「企業スパイ」【ショートショート】

真面目な営業マンが不審な電話を取り、顔面に汗をかいている。

ただことではなさそうだ。


『いいか、お前の会社のパソコンから、重要顧客リストをUSBにコピーしてこい。さもないとお前の嫁とそのお腹の中の子の命はない。騒ぐな拒否権はない。

計画を伝える。
まずは忘れ物とでもいい、23時50分正面口から侵入

6階の営業部のお前のデスクでカメラに姿を残せ、防犯カメラはこちらで細工するからその隙に、階段で7階の情報システム部に行け、そして、

管理室のセキュリティを切るから部長のPCからこの専用手袋を使い指紋認証を開けろ

その後リストをUSBにコピー、セキュリティの異常を見回りに警備員がくるまで多く見積もっても3分の猶予だ。

急いで階段を降りてお前のデスクに戻り適当な資料を持って、警備員に挨拶でもして、もどってこい。

わかったな。』



真面目な営業マンは、何者かに家族を人質にとられ、さながらスパイのようなことをやらされる

営業マンは流行りのドラマを見ていたので、さながら興奮していた。

そして営業マンにもあのドラマの主役のように才能があった。

完璧な営業スマイルで、警備員に怪しまれることなく潜入、緊張を一切見せないいつも通りの歩き方、スパイ道具も完璧に使いこなす。

そして管理室に到着、セキュリティを切りUSBを差し込む、データの転送まで2分30秒

流石の営業マンも焦りがとまらない。


1分経過 25%

汗が垂れる


2分経過 55%

しきりに腕時計を見る

2分10秒経過 75%


警備員の足音がきこえる

2分20秒経過 85%


次第に大きくなっていく、早くしてくれと目を見開く


2分30秒 98%

まだ、終わらない、そして警備員がドアに手をかける

もうダメだと思ったら瞬間、警備員のスマホに電話が、その隙に!!!


2分35秒 99.9%

セキュリティが復活した。


ミッションコンプリート!


指示していた組織の誰もがドラマのように危機を乗り越えたと思っていたのだが


警備員が真面目な営業マンを捕まえた。




真面目な営業マンは「USBを安全に取り外す」をしていた。

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