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街中のポイント・ネモ

あなたは「ポイント・ネモ」という言葉を知っているだろうか。

どこの陸地からも遠い場所のことだ。役目を終えた宇宙ステーションなどが落とされる場所でもある。周りへの被害をさけるために人がいない場所を探そうとした結果、そのような場所ができたのだ。

ジュール・ヴェルヌの小説『海底二万マイル』に登場するネモ船長から名づけられている。到達不能極といわれる、人類が行きづらい場所のひとつだ。

到達不能極というのはいくつかあって、最近だと『宇宙より遠い場所』というアニメも有名だ。

2007年に昭和基地に招待された元宇宙飛行士の毛利衛が「宇宙には数分でたどり着けるが、昭和基地には何日もかかる。宇宙よりも遠いですね」と話したことに由来する。

何というか不思議な話である。

人間がいなければただの海の真ん中でしかないのに、人がわざわざ「人がいない場所」と設定して価値を見出し、わざわざそこに出向いたりするのである。

この話を聞いていて、普通の生活の中にもそういう場所はたくさんあるなと思った。

サウナや映画館、登山などである。

いずれも強制的に電源をきったり、届かなかったりして連絡をすることができなくなる。到達不能、というよりかは連絡不能極と言えるんじゃないだろうか。

と、まあここまではよく聞く話なのだが、ここからが私の話したいところである。

「スマホの電波から逃れたい」として映画館に行ったりや登山をする人がいたが、前々からそのネガティブすぎる理由はやめてほしいと思っていた。

だが今回「ポイント・ネモ」という言葉をきいて、「スマホが届かない場所としての映画館・山」という意味付けがちょっとポジティブに変わった。

ポイント・ネモ
=海底二万マイルのノーチラス号がいる場所
=街中のポイントネモは、映画館や山
=映画館はノーチラス号がいる場所?

という図式が頭の中でできたからだ。

意味不明だと思うので詳しく言うと、
つまり映画館や山・サウナにいるという事は、人がだれもいない静かな海底にいるのと同じようなことじゃないかと思ったのだ。光の届かない海の奥底に潜り、ときどき空気をもとめて浮上する。

なんだか潜水艦というか、クジラみたいだ。

私がひとりで映画館やサウナをうろついているのは、きらきらした太陽の光が届かない静かな場所をゆうゆうと泳いでいるだけなのである。逃げるためじゃない。ただ静かで居心地の良い場所で、次の深呼吸をまっている。

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ちなみに「ネモ」とは、ラテン語で「誰でもない」という意味。
ポイント・ネモ、とは誰でもない場所とも読める。

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