【戯曲】『他の人よりちょっとだけ僕は最高でいたい@2023』

『他の人よりちょっとだけ僕は最高でいたい@2023』

作 サイトウナツキ

登場人物(男4名)

A 

B 

C

D

ラジオパーソナリティ 増井祥子

* 文字のみ


他の人より、ちょっとだけ、
ほんのちょっとだけ特別だよ。
僕は、僕たちの未来は、明るいのか、幸せなのか、最高なのか。
そんなことわかんない。
だからこそ?わかんないけど、今はただ、
今できることで幸せになっていくことしか
できないんです。
他に何にも出来ないんで、僕たち。
でも、社会はそうではありません。
どんどんと”できる人”は、
流れに乗って泳いでいく。
そうしてみんな、口をそろえて、
『こんなの簡単だよ 』『最初だけだからね 』
それから時代を経て、時間が経って、時が過ぎて、
あれ、いつから自分は流れに逆らってたんだっけ。
なんか大事なものを
失っているような、そうでもないような。
まーいっか!
結局なるようにしかならないんだから。
明日もゲームして、パチンコ打って、タバコ吸って、
 風俗行って、お酒飲んで、銭湯いこっと。
サイコー!だね!
過去が今の積み重ねなんだとしたら、
明日も最高ー!になるように、
今を最高ー!になるように、
楽しいことばっかりの毎日にしようね。
そういう人生を過ごしていきたいね。
明日はいい天気になるかな

シーン1 オープニング

役者最面へ横並び1列。

ゆっくりと深いお辞儀をする。


A 「未来〜最〜高!」

 応援団のように1人が顔を上げる。

 次々と同じく応援団のように顔を上げながらセリフ。

A 「ミュ〜ジック!」


照明変化。
クラブミュージックに合わせて踊る。


明日なんてどうでもよくなるようで、でも一抹の不安は感じてて、

明日なんてなくなって、今がずっと続いていくように

今日はずっと踊っていよう

そう思うようなダンスをしている。


曲が終わると同時に暗転。

役者各々ソファに座る。

1人を囲みながら、もたれ込むように。

シーン2 ゲーム

C 「下投げ→最速小ジャンプ空中下A→空中A→はい着地からの→小ジャンプ空中下A→空中下A→上Bはい雑魚乙」

B「ルイージ強すぎだろ」

D「いや、避けれないのが悪い」

B「避け“ら”れないだろ」

C「避けれんの」

B「避け“ら”れないよ」

C「無理じゃんこんなん」

D「どんだけ先にはめ込むかの作業だからな」

C「社会ってそんなもんか」

D「早い者勝ちよ」


A「ァ゛ー!」


B「ポテチ取って」

D「自分で取れよ」

B「近いじゃん」

D「お前だって近いじゃん」

C「はい、2乙」


A「クソがよ」

B「もういいじゃん、手伸ばせば届くし」

D「ちょっとぐらい歩けよ」

C「はい、雑魚」

A「煽りとかすんな、しょうもない」


ピンポーン


B「なんか来たよ」

D「後でで良いでしょ」

B「なんか頼んだ?」

D「いや」

A「はい、カス使えねぇならいきんな雑魚」


ピンポーン


B「また鳴った」

C「あれじゃね」

D「あれか」

B「居留守だな」

C「だな」

D「つかこの部屋暑くね」


ピンポーン


B「確かに」


ピンポーン


C「ずっと思ってた」


ピンポーン


D「リモコンどこ」


ピンポーン


B「あ」


ピンポーン


D「とって」


ピンポーン


C「とって」


ピンポーン


B「とって」


ピンポーン


BCD「とって」


ゲームセット!


