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『25時のバカンス』(市川春子短編集)の感想

市川春子先生のマンガ作品は、「宝石の国」と、「初期短編集2冊(『虫と歌』『25時のバカンス』)」のみ
ということで、これにてコンプリート

短編も読んだうえで、やっぱり市川先生、天才すぎる…
今回の短編集に収録されてる「25時のバカンス」と「パンドラにて」は心に刺さりすぎて、都度読み返していきたい……

■今回感想を書くのは↓こちらの作品。控えめに言って神…


◆25時のバカンス

・乙女さんと甲太郎、ふたりの年齢差とか関係とか立ちふるまいとか話し方とかそれぞれのキャラ造形とかとてもいい

・そして……おおー……予想外の展開……
これ「宝石の国」の「アドミラビリス」と「宝石生命体」のハイブリッドでは……!?

・こういういろんなアイデアが各短編に散りばめられていて、それが仏教の骨組みのなかで再構築されて「宝石の国」が生み出されたのかな?と思ってしまう

・「宝石の国」でも感じたけど、この作品も白と黒の使い方がとてもすてき
日本画みたいな見せ方…コマ割りも映画みたい

・甲太郎の片目が白と黒が逆なの…こういう「黒目が白で白目が黒」みたいな仏像というか仏教画みたいのあったような

・もと貝だったものたちがかわいすぎて…最高すぎる
やっぱ「宝石の国」の「ウェントリコスス王」に通じる感じある

『孤独は生まれてから塵(ちり)に帰るまでの苦い贅沢品』
……すてきな表現すぎる……心に刻んでおきたい……すばらしい

『あの人が自分の珍しさに飽きたら、人としての自分を殺してくれ(波でさらって海底に連れてってくれ)』
『気持ちが遠のく日がひどくおそろしい、最高地点で時を止めて逃げてしまおう』

…………このあたりの描写、ほんと神

・え?……そういう展開なるんだ
……なんかもう感情おいつかなくて泣く
そこの理由も変えてくるの天才すぎる市川先生

・そして乙女さんの造形が、「フォスフォフィライト」そのものでは

◆パンドラにて

調べたらパンドラは土星の17衛星だそう
「宝石の国」でも思ったけど市川先生
こーゆー天文系の話、詳しくてとても好きそう
(Diggyにも読んでてほしい…)

舞台は違うけど「宝石の国」で「月人」が住んでる所の描写に似てる
キャラクターの感じは「宝石の国」の宝石生命体たちのようで
メインのふたり、「エマ」と「カンゴーム」の造形の原型ぽさある

・これも……よすぎる…好きすぎる

・こういう絶望の仕組み&読み合い入れてくるのほんと……すごい

・場面転換で状況悟って、そこまでする…?ってなって絶望して
再生メッセージの意味が最初良くわからなくて、読み込んで泣く……というか嗚咽

・生きてさえいればいいのかどうか……
希望をもたせる分、より深い絶望なのかもしれない

・市川先生…地獄に叩き落とす描写の天才……

・いやでもこの話ほんと好きすぎる……

・「宝石の国」は長編のじわじわくる絶望感あるけど
短編の絶望はより尖ってるなぁ……

・作品が終わった後のページに描かれてるこの挿絵みるだけで泣く

◆月の葬式

これもとても素敵な話
とはいえ「パンドラにて」を読んで心がズタズタになった状態で読んだので、まだしっかり咀嚼しきれてないかも…

これは宝石の国とは前提がだいぶ違うのだけど「月に住んでいる人」が地球に来た物語

市川先生は、男性同士でも女性同士でも男女でも無性別でも、とても素敵に関係性を紡いでくるからよき…そしてキャラ造形がいずれも秀逸

この月の住人が陥る現象の描き方もすごい…

おそらくハッピーエンドなのがこの短編集における救いでもある…



◆市川春子先生の他の作品に関する感想はこちら


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