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【万葉集】馬並めて(巻十七・三九五四 大伴家持)

馬並(な)めていざうち行かな渋渓(しぶたに)の清き磯廻(いそみ)に寄する波見に
(巻十七・三九五四 大伴家持)

【解釈】

馬を並べて、さあみんなで出かけよう。渋溪(しぶたに)のきれいなビーチに、寄せてくる波を見に行こう。

大伴家持が役人として越中、現在の富山県に赴任していた時の作です。

家持の家でみんなで飲んでいて、盛り上がってきて詠んだ歌。
詞書には旧暦8月7日の夜との記載があるので、涼しくなってきた初秋の夜風に吹かれて、海まで馬で走ろうぜと言うのでしょう。

家持、なかなかパリピです。
最高に大切な仲間と海へ。みたいなのをSNSにアップしそうな雰囲気です。

とはいえ大伴家持は奈良の都育ち。29歳からの5年間を過ごした越中の風景は、何かと新鮮でクリエイティビティを刺激されるものだったのかなと思います。

(たぶん彼女と一緒に)朝寝坊をして、射水川の船乗りが歌う舟唄を遠巻きに聞いている歌(こちらの記事で書きました)なんかも残しています。

さて、「渋渓(しぶたに)の清き磯」とは現在の富山県高岡市、雨晴(あまはらし)海岸であると言われています。江戸時代には松尾芭蕉も訪れているようですね。

一度行ってみたいとずっと思いつつ、ようやく訪ねる機会を得たのはつい先月、2022年11月のこと。

晴れた日の富山湾は青く穏やかで、海越しに見える立山連峰は少しだけ雪をかぶっていて、聞きしに勝る景勝地でありました。
海と雪山を背景にJR氷見線の列車がコトコト走る様子は、何とも旅情をそそります。

それにしても高岡市は思った以上に万葉集推しで、「高岡市万葉歴史館」という資料館があったり家持の銅像を建てたり、万葉集の歌碑も全部で24ヶ所(!)もあるようでした。

取材の帰りに通りがかる程度だったので、改めてゆっくり回ってみたいです。

取材先の七尾市で、立山連峰がきれいに見えるのは春先と教わったので、次に行くなら春もいいかな。

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