A「ァ゛ー!もううるさいなあ、お前らがうるさいから負けたじゃん。あーあ、ほら順位下がった。最悪。つか暑いのお前らが近いからじゃん。離れろ、動け、邪魔、欲しいものは自分で取れ」

D「それ、お前が言う?」

A「もうムカつくなァ、ここ誰の家だと思ってんだよ」

BCD「俺ん家だけど」


ピンポーン


A「ァ゛ー!もう」

扉開閉音


*「うるせぇよ!」


A「あ、あ、あ」


扉開閉音


B「だから居留守でいいっていったのに」

C「はーあ、あほくさ」

D「ま、俺らが悪いからな」

A「もう゛!(台パン)」


壁を叩く音


携帯着信音


A「あ、もしもし。(おつかれー。今度の新歓行くー?)あー、ど、まだ決めてないかm(次の新歓は行こうかなーって思ったんだけど、みんな行かないっていうからさー)そうなんだ。(もしあれだったら一緒にいこうよ)え゛!?あ、うん、えっと(まじー。いこー!またlineするねー)ああ、うん。」


B「これって」

C「デート」

D「てこと!?」


B「よっしゃー!」

C「うい!うい!ういういうい!」

D「いや、まて、まてまて。」


B「なに」

D「金、なくね」

C「そんなんどうにでもなるだろ、サイゼだよサイゼ」

D「いや、いやいやいや、もしかしたら」

B「そんなことよりー!」


B「未来ー!最高!最高最高最高。おっぱい最高―!」

照明変化。全体的に暗くなる。


ダンスミュージックが流れる。

シーン3 バイトで愛をなくすの。

暗いまま、台詞に合わせて役者スポット。


*「じゃあ面接はじめていきましょうか」

ABCD「はい。よろしくお願いします。」

*「えーっとまずは、どうしてうちに応募してくれたんですか?」

A「あーえーっと」

B「家からとても近いからです!」

C「楽そうだからです」

D「今、大学1年生で、この辺に独り暮らししてるんですけど、ちょっと色々家のことで、学費を稼がないといけなくなってしまって。この辺りに住んでるので、出勤もしやすいなと思って。」

A「え」

B「え」

C「え」


*「ああ、そうなんですね。わかりました。これまでにアルバイトの経験ってありますか?」

A「ああ、いや」

B「ないです!」

C「ないっすね」

D「はい、あります。高校時代にファミレスの接客を1年やっていました。」

C「え」

B「え」

A「え」


*「なるほど、わかりました。うちは基本的にシフト制なんですけど、週何日入れますか?」

A「あが、え」

B「あんまりがっつり働きたくないです!」

C「できれば週1とか、月一とかがいいっす」

D「大学の講義もあるので、週4~5を希望しています」

C「え」

B「え」

A「え」


*「あ、いいですね。そしたら、採用の方向で行きたいんですけど、いつから出勤できます?」

C「え」

B「え」

A「え」

D「本日から!」


ABC「えー!」

D「未来ー!最高ー!」


暗転

シーン4 アルバイト

ラジオ「ガオガオ!合宿免許ガオ!応援ガールの増井祥子です。合宿免許ガオなら、最短二週間で卒業。合宿免許ならガオで決まり!」



A「ありがとうございましたー」


B「眠て~」

D「まあでもあと3時間だから」

B「いや3時間長いだろ」

D「すぐだって、おい、寝るな」

C「あ?寝てねぇ」

D「寝てんじゃねえか」

C「もう寝てないって、ウザイなぁ」


入店音


ABD「いらっしゃいませ?!」(女がやってくる)


ABCD「いらっしゃいませ……」(女が連れる男がやってくる)

