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『書く』は『読む』のはじまり

初めはただの衝動買い

2022年。計画的に始めたことではなかったけど、結果的に続いた私の習慣。
手帳を書くこと。
毎年9月頃に文具店では翌年の手帳の販売が始まる。
「文具店」という場所だけですでにワクワクする気持ちが高まっているが、翌年の手帳が発売される時期になるとその気持ちがさらに倍増する。
始まるまであと3ヶ月とちょっと。年が変われば今年の良くなかったことは一旦なかったことに・・・なるわけではないけれど、新しい年がくる前というのはなんだか気持ちが浮つく。あの期待に満ちた不思議な感覚は大人になっても変わらない。
むしろ大人になってからの方が増している気さえする。

2021年の10月を過ごす私は、例年通り発売される手帳の中から共に1年を過ごす手帳を物色し始めていた。
毎年書かさずに購入している手帳は、大抵が最初の4ヶ月ほどで本棚の飾りとなる。どうせ使わなくなるのだからと、ここ数年はできるだけ値段の安いもので済ませるようにしていたが、たまたま訪れたLOFTで運命の出会いを果たしてしまった。
それは手帳本体ではなく、手帳のカバー。
ほぼ日手帳のコーナーにあった、絵本作家のショーン・タンの代表作『エリック』の主人公エリックの可愛いイラストが描かれたクリアカバーだった。
手帳のサイズはweeksサイズ用。
ほぼ日weeksなら2018年、2019年に宇宙兄弟とコラボしたときに使用したことがあり、その使い勝手の良さも知っている。買う以外の選択はない。
クリアカバーのエリックが主役の手帳になるように、選んだ手帳本体は布地で無地の表紙、色はサニーブルー。爽やかな空色の手帳とお気に入りのカバーを手にレジに並んだ。
ただの衝動買いともいえるが、いつもより少しだけ贅沢で大のお気に入りになったこの手帳は、私にとって1年間欠かすことなく書き続けた初めての手帳となる。

楽しい時間

ほぼ日weeksは12月始まりの手帳だ。
使い始めるまでには少し期間があるが、早く使いたくてしょうがない。
とりあえず、家族の誕生日をマンスリーページに書き込んでみる。物足りない。
近所の文具店に行き、マスキングテープやインデックス、付箋や手帳専用ボールペンなど手帳を楽しみつくせるアイテムを追加で購入した。
やりたいこと、行きたい場所、読みたい本など思いつく限りのときめきを書き込み、マステでデコレーション。インデックスでより使いやすい工夫を凝らす。
自由に使えるノートページで、手帳使いたい欲を満たしていった。
「せっかく良い手帳を買ったのだから、きっちり使い切ろう」
そんな考えは少しも頭を過らなかった。
今思えば、これが1年間継続できた理由なのかもしれない。
とにかく楽しかった。
「書かなければ」ではなく「書きたい」が常に表に出ていた気がする。


私の手帳の使い方

待ちに待った12月。ついに書き始めのとき。
ワクワクする気持ちはこの数ヶ月途切れることなく続いていた。
ただ、私の職業は月初めがとても忙しい。
残業続きで家に帰る時間は22時近く。片付け、お風呂と動き回るうちにすぐに日付が変わってしまう。
仕方ないので書きたい出来事はスマホのメモアプリに箇条書きにしておく、もしくは後で思い出せるように写真や動画を残しておくことにした。
そうして日曜日、時間があるタイミングで一週間分の出来事をまとめて手帳に書いく。
最初はスケジュールの都合上、仕方なく始めたこの手帳時間の使い方。
でも結果的にこれも手帳を使い続けられた理由の一つになった。
比較的時間のある日曜日に書くことでストレスなく書ける。もちろん、すぐに書きたいような楽しいことがあればその日のうちに書くことはあったが、基本的には毎日書かなければいけないというルールに縛られることなく、週に一回。
翌週になって書き忘れていたことを思い出せば、遡って書き足すこともしばしば。

思わぬ効果

週に一回ルールには、その他にも良いことがあった。
それは、ネガティブなことを書かずに済んだこと。
誰かの言動が原因で嫌な気持ちになったこと、ついイラついてしまったこと。
自分ではどうにもならない、日々起こるストレスの原因をわざわざスマホのメモに書き残すほど暇ではない。
その日のうちに手帳を書くとなると、そのストレスを手帳にぶつけてしまうことは目に見えていたが、その作業をするのは週末の日曜日。
ゆったり落ち着いた気分で過ごす自宅で、わざわざ数日前の嫌な出来事を思い出すことはなく、手帳に書かれるのは自然と覚えておきたいと思った良い出来事中心になり、ネガティブに囚われない思考でいることが増えた。

書くものから読むものへ

行きたかった美術展のチケットの半券。
ランチやお菓子が美味しかったお店のカード。
仕事の合間に貰った美味しいお菓子のパッケージのイラスト。
友人からの贈り物の包装紙の切れ端。

書くだけではなく貼り付けて、一言コメントを添える。
撮っておいた写真を見ながらイラストを描く。
未来の私がこの手帳を読み返した時に、何があったか、どんな感情だったのか、ちゃんと思い出せるように記録することを意識した。
大事なのは他人の言動ではなく、私が何を感じ、どう思ったか。
そうして書き終えた2022年の私の手帳は、年末の12月31日で役目を終えた。
大晦日の夜、1年間の振り返りをしようと最初から手帳を読み返した。

手帳が『書くもの』から『読むもの』へ変わった瞬間だった。

大袈裟かもしれないが、ここに私の人生の1年分の記録があると思うと、
なんだか物凄いことを成し遂げたような気持ちになった。
きっとたくさんの人が同じ手帳を購入している。1年前はみんな同じまっさらな手帳を持っていた。それが今では私だけのオリジナルの読み物に変わった。

佐賀県の和多屋別荘に夫婦で宿泊したこと。
辛かったけど頑張ってやり遂げたこと。
意味不明で面白かった夫の寝言。

特別なイベントから、日常の経験、書き留めなかったら簡単に忘れてしまう小さな笑い話まで。書いて楽しんで、読み返してたくさんの幸せに気付く。
何気なく始めて、たまたま続いた私の手帳ライフは間違いなくこの先も続く。
2023年の手帳は、去年と同じほぼ日weeks。
表紙はフランスの画家アンリ・ルソーが描いた『夢』
大好きな小説家、原田マハさんとほぼ日がコラボした素敵なアート手帳には、2023年1月末までの私の日々が書いてある。

私だけの読みものを作るため、今年もまた日々を大切に過ごすのだ。



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