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『ドラゴンボール』のキャラクター、ブルマの名前の由来は"ブルーマウンテン"である、という説についての まとめ

はじめに

漫画家・鳥山明 先生の逝去に際し、世界中で これを悼む声が上がっています。

私のX(旧Twitter)の おすすめタイムラインも そんな声で溢れていたのですが、ある日こんなポストを見かけました。

現在は削除済み

初めて聞く話で驚きました。
本当であれば大変 興味深いと思い、X上で検索してみたところ、『DRAGON BALL 冒険 SPECIAL』(1987年)において、鳥山先生 自ら それに言及されている、というポストを見かけました。

「えっ!俺それ持ってるやん!」と思い、早速 確認してみると…。

「なるほど⁉︎ザ・ドラゴンボール」というコーナー(p.138)より

また、『ドラゴンボール完全版公式ガイド Dragonball FOREVER』(2004年)には、こんな記載があるそうです。

「キャラ名の由来を知りたい!」というコーナーより

余談ですが、ブルマの名前は初めから"ブルマ"だったわけではありません。

『BIRD LAND PRESS』や『鳥山明ワールド DRAGON BALL 大全集②』(1995年)、『30th Anniversary DRAGON BALL 超史集』(2016年)等に記載されていますが、ブルマに相当するキャラクターの当初の名前は"ピンチ"です。

『BIRD LAND PRESS』1984年11月号 p.6・7より

というわけで、この話は終了!全員 解散!

…とまあ、ここで終わってしまっても良かったのですが、「ブルマ ブルーマウンテン」の検索結果を眺めていると、元ポストの人物 以外にも同様のことを言っている人が まあ出るわ出るわ…。

公式・非公式は定かではないが、これは さすがに この情報の発信源があるに違いない。
そう思った私は、できるだけ その真相に近付くべく、究明に向けて動き出しました。

この記事は、現時点において私 個人の力で調査した結果を まとめたものです。
誤りが含まれている可能性もありますので、もし ご指摘や情報提供などがあれば、コメントにて どしどし お寄せください。

現時点で発信源と考えられる情報

『ファンロード』1993年4月号に このような記載があることを、所有されている方に ご確認いただきました。

「シュミの特集ドラゴンボール大事典」というコーナーより

名付けた"そうです"と伝聞スタイルにはなっているものの、カッコ書きで補足されている内容(ここでは お茶ではなく「飲み物」となっていますが)も含めて、この時点で既に説のフォーマットが完成していたことが分かります。

この投稿者が公式Q&Aを断片的に記憶しており、時間の経過と共に錯誤したのか、はたまた周囲で そういう噂が広まっていたのか…。
(この投稿者が鳥山 先生から直接 聞いたというウルトラCの可能性も無くはない)

なお、他の号にブルマの名前の由来に関する記載がないか、所有されている方に ご確認いただいたところ、少なくとも1986年1月号〜1990年12月号には無いとのことです。

説の拡散に一役買ったと考えられる情報

1990年代に巻き起こった、いわゆる"謎本ブーム"。
当時、それに乗じて『ドラゴンボール』の謎本も何冊か作られました。

その中の1つである「孫家の真実 The Truth of DRAGON BALL」(1993年7月ごろ発売?)に、このような記載があるそうです。

『ファンロード』の内容と ほぼ同じ。
これも"説もある"と、断定はしていません。

タイミング的に、『ファンロード』の投稿を流用した可能性が高いのではないかと睨んでいます。

この本も相当 売れたのではないかと推測されるので、ローディスト(『ファンロード』の読者)以外の人に「ブルマ=ブルーマウンテン」説を広める大きなキッカケになったのではないでしょうか。

インターネット上の情報

Googleで検索してみたところ、インターネット上では、おそらく2004年の以下の書き込みが最古の情報ではないかと思われます。

「教えて!goo」より

ちなみにX(旧Twitter)においては、2010年の以下のツイートを皮切りに、毎年 誰かしらが この説について つぶやいています。

なお、ツイート内のURLは2001年1月3日に開設したと思しき個人サイトのもので、そこには以下のような記載があります。

これまでの情報は、"だそうです"や"説もある"のように断定を避けた書き方でしたが、これはハッキリと言い切っています。

こちらがインターネット上 最古の情報である可能性もありますが、この文章が記された時期が判然としない為、なんともいえません。

(2024年3月14日19時30分 追記)
ウェイバックマシンで確認してくださった方によると、この文章が記された時期は2005年11月30日〜2007年2月5日の間であることが判明しました。

「上記 以外の どこかで見た気がするんだよな〜」と思っている人に向けて

・『週刊少年ジャンプ』巻末にある作者コメントで見たような…
→その内容は『30th Anniversary DRAGON BALL 超史集』に網羅されていますが、載っていません

・ジャンプコミックス『ドラゴンボール』の巻末にある「とりやまさんのドラゴンボールなんでもかんでもコーナー」で見たような…
→そのコーナーは12巻まで存在しますが、載っていません
(私が所有しているのは第1刷ではありませんので、念のため初版を持っていらっしゃる方にも ご確認いただきましたが、同様のようです)

・ジャンプコミックス『Dr.スランプ』で見たような…
→『ドラゴンボール』の連載が始まった1984年11月以降に発売された『Dr.スランプ』16〜18巻には載っていないことを、所有されている方にご確認いただきました

・『鳥山明◯作劇場』で見たような…
→載っていません

・『鳥山明ワールド DRAGON BALL 大全集』で見たような…
→所有している友人に確認してもらったところ、載っていないようです

(2024年3月18日21時40分 追記)
・同人誌『みんな愛のせいね 3』(1991年?)の「鳥山明 大先生 The インタビュー‼︎」には載っていませんでした

(2024年3月20日6時55分 追記)
・国立国会図書館にて閲覧された方によりますと、『アニメージュ』1990年6月号の「ワク²鳥山ランド 鳥山アニメ大集合‼︎」には載っていないそうです

あと分かっていないこと

「最初の由来はブルーマウンテンだったものの、ブルマーの方と勘違いする読者が後を絶たなかった為、鳥山 先生が面倒だから途中で そっち由来ということにした」というような尾鰭を付ける人もおり、これについても発信源を特定したいところなのですが、文章のニュアンスが多岐に渡る為、困難を極めています。

むすび

現時点では、「ブルマの名前の由来は"ブルーマウンテン"である」という説は、俗に言う「マンデラ効果」の一例である可能性が高いと考えられます。

今回、奇しくも その現象を間近で感じられたのは貴重な経験でしたが、この一件が自らを含めた多くの人にとって、情報リテラシーについて見直す契機の1つとなれば幸いです。

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