B「230円が一点。キュ、980円が一点。208円が一点。」

C「レジ袋付けますか。はい」

D「お箸は。はい」

B「お会計、1308円になります。ポイントカードは。はい」

A「あの、明日、どこ待ち合わせにしますか」


BCD、Aの口を抑える。


BCD「ありがとうございました。」


ABCD「はァ」


ABCD「お疲れ様でした。」

A「はい、えいいんですか?ありがとうございます。あ、裏に、わかりました。お疲れ様です。」


ABCD、おにぎりをもって出てくる。

C、タバコを持って舞台奥、背を向けてタバコを吸う。


ACD、おにぎりを持って舞台最面で座り食べる。


C「今、何時」

B「わかんない」

D「10時」

B「明日、何限だっけ」

D「2限からドイツ語」

C「課題あったっけ」

ABD「あ」

D「おわった」

C「だる」

B「今からでも間に合うでしょ?」

A、携帯を取り出し、確認。首を振る。


ABCD、大きなため息


B「もういいよ、後期でとろ。今日、銭湯いかない」

C「いやこういう時は風俗でしょ」

D「どっちも行きたくない」


BCD「お前は」


A「俺に勝ったやつに従う」

ABCD「最初はグーの」

暗転

ABCD「じゃんけんぽい!」


風呂桶の音

シーン5 銭湯で連想失敗

ざっぱーん。お風呂につかる音。


ABCD「ふー。サウナ、サウナ、サウナ」

ABCD、裏に回り、パンツで出てくる。


ABCD、外気浴をしているように座り込む


ABCD「ア゛ー!」


C「゛うー!」

B「しー!」


C「いいじゃん、誰もいないし」


BD「゛うーー!゛あ」


ABCD 「イッツ宇宙」


B 「さっき掃除に来たおばちゃんみた?」

D 「サウナ?」

B 「そう」

C 「見てない」

B 「さっきビチビチの服着たおばちゃん、乳首のとこに花の形の湿布みたいなの貼ってた」

C 「花咲ばあさんじゃん」

B 「あれどういう話だっけ」

C 「なんかあれでしょ、乳首から花咲いたばあさんが1もぎ1000円で大儲けした話でしょ」

C、Dの乳首もぎ取る。花出てくる。

D「いった」

C「え」


B「そんなんだっけ」

C「そんなもんだよ。イッツビジネス」

D「どういうこと?」

B「第一回あれ何?選手権ー」

C「急」

D「それ何」

B「東中野から中野の間に見える「燃えよ中大」」

B「あれ何ー」

D「電車の広告ほぼほぼ胡散臭い自己啓発本なのあれ何ー」

BD「あれ何ー」

C「座席空いてるのに目の前に立ってくるじいさん」

BCD「あれ何ー」


BCD、あれ何選手権以外を実施しても良い。BCDで認識や感覚の一致を見せたい。


BCD、Aの方を見る。

C、Aを足でつつく。


A「一緒に行こうって言ったのに夜中に男と夜中コンビニ来るの」

A「あれ何?」


B「いや電車で続いてたじゃん」

D「身体冷えちゃった」

C「あつ湯いってあがろ」

BD「行こいこ」

A「え、ちょ」



ABCD、裏に回り、コーヒー牛乳、ミックスジュース、牛乳、コーラを腰に手を当てながら飲む。


ABCD「ア゛ぁ」



C「はァ゛ー、思い出してきたー。もう、誰だよあいつは。もういいやん、あいつと行けばいいやん、なんでわざわざ電話までしてきたん。女きも」


B「時代錯誤ー」


D「いやでも言ってることわかる」

C「新歓行くのやめよ」

B「行くでしょ」

C「いや、いかないでしょ」

D「俺も行かないかなー」

B「えー、ほんとに?」

C「いやもうどうせおもんない」

D「まあ今のこの気持ち的には行きたくない、てか行かない方が絶対いい」


A「まあ」


A「こういう運命なんだな」


BCD「はあ」

おもむろにC、じゃんけんを提案する。


じゃんけんをする。


