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【暴君女王】第4話 「罠」

これは「チャット小説」として書いたものです。
そのためセリフ以外の感情等の表現を極力簡潔にしてあります。
セリフをもとに想像してお読みください(*vωv)


 食堂についたスカーレットとルーネ。
 ルーネが椅子を引きスカーレットが腰かける。
 ルーネもスカーレットのそばに腰かける。
 目の前に豪華な料理が並べられる。
 と、料理人が現れる。


アカネ (あ…この人は間違いなく、宮廷料理人のジオーヴェだ…
 この人だけは寝所に呼ばれることはない…
 なのに攻略対象なんだよな…
 性格は良いけど…小太りの気のいいオジサンな容姿と言い…なんでこの人も攻略対象なんだろ…
 ファザコンな人狙い?マニアックなターゲット+メリハリに入れたのかな…)


  ジオーヴェが料理の説明をする。


アカネ (え?選択肢?)


 1:ルーネ、私の料理を食べろ。毒見だ。
 2:ジオーヴェ、私の料理を食べろ。毒見だ。
 3:(黙って食べる)


アカネ (え…てことは…この人の選択肢間違ったら…私…
 毒殺されるの!?やだ!冗談じゃないよ!!!
 食中毒起こしたことあるけど…あの時も死ぬかと思ったけど…
 毒殺なんて…間違いなくあの苦しさの何倍も苦しい!
 どうしよう…

 ルーネに毒見をさせるのはダメだ…
 スカーレットはルーネに愛されてることを受け入れてるふりをしてるんだから…

 かといってジオーヴェおじさんに毒見しろって…
 完全に最初から彼を疑ってる選択だ…

 黙って食べていいものなの…?)


ジオーヴェ 「いかがなさいました?スカーレット様の好物を集めましたが…」

アカネ (こ、こんな気のいいおじさま丸出しの笑顔でお料理出してくる人を…
 疑う理由があるの…?
 ルーネは何で料理に手をつけないのよ!
 あ…そっか…女王より先に食べるなんて礼儀として出来ないんだ…
 くそお!疑えない!)


 3!


 スカーレットは黙って食事を口にする。
 それを見てルーネも食べ始める。


アカネ (!…………おいしい…………すっご…こんなの食べたことない…
 やっば!起きたばかりなのにとまんない一!)


 バクバク食べるスカーレットを見てルーネは驚く。


ルーネ 「今朝はずいぶん食がお進みですね。」

アカネ (うわあ!また選択肢!あのさ!空気読んでよ!
 今おいしい料理食べてんのよ!邪魔しないでよ!)


 1:私が太ったら嫌いになるか?
 2:料理がおいしいだけだ。
 3:太ったら新しいドレスを作る楽しみが増えるな。


アカネ (???
 まあ1は分かるよ?ルーネ君の愛を確かめるセリフだよね?
 でもそれって裏を返せば「お前の愛の言葉を疑ってる」ともとられかねない…
 3は…多分この世界の王宮の収入って民からの税金だよね…?
 言葉のままなら浪費愚王のセリフだなあ…
 無難に2かな…)

スカーレット 「料理がおいしいだけだ。」

 それを聞くとジオーヴェは嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。

ジオーヴェ 「スカーレット様からそのようなお言葉を頂けるとは!
 料理人冥利に尽きます!」
 スカーレット「本当のことを言っただけだ。」

 ジオーヴェはますます嬉しそうにした。
 食事が進み次の料理が出されるとまた選択肢。

アカネ (だーかーらー!ゆっくり飯食わせろー!
 食事中の歓談もいいけどさ!選択肢多すぎ!もういい!ジオーヴェおじさまが毒を盛るなんてことないわ!
 そう信じて飯堪能選択肢にするうううう!!!)

 アカネはひたすら「食事に集中しろ!」「作った者に失礼だ!」「とてもおいしい!」という選択肢を選び続けた。
 と…

ジオーヴェ 「デザートでございます。シャーベットという氷菓子です。」


  パク


アカネ (おいしい~~~~!!!
 甘くてさっぱりしててスッキリする~~~!
 あ、選択肢…)


 1:美味かった。
 2:2度とこんなものを作るな。
 3:いつ毒を盛られるか楽しみだ。


アカネ (アホか!2も3もあり得ないし!もーひたすらおいしかったよおおおお!)


 1!


