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タクシードライバー

こんにちは、「月の見える丘邸」亭主の月松です。
TRPG(主にCoC)プレーヤーとして時々描写集なんかを書かせていただいてます。まあ私の話はいいや、映画の話をしましょう、映画の。

私、以前に映画館描写集というものをboothに出しているのですが

TRPGの他にも映画を観るのが昔から好きで、作業中もだいたい映画を観て過ごしています。
映画館描写集も、推し映画の「RRR」が第95回アカデミー賞で歌曲賞を受賞した喜びとテンションで書き上げたものになります。
これね。まだ観てないフォロワー居る? 観てください。頼むから。

CINECITTA
https://cinecitta.co.jp/movies/detail/0010927.html

そんな、観た映画についてざっくばらんに色々書いていけたらいいなあと思ってnoteに手を出してみました。
観てる映画のジャンルはかなり雑食なので、新旧問わず、洋邦問わず(でも洋画が多いかも)、ジャンル問わずのご紹介になるかと思います。

というわけで最近観たイチオシ映画はこちら。

ソニーピクチャーズ公式|タクシードライバー
https://www.sonypictures.jp/he/2302

知ってる方も多いんじゃないでしょうか。
「タクシードライバー」ですね。
マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演
1976年公開……1976年公開!!??
生まれる前の映画でびっくりしました……なのにこんなにお洒落なんだ……

この映画を観る少し前に今上映中のスコセッシ映画「キラーズ・オブ・フラワームーン」を劇場で観てたんですが、その時に映画が始まる前のスコセッシ監督とレオ様の挨拶映像が流れたんですが、その時に「スコセッシ監督ってこんなおじいちゃんなの!?」って吃驚したんですよね。

おじいちゃん映画
http://senior-movie.mdma.boo.jp/?eid=70

優しそうで小柄なおじいちゃん。ですが、撮る映画はキレッキレなものが多いですね。「ウルフ・オブ・ウォールストリート」とか「グッドフェローズ」とか。この人映画監督やる前はカトリックの司祭目指してたって本当???
良い意味でも悪い意味でも俗っぽい映画を撮らせたら右に出る者はいないと思うんですけど。

「タクシードライバー」もやはりキレッキレな作品です。
舞台は70年代半ばのニューヨーク。主役はベトナム戦争帰りの元海兵隊員トラヴィス。よく喋るけどマジで話の中身がないコミュ障な男の演技、デ・ニーロが上手すぎます。
このトラヴィス、ベトナム戦争のPTSDで不眠症を患い定職に就くことも出来ずにタクシー会社に入るところから映画が始まります。
コミュニケーション能力がないため仕事仲間たちとも上手く交流も出来ず、家族もろくに居ないのか余暇はポルノ映画をぼんやりと眺めながら、毎晩特にやることもなくマンハッタンの街を孤独にタクシーを走らせています。
寂しい男の物語です。

『タクシードライバー』© 1976, renewed 2004 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~
https://safarilounge.jp/online/culture/detail.php?id=9500&p=3

以下、映画の内容に触れるためネタバレ注意。

トラヴィスはある日、次期大統領候補のパランタイン上院議員の選挙事務所付近を通りかかり、そこに勤める美人のベッツィーに一目惚れする。

『タクシードライバー』© 1976, renewed 2004 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

カイエ・デ・モード
https://cahiersdemode.com/cybill_shepherd1_taxi-driver3/

トラヴィスがベッツィーを「夢のような美女」という通り、トラヴィスにとって理想の女なんでしょうね。彼女をデートに誘うことに成功はするんですが、そのデートが酷いのなんの。
舞い上がってあることないこと中身のない話を喋りまくるトラヴィスと、そのトラヴィスを品定めするように薄く微笑んでじっとその話を聞いているベッツィー。そのシーンの痛々しさが生々しくて見ていて震えあがります(好き)。
終いには初デートだというのにベッツィーをポルノ映画に誘って激怒され、帰られてしまう始末。でも仕方ないんですよね。トラヴィスにはそれしか引き出しがないから。決して彼女のことを下に見ているわけでもない。トラヴィスにとって精いっぱいのデートが、ベッツィーには合わなかった。それだけです。
ベッツィーとはその後連絡が取れず、思うように事が運ばないことに激怒したトラヴィスはベッツィーの務める事務所に押し掛けて「殺してやる!」と騒ぎ立てますが、当然トラヴィスのことなんて誰も相手にせず、冷たく追い出されて終いでした。

ベッツィーにフラれて悶々とするトラヴィスはさらに孤独感を募らせ、社会や自身の置かれた境遇に怒りを募らせていく。そんな中出会ったのが、上のパッケージにも出ている、ジョディ・フォスター演じる有名な「アイリス」です。

『タクシードライバー』© 1976, renewed 2004 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

カイエ・デ・モード
https://cahiersdemode.com/jodie_foster1_taxi-driver4/#toc1

ほぼ前情報なしにこの映画を観たので、実際に映画を観るまえで「ヴェニスに死す」の男女版みたいな映画だと思ってたんですよね。まさかアイリスが出てくるまでに1時間近くかかると思ってなかった。
実際彼女の出番は多くないです。多くないんです、が、さすがの存在感。ジョディ・フォスターが天才子役の名を恣にした所以たる映画だな……と思いました。