Aが負ける。A、全員の服を持ってくる。


B「これあと3年続くのかな」

C「どうすりゃいいのか知りたいわ」

D「なんか続けてたらなんか変わるでしょ」

C「なんかって何」

B「便利ーなんかってなんか」

A「はあ」


A、ジャンケンを提案する。

A、負ける。A、全員分の空き瓶を捨てに行く。


BCD、違うはけ口から出ていく。

A、遅れて続く。


ソファにもたれこみ、各々眠りにつく。

暗転

シーン6 シュミレーションtoシチュエーション

目覚ましの音ピピピ

爽快な音楽に合わせてABCDが動く。



ABCD目を覚ます。

B、目覚めが悪い。

ACD、Bを起こす。

シャワー、歯磨き、ヘアセット、着替え一連の動作を音楽に合わせて体を動かす。


C「う、うい」

D「ごめん、待った?」

B「ありがとね、今日」

C「いやー、正直新歓とかちょうだりィわ(笑)」

D「あ、喉乾いてない?これ、良かったら」

B「今日の服、なんかめっちゃいいね」

C「え、服超ダサくね。」

D「あれ、この前からメイク変えた?」

C「つかさ、」

B「なんか、あれだったら全然いいんだけど」

D「俺はもう少し一緒にいたいんだけど」


BCD「今日の夜、空いてる?」

F暗転

A「いっしゃー!」

A、ガッツポーズをする。



ラジオ「ワイルド大学のここがすごい!東京、千葉、インドネシアに4つのキャンパス。全国有数の国家資格合格者数。歩く学びを。ワイルド魂。ワイルド大学。」




C「152番」

A「え」


C「タバコ、152番」

明転


A「あ、はい、すみません」

B「なーんでこうなっちゃうの」

D「少子化問題、小心者には」

B「無問題」

C「んなわけないだろ」

D「いや、ラップハマっててさ」

A「はあ」

B「いけばよかったのに」

A「いや」

D「シュミレーション完璧だったのに」

C「シチュエーションきもいのに?」

B「は!」

C「何」

B「いや、韻踏んだかと思って、シチュエーションとシュミレーション」

C「きも」

D「それはないわ」

B「えー」


A「ありがとうございました」

BCD、Aに一瞥をし、黙り込んでしまう。

BCD、ハケ

シーン7 窃盗したあと銭湯

A「あ、お疲れ様です。レジ金誤差無しです。あ、品出し基本終わってます。ただ飲料系はまだ終わってないです、お酒類です。あ、わかりました。それだけやって今日は退勤します。よろしくお願いします。お疲れ様でした」


A、飲料類の品出しを始める。

A、色んなことを考えてしまって仕事が手につかない。

A、大きなため息。

A、ビールを落とす。ビールを見つめ、息をのむ。

A「あ、すみません、もう、終わります」


A、周りを見て、誰もいないことを確認し、缶ビールを一本盗む。

A「品出し、終わりました。お先失礼します。お疲れ様でした」

A、小走りで抜け出し、後ろを振り返る。缶ビールを一気に飲み干す。

A、初めて飲む缶ビール。苦さと大量の炭酸を感じる。

A「あ゛ー!。まっず!よし!よし!よーし!」


A「こんなもんか俺の人生かっこわら。こんなもんです俺の人生かっこわら」


A「銭湯、いこう」



暗転

シーン8 Dが離れる。

携帯着信音

*「あ、もしもし。昨日品出しやってくれたよね。はい。あーそうだよね、いやなんかさ、ビール一個足りなくて、なんか知ってる?いや、全然、疑ってるとかじゃないんだけど、昨日のレジ金から朝まで変わってなかったからさ、お客さんいなかったし、身内のやつだとおもうんだよね。なんか知らないかな?」

F明転


A「いや、わかんないです。すみません。あ、今日ちょっと、あの、体調悪くて、休んでも大丈夫ですか、ああ、そうかもしんないです、はい、明日の朝から、病院行ってきます。」

