見出し画像

商工会議所の中小企業向け公的支援について

商工会議所について聞くと、
「商工会議所という名前は知っているけれど、
どんな業務を行っているの?」
「商工会議所で、経営相談や補助金の相談ができるらしいけど、
どうしたらいいの?」
「商工会議所って敷居が高そうじゃない?」
など聞かれることも多く、中小企業向け、特に小規模事業者向けの公的支援が充実しているのですが、案外知られていない部分も。

今回、商工会議所の中小企業向け公的支援、特に小規模事業者向けの内容について分かりやすくお伝えしたいと思います。
小規模事業者の方、中小企業の支援業務を行っている専門家の方に、商工会議所の活用方法をお伝えできれば幸いです。


  • 商工会議所って何?

  • どうして商工会議所が公的支援?

  • 商工会議所の公的支援

  • まとめ

商工会議所って何?


 商工会議所の母体は、中世から近世にかけて西欧諸都市において、商工業者の間で 結成された「ギルド」だと言われています。
 世界初の商工会議所は、1599年のフランスのマルセイユに組織された、マルセイユ 商業会議所。 それ以来、ヨーロッパ大陸諸国には、フランスに範をとった商工会議所が続々設立されました。
 日本においては、1878(明治11)年、江戸時代に欧米列強と締結した「貿易に関する 不平等条約」の撤廃を目的(議会がまだ設立されていない中、世論の顕在化を目的)に、 東京、大阪、神戸の3カ所に商法会議所として設立されたのが始まりです。
※日本の商工会議所は、英米をモデルとしたため、任意加入の組織形態となっています。(仏独は、事業者であれば加入が必須)

 当時、ヨーロッパ列強から、「商工会議所のない国家と平等な条約は結べない」と言われ、日本でも商工会議所(当時は商法会議所)を設立する動きが出たそうです。
 創設者して有名なのは、現在の東京商工会議所を創設し、新1万円札の顔となる「渋沢栄一翁」ですね。

国の事業との親和性のある組織

 明治時代に、不平等条約の撤廃に尽力したことから、民意で作られた組織でありながら、国の事業と親和性のある組織として、明治、大正、昭和、平成、令和と現在まで継続しています。
 第二次世界大戦前、戦時中、戦後と何度も組織編成がありましたが、
今日では、商工会議所法に基づく認可法人の位置づけとなっており、 全国に515の商工会議所(会員数 約123万)があります。

商工会議所と商工会の違い

 商工会議所と商工会の違いは、法律の違いによる組織の違いとなります。
 公的支援の内容について、大幅な違いはありません。(組織の運営方法には違いがあります。)
 また、基本的に、商工会議所は市の地域に置かれ、商工会は町村の地域に置かれています。

どうして商工会議所が公的支援?


 このような歴史的経緯で全国にある商工会議所ですが、
どうして商工会議所が公的支援をしているのか、と思う方も多いと思います。
 それは、商工会議所・商工会が経済産業省管轄の特別認可法人であることと、これまでの経済危機等に対応すべく、商工会議所・商工会が地域の小規模事業者・中小企業に支援する法律が作られ、時代に合わせた経営課題の解決に取り組んでいるからです。
 
ちょっと堅い話ですが、主な法律は次のとおりです。


1960(昭和35)年 国の「経営改善普及事業」がスタート


 地域の小規模事業者(商業・サービス業は従業員5名以下、製造業は従業 員20名以下)の経営基盤の強化、地域商工業の振興を目的とした、
国の「経営改善普及事業」がスタート。経営指導員を配置。
(小規模事業者からの「金融」「税務」「労務」相談に対応)

1996(平成5)年 小規模事業者支援法の制定
「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」制定
(通称:小規模事業者支援法)

2014(平成26)年「小規模企業振興基本法」成立

平成27年度から小規模企業施策が本格化
(小規模事業者持続化補助金等)

2014(平成26年)「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」一部改正


経営改善普及事業の中に、「経営発達支援事業」を新たに位置づけ、商工会また は商工会議所が小規模事業者の経営戦略に踏み込んだ支援を実施する「経営発達支 援計画」を経済産業大臣が認定する仕組みを導入

商工会議所の公的支援について


 もともと地域に密着した組織であり、かつ国の事業との親和性もあったことから、戦後から地域の小規模事業者支援を行うこととなり、
約50年間、そのノウハウが蓄積されてきました。
 そして、失われた20年からの脱却、地方創生などには地域の小規模事業者の持続的な成長が必要だという施策の下、平成27年頃から小規模事業者支援の施策が充実しています。
 代表的なものを紹介します。

経営相談

◎経営指導員による相談対応
 県の承認を受けた「経営指導員」等が、 随時、経営全般の相談に対応(無料)

◎専門家派遣
主に小規模事業者を対象として、専門家を派遣し課題解決を支援(無料)

◎税務に関すること
経営指導員が税務に関する相談に随時対応(無料)

◎個人事業主の年末調整、確定申告
 記帳に関する相談にも対応

◎創業支援
 経営指導員が創業に関する各種相談に随時対応(無料) 創業スクールを開催し、創業を総合的に支援

福利厚生・人材育成に関する事

◎定期健康診断の実施
 主に会員企業向けに、定期的な健康診断を開催

◎会員企業向け共済制度、特定退職金共済制度の取扱い
会員企業を対象とした、ケガや病気に対応した生命共済制度を運営 特定退職金共済制度を取扱い

◎資産形成支援 小規模企業共済制度、セーフティ共済制度の取扱い

◎人材育成支援
日商簿記の運営 労務の各種セミナーを開催

これはほんの一部で、実際は各商工会議所で100近い中小企業支援の事業を運営しています。

まとめ


 商工会議所(または商工会)のメリットは、何といっても事業所のある地域に身近にあるということです。
 経営指導員が随時、さまざまな経営相談に対応していて、多くが無償の公的支援です。
 経営課題があったとき、人材育成・福利厚生などを考えるとき、ぜひ商工会議所(商工会)の公的支援を活用してみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?