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葬儀が伝わらない?

昨年、近隣の同じ宗派の若手僧侶の方々とともに葬儀リーフレットを制作しました。

今回のものは柏崎市・刈羽村・旧小国町というエリアを想定したものですが、中越地方、新潟県内でも大方の部分は当てはまるかと思います。

お寺が葬儀のリーフレットを作るというのは、もしかしたら一般の方からすれば「え、今まで作ってなかったの?」と思われるものかもしれませんね。

そうなんです。今まで意外と当たり前のことじゃなかったんです。
私が見聞きしてきた中で、主に2つの理由を推測しています。

  1. 葬儀をはじめお参り事というのは、同じ宗派なら同じかといえば、微妙に地域や寺、一族ごとのルールがあって異なることもあり、一概には言えない

  2. なぜか葬儀の習慣は家族や一族の中で明文化されず、口伝のような形になっていて、血縁・地縁関係の中で伝わってきた(お寺が個々の家族の葬儀習慣に口を挟みづらい)

以前であれば葬儀を自宅で行い、準備は親戚の長老のような方が取り仕切って、周りも手伝う中で、脈々と伝わってきた部分があったそうです。
しかし、昨今は親戚付き合いが薄くなり、葬儀はホールで行い、準備も葬儀会社と喪主の相談で行われるようになってきました。
それはつまり、1人の人が生涯の中で葬儀の準備に関わる機会が少なくなったとも言えます。
そうする中で、なるべく手間や時間のかかることは省くという葬儀の簡略化が進むとともに、もともとあった葬儀の儀式や習慣に込められた意味合いはなかなか伝わりにくくなってきたように感じています。

今の核家族化や親戚付き合いの希薄化の中では、お参り事に限らず、家族間で伝承していくものは限界がきています。
そしてそこに追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスでした。
人としゃべらない、集まる人数を減らす、会食は行わない…など従来の習慣を変えざるをえない状況に追い込まれました。
このままでは従来の儀式も習慣も何も伝わらなくなっていくという危機感が周りのお坊さんにもあったことから、今回リーフレットを作ることになりました。

こうした形で1つ読み物ができたことによって、そこにコミュニケーションが生まれてほしいという願いを持っています。
例えば、家族の間でこのリーフレットを渡して、葬儀があったときにどうするのかという話題があがったり、リーフレットに書いてある内容にわからない部分があるから、住職に聞いてみようとなったり…。
あくまでここに書かれてあるのは、意味や基本的な流れ、注意点であって、具体的なマニュアルではありません。
前述のように、個別事情によって葬儀の形は変わるものなので、一律同じやり方が良いかと言えば、必ずしもそうではありません。
だから、関係する人とコミュニケーションを日頃から取っておいて、いざというときにどんな葬儀にすると良いか話せる、事前に情報を持っているという状態を作っておくのが大切だと考えています。

このリーフレットがそうしたきっかけの1つになることを願うばかりです。
(また葬儀の話は別の機会にも綴っていきたいと思います)