扉開閉音


BCD「ういー」

B「おっも」

C「へへ、うほーうまそう」

D「手洗えよ、きたねえな」

C「大丈夫しょ、うっま」

D「おい、最悪だよもう」

D、Cを連れて手を洗いに行かせる。


B「(Aに缶を渡す)はい」

A、 缶を開け飲む。


B、 Aの様子に気づくが、察してテレビをつける。

B「ザ漫才やってるじゃん。」


テレビの音


C「ずる、開けるなら先言えよ。俺ビール、とってー」

D「うい」

C「うー、キンキンに冷えてやがる。」


D「あ、もうやってるじゃん。ん?なんか忘れてね。」

C「忘れるくらいだから大丈夫しょ」

B「」

D「あ、バイト」

C「そうじゃん、バイト」

D「バイトは?」


A「やめた。」

D「なんで?金どうすんの」

A「なんとかなるでしょ」


C「やめたら次さがそうぜ」

B「次、どこがいいかね、」

C「やっぱパチ屋でしょ、絶対楽だよ。」

D「いやいや」

B「いやー出玉運ぶのしんどいぞー」

C「えー、あれは景品交換とか」

B「あれ女の人がやってるじゃん」

C「かー男女差別」

D「いや、そうじゃなくて、そんな簡単にやめれんの」


D「なんかしたでしょ」

A「いや」

D「だからいやじゃなくてさ、仕事だぞ?」

A「うーん」

D「ええ、どうすんの」

C「それを今話してんじゃん」

D「いや、そこじゃなくて、バ先に連絡、どうすんの」

B「もういいよ」

D「いやよくないって」

C「そんなもんでしょ、バイトとか」

D「バイトとかどうの前にこれ仕事だから。そんなんだったらなんも続かないって、これから」

C「仕事とかわかんねぇし、いいよもう終わったことだし」

D「いやいや、これからのためにもさあ、何」

B「最初からなんもやってないじゃん。続けたいこととか、見つかってもないんだし、」

D「えぇ」

B「ゲームは続いてるし。」

D「いや、仕事ゲームじゃないし。」


D「はァ、なんか、もういいわ、うん、なんか。はああ。」


D、ハケ


B「なんかってやっぱ便利だね。」

C「寝るわ、(あくび)」

B「ああ、おい、自分のやつ捨てろよ、」

C「お前も自分だろ」

B、片付けを始める。

B「まだ飲む?」

A「うん」


BC、ハケ

シーン9 働くこと儚く

A、ラジオをかける。

ラジオ「さあ、今週もはじまりました、ミュージックジャポン。ラジオパーソナリティの増井祥子です。皆様、如何お過ごしでしょうか。さて今週は先日に引き続き働くお父さんを応援ウィークということで、さっそくお便りから参りましょう。ラジオネーム脳みそしゃばしゃば社畜ちゃんさんから頂きました。増井さん、こんばんは。こんばんはー。いつも楽しくラジオ拝聴させていただいております。先日、課長から頼まれていた資料作成を失敗してしまい、取引先との打ち合わせに失敗してしまいました。あらー。後日、課長からおしかりをもらい、会社の業績もがた落ち、もしかしたら今月で会社を首になるかもしれません。増井さん、どうすればいいでしょう。また、増井さんは首になったことはありますか。ということで、脳みそしゃばしゃば社畜ちゃんさん、お便りありがとうございます。そうですねえ、私はうーん、クビになったことはないんですけど、というか、真面目にやってれば首にならないですからね、まあね、この方もあのーお名前ながいんで脳シャバさんって呼ばせてもらいますけど、これにかんしては、あのー脳シャバさんが全部悪いですからね、まあよくよく反省してくださいって感じで。うーん、まあ次探せばいいんじゃないですか、人生そんなもんですよ、まあこの方おいくつかわかりませんけど、若ければなんとでもなるでしょ、あは、やりたいことやってればなんとかなります。多分。てかそう思わないとやってられなくないですか?うーん。少なくとも私はそう思ってないとメンタルきついかもですね。あは、どうしよ、50歳とかだったら、このラジオ年齢毎回聞いてないですからね、わかんないです、うん、はいまあなんか頑張ってください。ということで、そんなえーくそ雑魚へっぽこの脳シャバさんに向けてこの曲を送ります。ヘルシンキラムダクラブで「何とかしなくちゃ」」