スカーレット 「とても美味かった。これからも美味い料理を期待する。そなたはよい料理人だ。」

アカネ (うわ、スカーレットがこんなべた褒め…「らしくなかった」かな…)

ジオーヴェ 「ありがたきお言葉…このジオーヴェ、スカーレット様が私の作った料理をお楽しみいただけることが喜びでございます。」
ルーネ 「とてもおいしかったよ。ごちそうさま。」


 スカーレットとルーネは連れ立って食堂を後にする。


アカネ (ん?え…………?終わり?
 ちょっと待って!ここにはDEADトラップなし?
 そんなわけないよね…?
 ここの選択肢…20くらいあったよね…?
 もしかして私…あんなにあった選択肢の嵐…すべて正しいのを選んだの?
 …普通なら喜ぶべきことなんだろうけど…

 私、何の選択を選んだのか覚えてない!!

 まずい…これじゃまたジオーヴェが出てきたとき対処できない…
 それに今の選択肢でルーネにどう影響を与えたのかもわからない…

 ダメ…多分このゲーム、場面が変わるとオートセーブが入るタイプだ!
 食堂から出たらもうさっきの場面はやり直せない!

 オートセーブのゲームによくあるやつ!!!
 「『今のイベントもっかいやりたい』ができない」!

 「オートセーブだ!最初からやり直さなくて済む!」って喜んでたけど…
 これ…………

 罠だ…………

 スカーレットは私の意志では動けない…
 攻略チャートを作るどころかメモもできない…
 全ては私の記憶力が頼り…………

 選択肢がうまくいきすぎて覚えてないってのは致命的なんだ…!

 どうしよう…………
 いや…………うろたえてる場合じゃない…これから気を付けるしかない!
 とりあえず、今のイベントを経て、ルーネ君にどう変化があったか観察しなきゃ)


 誰も気づいていなかったが
 アカネことスカーレットたちをはるか頭上から見つめる者がいた。


? 「彼女のような…多くのゲームをやっているゲーマーでなければ、この罠には気づかなかったかもしれない。
 この罠に気づけないのは致命的なことだった。
 多くの挑戦者がこの罠にはまって散っていった…
 だがそんな彼女も…まだ気づいていない…
 このナイトメアモードのもう一つの罠に…………」


スカーレット 「今日のこれからの予定は?」

アカネ (あ、そうか…ルーネ君はスカーレットの秘書官…スケジュール管理とかしてるんだ…)

ルーネ 「先日密告があって捕らえた、女王の悪口を言った者たちの処刑でございます。」

アカネ (処刑!?…確かにゲーム中でもそういうシーンはあった…でもゲームだと
 火あぶりとかの拷問の末に死んでいくのを見るスカーレットの後ろ姿の一枚の絵が出て終わるだけ…
 それを生で見せられるの!?)


 ルーネに導かれて処刑場の観覧席に着くスカーレット。
 コロシアムのようになっている処刑場には国民たちがひしめき合って見物に来ていた。


アカネ (え…?処刑をショーにしてるの…!?
 多分…知人や親族も居るのかもしれないけど…
 怖いもの見たさの人、加虐癖のある人とか…見に来ている理由は様々なんだろう…とんでもないよ…!)


 3人の罪人たちが鎖につながれて中央に連れてこられる。
 顔をローブで隠した処刑人が処刑器具を持ってくる。


ルーネ 「ほう、今日は『鉄の椅子』ですか」


 鉄の椅子とはその名の通り鉄でできた椅子だが
 座って身体がつく面に無数の針がついている。
 さらに座面の下には石炭が炊けるようになっていて
 「体中串刺し+火あぶり」みたいな拷問器具だった。


アカネ (歴史上だとたしかこれで死ぬとは限らなくて…
 でも傷口から病気になる…
 周りの人間に苦しむ様子を見せて恐怖させるのが最大の目的…
 熱いアイアンメイデン外から見えるバージョンみたいな感じのやつ…
 でもこの世界では「処刑道具」ってことは…)


 処刑人は罪人を椅子に座らせ、両手両足を金具で固定する。
 罪人は獣のような悲鳴を上げた。


アカネ (ひいいいい!!!やめてよ!こんなの見たくない!)


 針が刺さり足元に血だまりができていく。
 さらに処刑人が座面の下の石炭に火をつけると
 罪人は身をよじって形容しがたい叫び声をあげた。


アカネ (あああ!熱くて身をよじるからますます針で傷ついて血が噴き出ていく…!
 ただスカーレットの悪口を言ったとか言う理由でこんな目に合うの!?)


