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茶室/茶藝室に敷く青白磁の淡い色合いを求めて

2021年春の終わりだっただろうか、京都で宿を運営されている方が新しい事業として始められたスペースで使うために赤穂ギャベをオーダーしていただいて、納品ができたのがこの秋口... およそ半年間ぐらいの納期をいただいて制作したことになる。ほんとにお待たせしました...

振り返ってみるとその宿のオーナーとは、赤穂ギャベ発足の1年前である「2018年10月30日」に初めてお会いしていると僕のメモが残っていおり、その日は僕と赤穂ギャベとの初めての出会いでもあった。その晩に赤穂緞通の織り手有志から赤穂ギャベの骨子を一緒に聞く機会でもあったので、彼も発起メンバーって言ってもいいかも知れないw... お客様であるが身内のような距離感もある。その後、気がつくと僕が赤穂ギャベの代表になっていたりするんだけれど... 

赤穂ギャベの生産体制としては、発起メンバーである赤穂緞通の織り手を中心に新たに加わった織り手らによって、とてもゆっくりとしたペースで生産している。そもそも供給ペースが遅いので在庫が増えていくようなリスクも少なく、ちょうど良い感じでお客様の元に嫁いでいく。オンラインサイトに掲載しているラインナップは、ほとんどが在庫がなく受注生産というスタイルでご注文いただく状態になっており、正直なところお客様優先ではなく、織り手の都合(状況)も確認した上で納期を決めることが多い。現時点での目安として2ヶ月という納期を持たせているが、織り手の機(はた)が別の仕事で埋まっているとその仕事が終わるまで作ることはできない。

糸から準備する

今回、オーダーをいただいたのはそのスペースに誂えられた白い箱型の椅子用の椅子敷きで、その白い箱型の椅子は和紙職人ハタノワタルさんによる仕事。真っ白というよりも和紙特有の柔らかい表情があるので、温かい白だ。そこに合う色合いや風合いを考えると、常備している糸には無いと判断し、糸から準備することになる。

赤穂ギャベは『綿糸でつくる手織りの椅子敷き』と謳っているが、それは条件ではなく訴求手段としてタグラインという役割でもあるので、必ずしも綿糸でないといけないとは考えていない。今回はその椅子に相応しい色合いとして「青白磁」というキーワードが生まれたんだけれど、藍染の糸としてもっとも明るい藍を探す中で、甕覗(かめのぞき)という状態が良さそうとなって、検証してみるも目指した風合いに何かが足りないということから、透明感というかパリッとした感じを持たせるのに綿糸をベースとして少し麻糸を加えていく。

ちなみに赤穂ギャベの文脈には赤穂緞通があるんだけれど、赤穂緞通のほとんどは綿糸を素材としているが、当時の依頼者からの注文によって綿糸、絹糸、麻糸など柔軟に素材を選んで生産されていたと記録も残っているようだ。

補足:「麻」は植物由来の繊維の総称と聞く、椅子敷きとして使えるのはリネン(亜麻:アマ)、ラミー(苧麻:チョマ、カラムシ)が良いんじゃなかろうか。

青白磁として用意した糸で数パターンサンプルを制作して目指す色合いを見定めてから本制作となる。藍染の糸は経年変化もあるので、椅子敷き表面の色合いと糸の側面(椅子敷きの内部)を比較するとすでに表面の色合いが角が取れる様に柔らかい印象になっている。

糸はすべて同じ条件で染め上げてから合糸をしたので、いわゆるロットは同じになるんだけれど、複数の織り手に同時進行で制作してもらったこともあって、織り手による個体差が生まれている。これは手織りならではの作用でもあるし、使っていただく間に、さらに味わいとして深まっていくんじゃないだろうかと思っている。


...ここに書き残すか迷ったけれど

納品された赤穂ギャベを手にしたオーナーのコメントも踏まえて、僕の備忘録として書き残しておく。同じ織り手であっても複数の織り手であっても、完全に同じように作れないし、どうしても織り手の個性やその時の状態はそのまま反映される。もしも、すべて完全に同じ様に作って欲しいというオーダーがあったらお受けできないとお答えするのが、今やっているモノづくりだと再確認する機会になった。

僕が赤穂ギャベに取り組んでいる動機のひとつに、一人の織り手が機に向き合ってひと目ひと目糸を結んでいく光景が赤穂ギャベの本質であると捉えているし、椅子敷きは織り手が機に向き合った一つの区切りであって、椅子敷きが織り手から使い手に渡った時点で終わるのでなく、その椅子敷きの経年変化や使っていくことで生じる補修なども含めたものもひっくるめていければと思っている。

んで、これから多くの方にご利用されることを思うととても嬉しいです!(定点観測してみようかな♪)

たまたま、先日、中東のギャッベとペルシャ絨毯の展示販売会が京都で開催されていたので、担当されている方ともお話したんだけれど、ギャッベも生活のために作られることから、けっこう似ている生産背景のようだった。

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茶室/茶藝室 池半

今回、ご購入いただいた赤穂ギャベはこちらでご使用いただいております。
(僕もたまにお茶に行きます♪)


#赤穂ギャベ #無地 #青白磁 #ものづくり #池半


僕のnoteは自分自身の備忘録としての側面が強いですが、もしも誰かの役にたって、そのアクションの一つとしてサポートがあるなら、ただただ感謝です。