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小学生カテゴリにおける育成に必要な考え方(2)

前記事では、日々の練習の中でチームとして大切にしてきた考え方や実践について書いてきました。本記事では、大会に出場するにあたって実践したことについてできる限り具体的に書いていきたいと思います。

大会に出場するにあたって実践したこと

ローテーションする

前記事の「チームとして大切にしてきたこと」の中でも触れましたが、小学生のほとんどの大会で特別ルールであるフリーポジション制が採用されています。当チームでは、通常ルールのローテーション制を採用しました。ローテーション制は小学生には複雑で難しいと言う声もありますが、それはトップカテゴリに見られるように役割としてのポジションを固定化する(ex.アウトサイドヒッター・ミドルブロッカー)ことによってポジションのスイッチを行ったりしなければならないという固定概念があるように思います。
当チームでは、下記のように6ローテそれぞれの場所で課される役割を担うことになります。主な役割は以下の通りとなります。

S1:サーブ/ディグ(バックライト)/レセプション/バックアタック(バックライト)
S6:ディグ(バックセンター)/レセプション/バックアタック(バックセンター)
S5:ディグ(バックレフト)/レセプション/バックアタック(バックレフト)
S4:ブロック(フロントレフト)/レセプション/フロントアタック(フロントレフト)
S3:ブロック(フロントセンター)/セット
S2:ブロック(フロントライト)/レセプション/フロントアタック(フロンライト)

いわゆる、ローテーション制における6-6システムの採用となりますが、当システムの最大のメリットはすべてのプレーをすべてのポジション先で経験できるという点だと言えます。小学生カテゴリにおいて、バレーボールのすべてのプレーを経験することは、プレーヤーの可能性を最大限引き出す上で極めて重要であるとの考え方からこのシステムを採用しています。
※下記記事中で、小学生カテゴリにおいてローテーション制を採用することの重要性について私がインタビューで答えていますのでご興味のある方は是非お読みください。

当チームのコーチが他チームのコーチの方から「なぜローテーションするのですか?」という質問をされたとのことです。ただ、この質問の背景には「ローテーションしなければ、もっと強いチームをつくれるのに、なんでわざわざそんなことをしているの?」という意図を感じます。確かに小学生カテゴリで勝利することを最優先するのであればローテーション制で上記システムを採用することは非合理的な判断であると言わざるをえません。小学生カテゴリにおけるコーチには、他のカテゴリにおけるコーチ以上に確固たる育成哲学が求められるのかもしれません。勝利を放棄して育成を優先するのか、それともその逆なのか、それともそれ以外の第三の道を模索し試行錯誤し続けるのか。個人的には、第三の道を模索するコーチでありたいと思います。

全員がコート上でプレーする

小学生カテゴリは特に、身体の発達状況やプレー経験値などの差異が大きくなりやすいカテゴリであると言えます。それゆえに実際にプレーするプレーヤーが固定化されたり、実際にプレーする(ここではボールに触る回数が多いという意味合い)プレーヤーが限定的になったりすることがあります。
当チームでは、上記で解説した通りローテーション制で上記システムでプレーすることに加えて、試合登録メンバーのコート上にいる時間をできる限り平準化するようにしていました。
全員がコートでプレーする機会をできる限り確保するための独自ルールを採用した大会も実際に存在しています。以下、ご興味のある方は参照してください。

自分たちで判断しチャレンジする

普段の練習中でもそうですが、コーチから何か具体的な指示のようなものを出して、プレーヤーがその指示に従ってプレーするといったようなことはしません。試合でも同じように、プレーヤーたちが自分たちで判断をして、チャレンジ精神をもってプレーするということを大切にしていました。本記事では実際に試合で自然発生的に発現してきたチャレンジングなプレーについて3つ紹介したいと思います。

▶︎自然発生的ショートサーブ
練習の中で、スペースを狙うことを意識したワンバウンドゲームのようなミニゲームを実践することはありましたが、戦術的にショートサーブを打つ練習をするようなことはしていませんでした。しかし、あるプレーヤーが突然ショートサーブを打ち出すということがあったそうです。後で聞いてみると、前が大きく空いていたから狙ったということだったとのことです。

▶︎トランジション局面からのバックアタック
普段の練習でもバックアタックからアタック練習をスタートするという程にバックアタックの練習には時間をかけていますが、試合のトランジション局面からのバックアタックが多く見られたことでした。前衛のサイドアタッカーが潰れている際にバックにいるプレーヤーがコールしてアタックするケースが多く見られたとのことです。

▶︎ブロックの3枚形成
決勝戦で、身長が高くアタック力のあるプレーヤーに苦しめられる展開が続きました。そこでプレーヤーたちがここでも自然発生的に3枚ブロックを形成し出したとのことでした。手がネットからほとんど出ないプレーヤーも普段からブロック練習をしていますが、3枚ブロックの練習は特にしていなかったとのことです。

勝利と育成を両立するには

育成カテゴリにおいて、コーチに問われ続ける問い。それが勝利と育成の両立だと私は思っています。そして、この問いに対する一つの明確な答えというものは存在しないとも思っています。しかし、いずれも決して放棄してはならないとても大切なものであるとも思います。

勝利と育成は二元論的に捉えられ、トレードオフの関係にあるかのように思われがちですが、まずはそうした固定概念から脱却することが大きな一歩となるのかもしれません。

本記事が、育成カテゴリにおける勝利と育成の両立について考えるためのきっかけ、一助になれば幸いです。


バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。