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正しい日本語表現

〈はじめに〉
※これから語られる言葉は少し長いかもしれませんが、なんども読み返してください。
※できれば声に出して読んでください。文章のリズム、語感がしぜんと身につきます。

 前回はいい文、わるい文について考えてみました。あらためて「いい文」とは何かと問われたら、こう答えることができたはずです。

いい文=正しく伝えることができる文

 では、正しく伝えることができる文とは、どんな文のことでしょうか。「正しい」の内容も次のように答えることができるはずです。

 ①間違いがない
 ②意味がぶれない

 いい文を書くためには、正しい文を書くことが大事です。そして、正しい文を書くために必要な知識や技術や経験、そういうものを、ここではライティングスキルと呼ぶことにしましょう。


【間違いがない、を支える語彙力】
 正しい日本語とは、どんな日本語でしょうか。「正しい」という言葉はとても強い力を持っています(言葉にはそれぞれ力の強弱があります)。正義とか、正邪とか、正解とか、正論とか。自分は正しくて、相手は間違っている。そう言われてしまうと、どうにも困ってしまいます。私たちは、ちょっとずつ正しいものをもっていて、同時に、ちょっとずつ間違ったものを抱えています。ですから、どんなものごとにおいても、100%正しいとか、100%間違っている、と言い切れる場面というのは、実にレアなケースなのです。だから、正しい! と連呼されると、困ってしまう。
 わたしたちは「いい文」を考える上で、「正しい文」についても考えました。そこでの「正しい」は、「間違いがない」「意味がぶれない」という意味でした。ということは、「正しい日本語」を考える上でも、まず最初に、間違いがなくて、意味がぶれない、つまり、読み手にストレスや誤解を与えない日本語、これを目指すことにしましょう。

 間違いがない日本語のベースとなるのは語彙力です。私たちは生まれてこのかた、だいたいの時間を日本語とともに生きてきました。日本語を通して自分の気持ちを伝えたり、考えを説明したりしてきたのです。だから、日本語はばっちり。と、思っているかもしれません。もちろん、たいがいのことは、たいがいの日本語を通して伝わりますし、言葉の意味が分からなくても、ノンバーバルなもの(動作、状況、空気を読む、などの非言語コミュニケーション)をうまく取り込みながら、だいたいのことを理解して、だいたいの内容をイメージすることができます。
 ちなみに、このノンバーバルコミュニケーションは、相手といっしょに過ごす時間が長ければ長いほど効果を発揮します。長年連れ添った老夫婦、というのが典型的なイメージでしょう。


「あれ、どこにやったかな」
「むこうに置いてありましたよ」


 ふたりの間では、「あれ」がテレビのリモコンであること、「むこう」がリビングのソファであることが共通理解のもとにあるからこそ、会話が成立しています。もし、これを初対面の人同士が同じ会話をしたとしたらどうなるでしょう。

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