【三題創作怪談】 肆ノ巻 『ハチの巣』
選出テーマ
・竜田揚げ
・ガトリング
・自動車
特別ルール
なし
※今回は動画は無いですが、チャンネルのURL載せておきます。
あと少しで100人いくので、ぜひチャンネル登録をお願いいたします。
https://www.youtube.com/channel/UCAUybpZtD597YAFygDTDFVg
「普通の刺身なんて高すぎて手が出ないですよね? だってあれ安売りでも400円以上はするじゃないですか」
安月給の身の上ではあんなものはとんだ高級品だと高田さんは言った。
しかし最近のスーパーだとマグロの刺身を成形したときに出る切れ端、いわゆる「アラ」が売ってることがある。
本来は廃棄品で生食用のものではないのでちゃんと加熱用と大きく書いて売ってる。
それも値段が200円前後でたくさん入っていてお得なのだという。
「これがね、魚が大好きな俺にとってはもうたまらないんです!」
高田さんはスーパーにアラが並んでいるのを見つけるとすかさず手に取って買ってしまう。
その日も鮮魚コーナーに並ぶアラを見つけてすぐにかごに入れたそうだ。
「よし! 今夜は竜田揚げだ!」
テンションが上がりワクワクしながら会計して家路についた。
しかし、スーパーから家までの道のりに信号機のない横断歩道があり、いつもそこ交通量も結構あるらしく渡るのが怖かった。
「どうせ今日も車止まってくんないんだろうな」
諦めてもう少し歩いたところで渡ろうかなと考えていたらしいのだが、その日は珍しく車が止まってくれ、軽く会釈して足早に横断歩道渡った。
しかし、なんとその止まった車の脇を別の自動車がスーッと猛スピードで通り抜けてきた。
「危な!!」
と叫んで咄嗟に前方に飛んだ。
自動車は謝罪もなしに走り去っており、危ないことする奴がいるんだと思い腹が立った。
思わず回避したせいで持っていた買い物袋の中身は歩道のアスファルトにぶちまけられている。
さっきまでテンション上がってた分むかつくやら悲しいやら複雑な気分だった。
怒っても仕方ないので買った物を拾い、またもと通り袋へと戻していった。
そして、竜田揚げにと買ったアラのトレーを拾った。
その瞬間だった。
「うわ!!」
思わずトレーを取り落とした。
何故ならトレーの中に入っていたアラ、全部に穴が開いていた。
一つや二つではない。
なんというか、ガトリングで撃たれたように穴だらけになっていて、集合体恐怖症だった高田さん、全身が粟立ちゾワゾワとするほどに気持ち悪かった。
なんでこんなになってるのかもわからない。
さっき買ったときはたしかにこんなに穴だらけではなかった。
気持ち悪かったし持っても帰れない、まして間違ったって食べたくなかった。
高田さんは仕方なくそのアラを側溝に投げ捨てて帰ったそうだ。
次の日、そこを通りかかって側溝の中を覗いてみたところ野良猫かカラスが食べてしまったのか、トレー以外はほとんど跡形もなくなっていたという。
「結局なんであんなふうになってたんでしょうか? 今でもアラは買うんですが、そういうことないんですよね……。茶幻さんどう思います?」
首をかしげる高田さんだった。
自分も首を傾げた。
皆目見当がつかない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?