sainoswww

みそしるだよ

sainoswww

みそしるだよ

マガジン

  • 白い悪魔〜異世界戦争〜

    ハーフリング、シモ・ヘイへ。異世界世界大戦の英雄は、その日何を思ったか。 ファンタジー世界での第一次世界大戦を書いた作品がないので書きました。

  • さいのすのいろいろ

    音楽とか短文とか色々

  • ミヤナシマ研究衛星市調査記録

  • ドスケベマン

    ドスケベマンを分けました

最近の記事

赤い、赤い、赤い

 宇宙服の中から見える景色は、いつもどこか赤い。  昔の人たちには木星は長らくガス惑星と誤解されていたらしいが、実際に木星で作業している俺にとっては赤い砂の荒野のこの景色の方が見慣れた景色だ。赤茶けた荒野の中に所々点在するガスが噴き出す割れ目にホースを差し込みガスを採取して地球に送るのが底辺労働者の俺の仕事だ。 『休憩の時間です』  ヘルメット内に電子音声が響く。労働基準法により惑星上の危険作業には120分に10分以上の休憩が義務付けられているのだ。  俺はホースを地面に

    • げじげじ

      「例えば、そこらにある植木鉢をひょいとひっくり返したとする。」 男はどこかぼうっとした口調で語り始めた。 「団子虫やムカデやそういう、鉢の下にいる虫たちは、みんな足が多い。足が多いのが大事なんだ。足が多いとどんな場所でも生きていけるんだよ」  椅子に縛り付けられた女は身じろぎをした。男が持つノコギリの意味をうっすらと理解したからだ。 「だから、俺も足を増やそうって決めたんだ」  女の悲鳴は猿轡のせいでくぐもったうめき声にしかならない。今時珍しい天然の生体脚をばたつかせると、勢

      • それでも鯨はクロールを求める

        ざぶり、と水に潜るとうっすら青く染まった世界が広がっていた。 手足をもがくように動かして、しばしあと、耐え切れず立ち上がる。 荒い息のわりに全然進んでいない。 100キロの巨体から水が滴る。 もう一度潜る。 手足をジタバタ動かし、そして…やはり立ち上がる。 クロールを目指しているが、一向に息継ぎができた試しはない。 一度盛大に溺れかけてからは息が続くまで泳ぐ、いやもがくようにしている。 ダイエットの問題は深刻だ。 食事制限。運動。どれも今までなあなあで済ませてきたことばかり

        • 探偵地雷少女は死にたいと願う

          かん、かん、かん、かん。 踏切が鳴いている。 久しぶりに着た喪服はどうしても体にしっくりこず、俺は1秒でも早く脱ぎたいと思っていた。 出来の悪い俺に何くれと気を遣ってくれて、ことあるごとに食料を山ほど仕送りしてくれた母親は、脳卒中で呆気なく死んだ。 親が死んだというのに実感は驚くほど薄く、夢の中のようにふわふわしている。 「そんなこと」より明日からの仕事を探さなければいけない。 社会不適合者の俺が見つけた私立探偵という仕事のうち、葬式のために断った分を取り返さなければいけない

        赤い、赤い、赤い

        マガジン

        • 白い悪魔〜異世界戦争〜
          0本
        • さいのすのいろいろ
          24本
        • ミヤナシマ研究衛星市調査記録
          1本
        • ドスケベマン
          23本

        記事

          ぬめる

          じっとりとした汗に塗れていた。 「本当にここでいいんですか?」 井上がどこか不安げに声を出す。 ”荷物”は重く、そのくせ持ちやすい取手になるような部分はない。 ブルーシートでぐるぐる巻かれた長さ2メートル弱の”荷物”の前を俺が、後ろを井上が持っている。 「仕方ないだろ、指定されたんだ」 「だって、普通はほら、海とか、山とか」 井上は俺の弟分だが、この手の”仕事”に関わるのは初めてだった。 俺も含め、普段はガキを連れてしょっぱい詐欺をしているやつがこんな体を使う”仕事”をするこ

