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セゾン投信 相談室のツブヤキ第5回【ふるさと納税】

いつもセゾン投信を応援してくださりありがとうございます。
あっという間に11月。ついにサッカーワールドカップが開幕しました。
今回の開催地はカタール、首都はドーハです。
ドーハと言えば、アメリカワールドカップ出場を逃した「ドーハの悲劇」が有名ですが、あれから今年で29年。悲劇を歓喜に変えられるよう日本から応援したいと思います。
 
さて、年末近くになると駆け込みで増えるのが「ふるさと納税」。
ふるさと納税は、自己負担額2,000円で返礼品がもらえて「おトク!」という印象を持っている方も多いと思いますが、自分では自己負担額2,000円の範囲内で寄附をしていたつもりでも、自己負担を超えてしまっている場合もあるかもしれません。
 
今回はふるさと納税の見落としがちな注意点を、その理由も踏まえてお伝えします。
既にふるさと納税を利用されていて、魅力を十分知っている方や今年こそはふるさと納税を利用してみようかな、と前向きに検討している方向けの内容となっていますので、

魅力や制度についてより詳しく知りたい方は、ふるさと納税の関係サイトをご覧いただくとわかりやすいと思います。

◆ふるさと納税は「寄附」の制度

ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄附をすることで、寄附金から2,000円を超える部分を所得税や住民税から還付・控除を受けることができる制度です。
そして、寄附をすると、寄附先の自治体からも返礼品を受け取ることができます。
 
(例)
寄附金10,000円-自己負担額2,000円=8,000円(所得税・住民税から還付・控除)+地域の特産品

2,000円の負担で地域の特産品がもらえるなんておトク!ということから、とても人気のある制度となっています。
 
念のためお伝えすると、ふるさと納税は「節税」にはなりません。
(例)のように、2,000円を超えた寄附金額を本来納める税金から差し引く(戻ってくる)制度となります。

◆自己負担額2,000円でいくらまで寄附できる?

ふるさと納税を利用したことがある人は、ふるさと納税の関連サイトのシミュレーションツール等を利用して、「自己負担額2,000円で、最大いくらまで寄附できるか」計算したことがあるのではないでしょうか。
※以降、「寄附金の控除上限額」と言います。
 
正確な上限額は税理士等の専門家に尋ねる必要がありますが、手軽にシミュレーションできるのは、とてもラクチンですよね。
ですが、このシミュレーションには注意したいポイントがあります。

◆早見表と詳細シミュレーションでは結果が大きく異なる可能性がある

多くの場合、以下の情報を元に計算されていて、早見表の方が詳細シミュレーションより寄附金の控除上限額が高い結果になる傾向があります。
 
早見表、速算表、簡易シミュレーション等:年収と家族構成を元に計算
詳細シミュレーション等:源泉徴収票や確定申告書を元に計算
 
なぜ、寄附金控除上限額の結果が異なるのでしょうか?
理由は、「所得控除」です。

ふるさと納税の寄附金の控除上限額は、「年収」から「所得控除」を引いた後の「所得」を元に計算されます。「所得」が高いほど、寄附金の控除上限額も高くなります。
所得控除には、配偶者控除など「人に関係するもの」と、生命保険料控除など「物に関係するもの」があります。
 
例えば、同じ「年収」と家族構成の人がいても、保険に入っているかどうかで「所得」が変わります。この場合、保険に入っている人の方が「所得」は低くなります。

多くの早見表では「物に関係する所得控除」が含まれていないため、詳細シミュレーションよりも「所得」が高くなり、寄附金の控除上限も高く計算されるのです。

◆「前年」から家族構成が変わった人、iDeCo等に加入した人は注意

詳細のシミュレーションを利用する際も気をつけたいポイントがあります。
 
それは、源泉徴収票や確定申告書を元に計算をしても、あくまで「前年」のものであるということ。
今年の年収や家族構成などに変化があると、寄附金の控除上限も変わってくるので、より注意が必要です。
 
例えば、
・退職、転職、育休取得等で収入が減った方
・扶養家族が増えた方
・新しくiDeCo(個人型確定拠出年金)や保険に加入した方 …などです。
 
2022年10月の制度改正でiDeCoに加入できる会社員の方が増えました。iDeCoの掛金は全額所得控除の対象です。

つまりiDeCoの掛金分、所得が下がります。
(iDeCo改正について詳しくは、こちらをご覧ください)

◆寄附金の控除上限額はいくら変わる?