照明変化

A、ソファに腰掛ける。

A「もう、アア゛」

A、手足を伸ばしたり、ジタバタさせたり、どうしようもなくなって、でも何か身体を動かしたくなって

出勤できるような状態になるが足が動かない。

無気力

ソファに座り込む。

着信。


A「あーもうやだやだ、あーもうだめだ」

着信が止む。


A「はあ」

音楽の途中、着信

A、むかつきながら、着信を切り、踊る



着信

A「ひいひいひいひい」


A「バイトずる休みしてすみません、僕がやりました。もうやりません!」


A、電話を取ろうとする。

扉開閉音

B、Cを抱えてイリ

シーン10 ○○○

B「家ついたよ。」

C「んあ」

B「アー腰いた。」

C「腰痛い。」


A「どうしたの」

B「いや、」

C「(Aにつかみかかる)お前!が!バイト飛んじまうから!俺が!俺が!」

C「(泣きながら)俺の源さんが、大工の源さんライトミドルが、打てなくなっちまったんだろ!だから、俺が、身を削ってバイトしてきたのに、アーいたいたたた」


B「とりあえず、これはっときな。俺も腰やったかもな」

A「そうか、そう、そう」


C「なんだよ、その反応。なんだよそれ!俺、こんなからだ、ぎっくり。」

B「もういいよ寝な。」

C「1万発、いや、10万発だ!絶対にだしてやる。(匍匐前進はけ)」



B「飲む?(缶を差し出しながら)」

A、 首を横に振る


A「どうしたの」


B「あ、あいつね、バイト始めたんだって、あそこのミンナで行ってた銭湯。」

A「そう」


B「浴槽ブラシかけてたら、腰やったって。」


B「でも今日ちらっと聞いちゃったんだけど、あそこつぶれるらしい来月で、」

A「ふーん。」


B「今度、またみんなでいこうよ。サウナ、近くにないし」

A「うん」


B「あ、それでそうだ、これ、どう?さっき拾って、バーテンダー。」

A「いいよ、バーテンとかできる気しないし。」


B「俺も一緒に働くからさ、やってみようよ。」

A「いやぁ」


B「うん。よし。」

A「いや」

B「いや」

A「ううん」

B「ううん」


B「うーん。わかった。あ、もしもし、すみません。ちょっとバイト興味あるっていう友達見つけたんですけど、あ、え、まじすか、わかりました。あ、じゃあ、はい後程。はーい。失礼します。はーい。」


B「イッツリアル」

シーン11昭和の老婆

A「え、今から!?いや、俺、俺、バーテンダーとか全然わかんないんだけど。いや、お客さん来ないからっていや、ちょ、ええ、」

暗転


呼び出し


A「あ、はい、いま、今行きます。」

明転、プロジェクターの文字が見えるほどの暗さ。



眠っている女のふりをしたD

A「あれ、あ、すみません、お客さん、今、」

*「起きてる、起きてる」

A「ああ、いや、」

*「バイト?」

A「まあ、はい」

*「声うるさい」

A「はい?」

*「バーテンダーがうるさくてどうすんのよ。」

A「はい、すみません」


*「あんた、バイト?」

*「何回聞くんですか」

*「まだ二回目」


*「じゃあお酒の名前もまだ知らないか」

*「勉強中です」

*「勉強って、そんなことに時間使ってどうすんのよ」

*「どうって」

*「じゃあ、感覚、感覚で一つ作ってみてよ。」

*「ええ」

*「いいじゃない、経験よ経験」


*「人生の先輩から教えてあげるわ」

*「世の中やったもん勝ちだから」

*「もうね、どれだけ知識あったって、どうせベテランとかダラダラ続けてた人がぜーんぶかっさらってちゃうんだから。やってみたもん勝ちよ。やっちゃえばいいのよ」


*「あんた、なんかやりたいことあんの」

*「いやァ、まだ」


*「あ」


*「今、エッチなこと考えてたでしょ」

*「いや別に」

*「沢尻エリカ?」

*「誰ですかそれ」

*「ああもう知らないんだ。Z世代」

*「Z世代もわかんないです。」


*「一曲歌ってもいい?」

*「機械の操作わかんないんですけど」

*「私ここよく来るから。大丈夫」

*「あと吐かないでくださいよ」


中原めいこ「君たちパパイヤキウイマンゴーだね」

BC、現れる。D、曲終わりと同時にかつら脱げる。


A「えなにしてんの」

D「え、あ、えっ」


D「ドロンしまーす。オエ。」

シーン12 だめだねもう、なにも


A、ゲームを始めようとする。

A「勝てない、勝てない勝てない」

冷蔵庫を見る、何も入ってない。

A「はあ」



A、携帯でAVを見る。

客席に見えないよう自慰をする。

途中でやめてしまう。


A、おもむろに髭の状態を鏡で見る。


A、鏡を見ながら、

A「はい、よろしくお願いします。御社を志望した理由としては、御社の掲げる企業理念に共感したからになりまして、まず、ああ、そうですね、学生時代は、えーアルバイトを基本的に、続けていて、バイトリーダーまで、登り詰めました。」