          ぬめる

          ホストとキャバクラ行き比べたら新しいことがわかった

          先日、こちらの記事でホストクラブに行ってきたレビューを上げました。 この時とにかく楽しかったんですが本来の楽しみ方ではないということで、どうせならホストクラブとキャバクラ行き比べてしっかり比較しようとなりました。 まずはホストクラブへまずはホストクラブの初回に行こうとなりました。 今回訪問したのはSNSで一番暖かい対応いただいたKG -PRODUCEグループさんの中で一番大きい店舗であるHARLEM総本店です。 年齢層高めで落ち着いたお店とのことで選びました。 今回同行

          ホストとキャバクラ行き比べたら新しいことがわかった

          ホストクラブに行ったらドチャクソ楽しかった(2)

          前回のあらすじ 隣でモダンの紙しばいてるのを眺めながら、俺たちは若い男子に困った顔をさせていた。 接客を受けて ソリン氏はTLのどんな話投げても大体通ったので絶対的な安心感があったわけですが、ホストクラブにそんな胡乱な人ばっかり集まるわけがありません。 ヘルプのお兄さんはごく普通のホストさんだなあという感じでしたが、当たり前ですがみんなとにかく顔がいい。 顔が良く清潔感のある若いお兄さんがとにかくこちらの話を聞こうとしてくれるのは、話が苦手なオタクに特攻で刺さりそうだな

          ホストクラブに行ったらドチャクソ楽しかった(2)

          ホストクラブに行ったらドチャクソ楽しかった(1)

          久方ぶりに長文を書きます。 Twitterで胡乱TL特化型大喜利コミュニティをやってるのですが、そこのメンバーであり相互フォロワーでホストをやっているソリン・マルコフさんがこのほど昇格されたそうです。 そもそもソリン・マルコフ氏とは 僕がある日マジックザギャザリングのキャラクターの源氏名のホストがいると聞いて見に行ったところ、思った以上に胡乱TL系だったのでフォロー&大喜利コミュニティに招待、光の速さでリフォロー・コミュニティ参加してくれた人です。 ドブヶ丘バースがすん

          ホストクラブに行ったらドチャクソ楽しかった(1)

          ハウス・オブ・エレガンザ〜異世界ドラァグクイーン〜

          その日の”踊るドラゴンと猛る野うさぎ亭”の売り上げは過去最高を更新したらしい。 酒場の小さな舞台の上にあたしが立つと、楽師たちは打ち合わせの通りに演奏を始めた。 初めて聴く曲だけど大丈夫。カウントを取りながら弦楽器の音に身を委ねる。 カンテラの光があたしを照らす。 赤く光るのはあたしのお気に入りの、真っ赤なチュールのガウン。 艶かしく、大きく体をくねらせると、先ほどから出来上がっていた客がこちらに視線を向け始めた。 もっとよ、もっと。 爪先から太ももに向けて指を滑らせ、その

          ハウス・オブ・エレガンザ〜異世界ドラァグクイーン〜

          鬼燻

          午後3時。 事務用の机はオニフスベと同じ色だった。 気だるい午後の時間、事務机の島の中ほどで僕は大きく伸びをする。 デスクワークはいつまで経っても慣れない。 机やロッカー、抽斗は限りなく白に近い灰色で、パソコンのモニタとキーボードだけがそこにたらした墨汁のように黒い。 今頃山ではヒヨドリが烏瓜をつつき、山肌の崖沿いにシダが揺れているだろう。 苔の柔らかなソファに僕が座っていると、ノネズミが隣をわざと恭しく通り過ぎるのだ。 しばし目を瞑り、深い深い緑を瞼の裏に浮かべようとする。