実際のケースを見てみましょう。
 
【前提条件】
夫(会社員):前年の年収500万円、今年からiDeCoに加入(年間27万円拠出)
妻(会社員):前年の年収300万円
子ども(今年12/31時点で16歳)
※子どもは夫の扶養入ります。
※社会保険料控除は750,000円で計算。(500万円×15%)
※夫と妻の今年の年収は前年と変わらないものとします。
 
この場合、夫の寄附金の控除上限額はいくらになるのでしょうか?
前年 :約6.1万円(子ども15歳、iDeCoなし)
今年 :約4.9万円(子ども16歳、iDeCoなし)
   :約4.2万円(子ども16歳、iDeCoあり)

寄附金の控除上限額が下がった理由
①お子さんが16歳になったことで、扶養控除の対象になったため
②iDeCoの掛金が小規模共済等掛金控除の対象のため
 
①は人に関係する所得控除、②は物に関係する所得控除ですね。
 
このように、年収が同じでも家族構成の変化やiDeCoの加入等により所得が減少する場合は、寄附金の控除上限額も下がることになります。
 
(補足)
「所得」は所得税・住民税の計算の元になるものです。
その観点からすると、所得が低いほど払う税金は少なくなります。
一方で、上記で説明したように所得が下がると寄附金の控除上限金額も下がります。
所得が高ければその逆です。

◆税金の還付・控除には手続きが必要

寄附をして地域の特産品をお礼として受け取った後は、必要書類を提出しましょう。
これを忘れると、所得税・住民税の還付・控除がされません。
 
手続き方法は2つあり、確定申告とワンストップ特例のどちらかの手続きが必要となります。
どちらの手続きでも、最終的に還付・控除される所得税・住民税の金額は同じですので、ソントクはありませんが、見落としがちなポイントがあります。
 
それは、【確定申告をするとワンストップ特例は無効になる】ということです。
 
念のためお伝えすると、確定申告と年末調整は別の手続きです。
年末調整の手続きのみで確定申告をしない会社員は、ワンストップ特例の利用が可能となります。

◆確定申告をするとワンストップ特例は無効に

ワンストップ特例を利用するには条件があります。
 
・寄附する自治体が5か所以内
・確定申告不要な給与所得者等
・翌年1/10までに申請書を寄附先へ提出
 
例えば、ワンストップ特例の申請書を寄附先に提出済の人が、
・気が付いたら6か所に寄附をしていた
・年末ギリギリに寄附したため、1/10までに申請書を送れない寄附先がある
・突然高額な医療費が発生して、医療費控除のため確定申告することになった
・株式や投資信託を特定口座(源泉徴収なし)/一般口座で売却したので確定申告をする
・株式や投資信託を売却して、損益通算のため確定申告する予定がある…など
 
上記のようにワンストップ特例の利用条件外となってしまい確定申告をする場合は、その年にワンストップ特例で申請した分は自動で取り消されます。
所得税・住民税の還付・控除を受ける場合は、ワンストップ特例で申請した分も含めて確定申告する必要があります。
 
確定申告時には寄附先から送られる「受領証明書」を添付する必要がありましたが、
今年からふるさと納税のポータルサイトで発行できる「寄附金控除に関する証明書」の添付でも可能となりました。

確定申告時どちらかの提出でOK!
受領証明書 ⇒寄附した自治体         
寄附金控除に関する証明書⇒ふるさと納税のポータルサイト 
 
詳しくは、ふるさと納税のポータルサイトを確認してみてくださいね!

◆ふるさと納税は寄附の制度

繰り返しになりますが、ふるさと納税は節税の制度ではなく寄附の制度です。
この記事では、自己負担額2,000円の範囲で寄附する場合の注意点についていくつかお伝えしましたが、本来の制度の目的は「地方の応援」です。
 
ついつい、自己負担額が2,000円でより多くの地域の特産品をもらいたい!と思ってしまいがちですが(私もそうです)、寄附した自治体を応援する気持ちも忘れずにいたいですね。
 
最後になりますが、税金はお客さまお一人おひとりの個別事情が強く影響されるものです。
ご自分の寄附金の控除上限額や具体的な計算方法を知りたい場合は、お住まいの行政機関や税理士にご確認をお願いします。
 
※総務省より対象外とされた自治体への寄付は、ふるさと納税での控除/還付を受けることができません。
※控除上限額は、ふるさと納税をする方の所得や家族構成などに応じた各種控除の金額などによって異なります。
詳しくは、総務省ホームページ等でご確認ください。

セゾン顧客本位の相談室
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増田 裕美
 
 
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