ほんの一瞬タクシーに乗り込んできたアイリスは、すぐにポン引きに連れられてタクシーを降りてしまいます。まだこの時のトラヴィスは彼女が売春婦だということを知りませんが、その日からトラヴィスの生活は一変。
タクシーの運転手仲間の伝手で銃を手に入れ、肉体改造と射撃の訓練を始め、正義のヒーロー気取りで街の食料品店に現れた強盗を撃ち殺してしまったりして、間違った正義感を己の中に募らせていきます。

そんな中、街で偶然アイリスと再会するトラヴィス。
ポン引きを通して彼女が売春婦であることを知り、金を払ってどうにかこうにかデートの予定を取り付ける。
デートという名のランチ中もアイリスに売春なんかやめてまともに学校に行けと、家に帰れと説教するトラヴィス。それに反して、一目惚れした13歳の少女に執着して生活が出来るだけの金を渡し、自分の言うことを聞かせようとする矛盾した姿がなんとも痛々しい。アイリスにとっては変な客の一人でしかないため「コイツ何言ってんの?」という冷めた目がまたなんとも言えない味を出してます。
またこのアイリス、ポン引きの「スポーツ」に惚れ込んで13歳ながらにしっかり色管理下に置かれています。若くて何も分からない彼女はトラヴィスに対して「あんたってクソまじめなやつね」と一蹴。このシーンのデ・ニーロとジョディ・フォスターのやり取りが、凄い。

『タクシードライバー』© 1976, renewed 2004 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

OOGIE のウギブギウギブギウギ♪
http://oogie131.blog.fc2.com/blog-entry-1297.html

これで間違った方向に一念発起してしまったトラヴィスは、この世界の浄化作戦を実行に移すことにします。
髪型を変え、オールドファッションのブルゾンを脱ぎ捨てて、当時の最新ミリタリーウェアであるM65を身に纏い、ドハデなイメチェン。

『タクシードライバー』© 1976, renewed 2004 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

すっげえ(中学生)
男の惚れるモヒカンだこれは。流石デ・ニーロ。
このフィールドジャケットの内側に例の拳銃を隠して次期大統領候補のパランタインの集会に現れますが、警備のシークレットサービスに睨まれてあえなく射殺は断念。その足でアイリスの元へ向かいます。

そしてその彼が行ったことは、彼女のヒモであるスポーツを射殺。見張り役の男や用心棒、さらにアイリスの目の前で売春家業の元締めを容赦なく射殺。泣き叫ぶアイリスにもお構いなしです。正しく狂気の沙汰というか……なんというか。
自身も反撃を受けて重傷を負い、その場で自殺を図りますが弾切れのため果たせず、昏倒します。

その後、マスコミはトラヴィスを「裏社会から少女を救った英雄」として報道。アイリスは実家に戻り、その家族からも、彼女はあれ以来真面目に学校に通っていると感謝の手紙が来ていました。
そしてある晩、同僚たちと話すトラヴィスのタクシーにベッツィーが乗り込んでくる。しかし、トラヴィスは話もそこそこにベッツィーをタクシーから降ろし、夜の街に消えていくのでした。

色んな感想を見ていても、アイリスにとってハッピーエンドだったと捉えている方が多くてちょっとモヤったりなどしました。もちろん長い目と結果論で見れば彼女は水商売から足を洗えてまともな道に進めたのかもしれませんが……少なくとも13歳の少女が目の前で人を殺されて、惚れていた男も死んでしまったわけですから……トラウマ間違いなしで。
途中、トラヴィスとの食事シーンで家族と仲がいいわけでもない、という発言も出ていたんですよね。アイリスが軽い気持ちで売春をしていたのか、それとも家を出たくて売春をしていたのかは知りませんが、トラヴィスのしたことが決して「良いこと」ではないよなあ~と思うなど。

ベトナム戦争直後のアメリカ、という舞台性はもちろんこの映画にとって大きなものなんですが、それよりもさらに強いメッセージ性を感じる映画だなあと思いました。現代にも通ずるもっと普遍的な、若者の抱える屈折した正義感というか、そういったものを感じます。
公開からそろそろ50年が経とうとしていますが、今観てもオシャレな映画だと感じるので、当時はもっとセンセーショナルだったんじゃないかな……
アカデミー賞の作品賞じゃなくてカンヌ国際映画祭のパルムドールを取ってるのも頷けます。同年のアカデミーは確か、アメリカンドリームを象徴するって理由で「ロッキー」だったかな? どちらも好きな映画です。

楽しい話をするなら、とにかく画がお洒落!ベッツィーやアイリスの衣装はもちろん、トラヴィスのファッションや黄色いタクシーと雑多な街並みなど、スクリーンに映るものが全て絵になる。スコセッシ監督の撮る画が好きだなあと再認識しました。

後味のいい映画というわけではありませんでしたが、観てよかったと思う名作のひとつです。映画好きな人にはぜひ観てほしいな。
初ブログなので気合い入れて書いてしまった。こんなものを毎回書けるとは思いませんが、これからも衝撃を受けた作品があれば、ぽつぽつと書いていけたらなと思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。またね。

月松

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