          由香の長い死の道

          ここには水の音と縄の音だけだった。 壁を伝った雨水がチョロチョロと小さな音を立てながら床を這っている。 そしてミチルがかすかに身じろぐ度にギシリと天井とミチルを繋ぐ縄が音を立てて軋んだ。 もう何時間ここにいるのかわからない。 涙はとうに枯れ果て、ミチルはぼんやりと床を眺めていた。 床には夥しい量の血液が流れている。 ミチルは床に落ちた首を見やった。かつて兄弟だったもの。その首と胴体は切れ味の悪いナタで何度も斬りつけたようなズタズタの傷をもって切り離されていた。 ミチルは床に

          由香の長い死の道

          メンタルお薬を飲み始めて1年経った。リーマスは飲んでる間はわからないけど、飲み忘れるとてきめんにメンタルがわやになる。眠剤もなんとか定量で眠れてるのでありがたい。血液検査を近々やるはず。

          メンタルお薬を飲み始めて1年経った。リーマスは飲んでる間はわからないけど、飲み忘れるとてきめんにメンタルがわやになる。眠剤もなんとか定量で眠れてるのでありがたい。血液検査を近々やるはず。

          灰かぶり

          ああ、うん。あいつのことだろ。 話すよ。聞きたいこと全部。 知ってるよ、よく知ってる。 最初に見たのはいつだったかな、あのクソ貴族の家が何やら騒がしいと思ったら、庭先に見たことないガキが突っ立ってた。 あの意地の悪いババアに暖炉の灰をぶちまけられてさ、その中から必死に何か拾ってた。 痩せっぽちで、胸も尻もまっ平のガキだ。 あのクソ貴族のことは知ってるだろ? 親父は女にだらしないし、ババアは使用人をいびり殺すのが趣味みたいな女でさ。 娘どもは貧民窟の人間を人と思ってない。 手下

          灰かぶり

          逆噴射小説大賞2020振り返り

          逆噴射小説大賞今年もお疲れ様でした。 はちゃめちゃに面白い作品いっぱいで、自分の文章の癖や型、本当に面白いのか?と考えながら書いてたら4本になりました。 でも自分でも早く続きが読みたい話ばかり書けたのでとても良かったです。 以下自分語りですってよ。 1. 噺家、三遊亭音波の死これは友人と三遊亭音波という架空の落語家についてやりとりしていて思いついたネタです。 確か逆噴射小説大賞の1ヶ月くらい前? その時の友人との話は単なる落語家の名前大喜利だったんですが、友人が「異能バトル

          逆噴射小説大賞2020振り返り

          ファッションヘルス「リザレクション」へようこそ

          今日はなんだか面倒になって、待機所から個室に移って昼寝していると、インターホンが鳴り響いた。 ドアを開けて精一杯笑顔を作る。 「いらっしゃいませえ」 目の前の"客"は、俯いたままだ。 くしゃくしゃになったスラックスと、青に赤と白の線の入ったタータンチェックのシャツ。 所々泥で汚れた姿に、眉が少し引きつった。 「じゃあ今日は───」 シャワーの準備をしようとすると、向こうはこちらの手首をつかもうとしてきた。 その勢いは思ったより強くて、あたしは簡素な合皮製のマットレスにもつれる

          ファッションヘルス「リザレクション」へようこそ

          不老定命者ボラ

          「喧しいな」 力一杯ドアを蹴破ると、相対した長身痩躯の男はぬらりとこちらに振り向いた。 部屋の床は一面に黒い液体に塗れている。 「指定不死者183番、現認。これより執行する」 「不老かよ」 男は足元に転がった肉塊を蹴った。 「せっかく歳を取ったところなのに」 俺は不貞腐れたような男に構わず『手錠』を取り出した。 手錠と言っても警察官が持つそれとは大きく異なる。 蒼く光る金属製の腕輪を繋ぐ鎖に繋がるのは、大きな死神のような鎌。 鎖を持って回すと、腕輪がヒュンヒュンと風を切る。

          不老定命者ボラ