 横で縛られていた二人の罪人はその様子を見て叫ぶ


罪人 「女王様の悪口なんて言っていない!私たちは無実だ!」
罪人 「俺たちは罪人にでっち上げられたんだ!」


 罪人は必死に訴えたが、観客は椅子の罪人を見て歓声を上げ、その声にかき消されていた。


 20分も経った頃、処刑人は椅子の後ろにまわる。
 椅子の背もたれの裏には鉄の皿のようなものがついていて
 背もたれの針はその皿から伸びているようだった。
 処刑人がハンマーで鉄の皿を叩くと
 皿が押し込まれて罪人を串刺しにする。


アカネ (いやあああああああ!
 鉄の針が体を貫いちゃってるじゃん!
 目をそらしたいのにできない!
 目をつぶることすらできない!
 何でスカーレットは見てられるの!?)


 貫かれた罪人は絶命し、一度座面の炭火がどかされ、椅子に水がかけられる。
 湯気が収まり椅子が冷えたら、死んだ罪人は椅子から降ろされ、次の罪人が座らされる。
 3度繰り返される凄惨な光景にアカネは吐き気をもよおしていたが
 スカーレットの身体はびくともしなかった。

 3人の処刑が終わり、ルーネが立ち上がり声を上げる。


ルーネ 「『女王』に歯向かう者はこうなる!心せよ!」


 ルーネの声に観客は歓声を上げた。
 スカーレットも立ち上がり、無言でその場を離れる。
 ルーネもついていく。


アカネ (やっと終わった…)

ルーネ 「この後は昼食まで特に予定はありません。いかがなされますか?」


 1:独りにさせろ。
 2:もっと処刑が見たい。
 3:私を楽しませろ。


アカネ (う…これ…間違ったら…殺されるうえに、またあの処刑見せられるの…?
 せっかくおいしい料理食べてゴキゲンだったのに…
 正直休みたい…休むためにも正しい選択肢を…
 2はダメ…また別な人の処刑を見せられかねない…
 3はルーネといちゃつきたいってことなんだろうな…
 3な気がするけど…てことはスカーレットはあれを見て興奮しましたってことになるの?
 最悪…………いくら暴君でも…それじゃただのサディストじゃん…
 ただのサディスト…………?スカーレットはただ単に楽しいから人を苦しめていたの?
 なんか違和感がある…………)


 1


スカーレット 「独りにさせろ。少し休みたい。お前も休むがいい。」
ルーネ 「…お気遣いありがとうございます。では昼食時にお迎えに上がります。」


 ルーネはスカーレットを部屋に送るとおじぎをして去っていった。


アカネ (合ってた…の…?ふう…)


 スカーレットはテラスのそばにある長椅子に寝そべると外の景色を眺めた。
 外の風がさわやかに吹き込んでくる。


アカネ (ああ…気持ちいい…具合悪くなったわ…
 あんなの見て…観客もなんで歓声あげてんのよ…
 狂ってるよ…………
 処刑をショーにするのも…それを見て喜ぶ民衆も…!
 スカーレットも…どんな気持ちであれを見てたのよ…

 …………どんな気持ち…………?

 スカーレットはあれを見て…喜んでたの?憐れんでたの?怒ってたの?
 このゲームはFPSだから…私…………スカーレットの顔が見えない…………

 ※FPS=「ファーストパーソン・シューター(First-person Shooter)」の略。操作するキャラクターの本人視点で進行するゲームのこと

 大笑いしたり涙を流せばそれははっきり分かるけど
 スカーレットの顔の筋肉の動きってすごく少ない…
 例えば口の端を上げたのは分かっても、優しい微笑みなのか悲しい笑みなのか冷笑なのか…………
 「微妙な表情」がわからない…
 顔を見れば大抵気持ちが表れてるもんなのに…それができないって…すごい弱点だ…

 FPSは没入感を高めてくれるけど…操作が出来なくて勝手に動いてドラマを見せられるゲームでは
 大抵主人公こと「自分のキャラ」の気持ちは第三者に指摘されるか
 勝手に自分の気持ちをセリフで言ってくれないと分からない…!

 攻略キャラの気持ちばかり考えてたらダメだ…!
 もし「笑う」とかの大雑把な選択肢が出た時、どういう笑みなのかがわからない!

 このゲームがFPSなことって…オートセーブと同じように…

 …………罠だ…………!)


 アカネが第2の罠に気づいたのを、はるか頭上から見つめる者は…


? 「ほう…この時点で第2の罠まで見破るとは…彼女なら…もしかしたら…」


 <第5話へ続く>





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