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雨の日は自分の機嫌を取る

3月11日
夜、トイレに何回か起きてしまうのだけど(年寄りみたい)、トイレから戻って、裸眼でぼんやりと暗い寝室のなかを歩いて布団に戻り、スウスウと寝息をあげている息子のつるんつるんのほっぺをひと撫でして「だいすきだよ」といつものように囁くと、ねむっていると思っていた息子が、目をつぶったままに「○○も、だいすきだよ」と優しくつぶやいた。その、ほとんど囁き声に近い、あたたかな声。使い古された言葉で、クサくてはずかしいけど、誰がなんと言おうと「たからもの」の瞬間なんだよなあ。起こしてしまわないように「ありがとう」とおでこを撫でて、囁きを噛みしめるように目を閉じていると、目尻からじんわり涙が滲んだ。

そのあと、夢の淵で思い出したのは、夫と付き合っていたころのこと。

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