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「お正月」に感じる茶番感

百万遍の飲食店が閉まり始めた。図書館で作業しようと思ったら閉まっていた。首のしこりが気になるので耳鼻科に行こうと思ったら閉まっていた。貼り紙を見ると、どうやら年号が変わるらしい。どうやら…と言っても勿論お正月を迎えるのは24度目であるし、記憶してるだけでも2005年頃から19度目くらいだろうから、人間社会がこの寒い冬の時期に地球の公転運動を分節し、一月と名付けることくらいは知っている。今日はお節料理を詰めるアルバイトに行ってきた。ちょっと頑張れば一人でも1日で食べきれそうな量の三段重の御料理が3万円もするらしい。めでたいものである。

昔、高校生くらいまでは「お正月」の実感があった。私の実家は東北の僻地、父親の実家は大阪郊外のニュータウンであるから正月の帰省は一家の大移動だった。年によるが、東名ハイウェイのサービスエリアグルメに舌を鼓んだり、太平洋フェリーで大海原に酔いしれたり、僅か70分で仙台伊丹間を飛行する旅客機に感動したりと、移動手段を持たない子供の私にとっては片道1000㌔は大冒険だった。しかしながら京都の大学に進学し、正月の移動といえば赤い京阪8000系に乗って僅か数十分の味気ないものになってしまった。南信、遠州までは近場だと認識している私にとってはこんなの冒険でも何でもない、なんならバイト出勤よりも近い。

もう一つ幼い頃に「お正月」を実感できていた原因は就寝時間である。小学生の頃なら普段は9時や10時に寝ていたので、年越しの為に12時まで起きて、「あけましておめでとう」を言ってから床に就くのは特別感があった。これも歳を重ねて12時就寝がデフォ、なんなら早くすら感じられるようになったので特別感が消え去った。
他には、お年玉が貰えてたのもあるか

進学、進級、就職、転職と大きく環境や身分が変わるのは4月である。1月ではない。引越だって最繁忙期は3-4月である。だから画面の中でキラキラした後楽園球場のステージでジャニーズが5-4-3-2-1とカウントダウンをして、はたまた ゆく年くる年で何処かの寺の鐘が鳴って他局と比べて歳を重ねたアナウンサーが あけましておめでとうございます と唱えたところでカレンダーが変わるだけで実態は何も変わらないし、実感はない。
だから本来、節目を祝い目標を唱えるのは、環境や身分が変わる4/1こそが相応しいはずなのだが、なぜか90日ほど前に「お正月」と称したイベントをやる。いや、お正月が先で、4/1新年度が後なのかもしれないが、とりあえず新年を祝うタイミングと実際に環境が大きく変わる説明のタイミングはずれている。何故か?

「本当に節目の時はみんな忙しくて休んだり集まったりできないから、仕方なく別のタイミングを設けて新年を祝うことにした」からではないか?

つまりは「茶番」なのである。これに気づいてから、親戚や友人らと会えることは有り難いとしても、節目でもないのに味醂を飲んで目標を語ったり、所詮太陽暦なんか西洋の暦なのに寺社仏閣に有り難く参拝したり、観光適期でもないのにハイウェイに大挙して渋滞を引き起こしたり、干支などと呼んで特定の動物を崇拝したりするのが滑稽に感じてしまった。(おせちとかお雑煮は好きなので批判しないあたり自分勝手である)

私も来年には24歳になるので所謂「年男」だが、そもそも年号に動物を充てがうなんて、古代中国文化というのは何でも擬人化する現代日本と比べてもびっくりな文化である。私が兎年だからといって白く丸っこい体を呈したり、長い耳を持ったり、赤い目を拵えたりはしないのである🐰

石川県のうさぎ🐰かわいい

そもそも、1年の始まりがあの時期なのも、慣習的なものでかなりテキトーなものである。1/1は冬至でもなければ日出最遅日でも日没最早日でも最寒冷のタイミングでもない。確か元々は現在の3月が1月で、今の1-2月にあたる時期は一番寒い虚無虚無期なので元来暦を与えなかったと聞いた。つまり「正月」というのは虚無の始まりであって、決して祝うようなタイミングではないのだと思う。実際正月を祝った後に待っているのは、身も心も蝕むような寒波か大雪か、身も心も蝕むような現実:受験や卒論、就活等であるのだから。
まあでも「お正月」という一大イベントがクソ寒いタイミングでなければ、多くの国民はもっと病むのかもしれない。冬期間にクリスマスや正月、バレンタインといった季節の催しが持て囃されるのは、寒くてメンタルがやられそうな中でイベントにすがっているからなのかもしれない。

この文章は「お正月」のことを書くのだから「お正月」か「大晦日」に放出しようと思っていた。ただ厭世的なこのような文章をめでたいツイートが並んでいる中に投下する勇気がなかったので12/30の今日、投下する。結局世俗に流されるらしい。
それでは皆さん、良い「お年」をお迎えください。

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