屋に入ってくるところ。


アカネ (久しぶりのDEAD…………私は何を間違えた…?)


 1:葉が涙を流すのか!?
 2:美しい花を称えるか!?
 3:囚われているとはなんだ!?


アカネ (ここだ…この選択肢…………あ
 たしか攻撃に出る前にヴェネレさん…『音だけ聞けばわからない』って…
 「たたえる」って「称える」じゃなくて…
 「湛える」…!?
  (※称える=褒める 湛える=内に含む)

 くっそぅ!こんなトラップに引っかかるなんて…
 『美しい花』はプリマヴェーラのことで合ってるだろう…
 確かその前は『何に囚われているのか、囚われているのはどちらか』
 『囚われているのはどちらか』…………?
 プリマヴェーラはスカーレットに囚われてる…
 『囚われているのはどちらか』…………もしかしてヴェネレさんは…)


 3


スカーレット 「囚われているとはなんだ!?」
ヴェネレ 「プリマヴェーラ様は囚われの姫でしょう?」


  パァン!

 スカーレットの鞭が床を撃つ


スカーレット 「私が聞きたいのは『囚われているのはどちらか』というところだ!」

アカネ (やっぱり…スカーレットもそこに引っかかってたんだ…)

ヴェネレ 「スカーレット様…あなたは…自由ですか?」
スカーレット 「なに…?」

アカネ (スカーレットに自由がない?
 それともそう問うて「誰かの自由がない」ことを主張したいの?)

ヴェネレ 「…私は吟遊詩人。想像で創造する者。
 雲の流れに涙を流し水面の光に胸を熱くする。
 想像力と感受性が豊かでなければ…なることはできません。」

アカネ (ヴェネレさんは間違いなく何かを伝えようとしてる…
 彼の言葉を言葉通りに捕らえてはダメだ…
 「美しい花」=「プリマヴェーラ」だったように「比喩」…
 これは簡単な方…きっと難しいひねったのもある…ひっかけもある…
 それを解くカギは「想像力」…
 ありきたりな答えじゃない…)

スカーレット 「…………つまりは…………全部貴様の想像か?」
ヴェネレ 「ええ。私はただ感じるだけ…
 スカーレット様、あなたにはいつも守護天使がついている」
スカーレット 「!?」

アカネ (! まさか…ヴェネレさん…)

ヴェネレ 「今までも…たくさんの守護天使があなたを守ろうとした…
 でもあなたの守護天使の力は弱く…あなたを守ることはできず…」
スカーレット 「…………」
ヴェネレ 「でも…………今ついてらっしゃる守護天使様は…
 かなり位の高いお方のよう…………」

アカネ (! 間違いない…これ…………私のことを言ってる!
 ヴェネレさんはたぶん私が見えているわけじゃない。
 でも感じるんだ。
 確かに今の私はスカーレットの守護天使…守護霊のよう…見守り、時に導く。)

スカーレット 「…天使には階級(ヒエラルキー)があると聞く。
 その位が…高い天使がついているのか…?」

アカネ (違う!
 多分、『守れなかった天使』とは今までこのナイトメアモードに挑戦してきた乙女のこと。
 だってハヤトさんが言ってたもん!
 『クリアした人は居ない』って…!
 『位』とは…………『ゲーマーレベル』だ!)

ヴェネレ 「はい…この世の理を…熟知していらっしゃる…」

アカネ (間違いない…!
 『この世の理』とはこのナイトメアモード…いや…
 『ゲームの世界』のことだ!
 詩的な表現で語ってるけど、これは『謎解き』。
 よく謎解き要素のあるホラーゲームにあるパターン。
 抽象的・象徴的な表現でプレイヤーにヒントを与える。
 ヴェネレさんの言葉はそれだ!)

ヴェネレ 「スカーレット様…もしお許しいただけるなら…
 あなたの守護天使様に歌を歌わせてください」
スカーレット 「…………」

アカネ (! 許して!スカーレット!歌わせて!
 これは『フラグ』だ!
 フラグは物語が大きく進むことができるようになるスイッチ!
 そのスイッチを入れることを『フラグをたてる』っていうのよ!
 歌わせて!お願い!)

スカーレット 「…貴様の話…にわかには信じられぬ…が…私にではなく守護天使に歌うというなら…
 許そう。」

アカネ (スカーレットーーー!!!ありがとうーーーー!!!)


 ヴェネレは竪琴を携え立ち上がると、スカーレットの頭上後ろに向かって奏で歌う。


(歌) 女王を守る者よ その翼を広げよ
 女王を守る者よ その翼をはばたけ
 あなたが女王を守るなら
 私はあなたを守るだろう
 あなたが女王を守るなら
 私は力を醒ますだろう
 その瞳で女王を見
 その翼で女王を廻る
 重なるもはばたくも自由
 重なるもはばたくも自由


 歌い終わったとたん、周りは光に包まれた。


アカネ (なに!?)


 <第9話へ続く>





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