A、ため息


A、身体を臭う。

A、服を脱ぎ、裏へ周り、身体を洗おうとする。

水はでない。

A、銭湯に行く。シーン5のような立ち回り。

A、牛乳を買おうと財布を見るが、お金はない。


スーツを着たBCD、Aを取り囲む。


BCD、円を囲むように踊り、動き、

挙手、深いお辞儀、電車に乗るような動きをする。

A、見様見真似で頑張る。顔はどこかぎこちない。

同じサイクルを繰り返し、A、途中から、スーツを着ながら動く。


BCD、次第に輪から外れ、クロールをするような動きをしながらハケ

A、一人になり、登壇。

シーン13 泳ぐ社会人


ざっぱーん。


A「ふー」


A「(大声で)はじめまして。本日より配属になりました。趣味はゲームと漫画とYouTubeです。よろ、よろしくお願いします!」


A、必死にクロールをする。


C「(平泳ぎをしながら)よ」

A「ああ、」

C「調子どう」

A「まあ」

C「あ、この前の合コンでくっそ良い子いたんだけどさ、馬鹿みたいに口臭くて、あ、なんでこの前来なかったの」

A「あ、いや結構疲れきちゃってて、ごめん」

C「あ、そう」


C「俺さぁ、仕事やめようと思うんだよね。」

A「え、ああ、そう。」

C「なんか、俺、まだまだやれると思うんだよな。まあ、まだなんもわかんないんだけど、なんかやりがい感じないっていうか。刺激がないわ、うん、刺激が足りない。」

A「ああ?」

C「ふん。まあお前もそのうちわかるよ。」

C「あ、そうだ、今度俺の尊敬してる先輩がさ、セミナーやるんだよね。営業1年生のための向上セミナー。くる?顔効くから予約しといてやるよ、今週の日曜日六本木のTSビルでさ」

A「いや、いいかな。まだ、」

C「もったいねー、まあいいや。」


A「どうすんの」

C「え?」

A「いや、なんか具体的に、刺激、とか、なにすんのかなって」

C「起業しようかなーって」

A「」

C「俺、ガキ臭いけどさ、将来社長になりたいんだよね。」

A「そう」

C「あ、もし会社立てたら雇ってやるよ。まあ、そん時までに実力つけてないと、いくら友達でも平社員だけど」

A「うん」

C、泳ぎながらフェードアウト。

A、泳ぐ


波が強くなる

A、休み休みになりながらも必死で泳ごうとする。

D、泳ぎながら


D「うい」

A「あ、お疲れ様です」

D「どう」

A「まあぼちぼち」

D「この前、うちの甥っ子がさ、箸指さしながら、「これ使いたい」って聞かなくてさ、何回も言うもんだから、使わせたんだよ。案の定使えないんだけどさ、だから、教えてやったの。こうやってこう持つんだよって。でも何回教えても使えなくってさ。もうさ。あ、結局、「スプーンで食べな」って言ってさ、スプーン使って食べさせたんだけどさ。あ、聞いてる?」

A「はい、聞いてます」

D「でさ、結局スプーン使わせるんだけどさ、いっつも机とか服とかべたべたにして。お前もう、お兄ちゃんになるんだろって。あ、今年もう一人生まれるんだけど、」

A「あ、おめでとうございます」

D「このエピソードさ、お前に似てるよね。」

A「ああ」

D「何回言ってもわかんないってところ。ほんと、うちの甥っ子そっくりだよ。ね。いつになったら出来るようになんの。」

A「いやぁ」

D「いやぁじゃなくて、いつかって聞いてんの。わかる?甥っ子4歳だけど受け答えはオマエよりちゃんとするよ?」

A「ああ、」

D「また、ああって。俺がわるいかな、これ。お前のせいでいっつも気が散るの、なんか鼻につくし、なんも出来ないし、いつになったら出来るようになるんだよ。あーあ。人事ってなんでいっつもこんなやつ」

A「あの、しばらく休みます。」

D「休みますって、お前さ、ここ学校じゃないんだからさ」

A「すんません」


A、しばらくして泳ぐのをやめる。

しばらく虚空を見つめる。

シーン14 孤独の自尊心


さざ波の音

風の音

木々が揺れる音。


A、虚空を見つめ、深呼吸をする。


A、涙を流す。

涙を拭くことも出来ず、嗚咽が響く。


椅子の上に立ち、下を見る。

これくらいの距離感なら、死ねるだろうか。

自然と涙が止まり、笑みがこぼれてくる。

電話をかけようとしてみる

電話がつながっても切ってしまう。


深呼吸。


B「何してんの」


B「ここ意外と高いね」


B「元気、じゃないか」

B、タバコを吸おうとする。


B、タバコをしまう。


B「この前さ、いっつも行ってた銭湯つぶれたんだよ。言ったか」

A「ああ、うん、前言ってた。」

B「最後にいったのいつだっけな。半年?去年か?あーもうそんな経つか」


B「俺、思ったんだけど、更地になったあそこ見てもさ、あんま悲しくならなかったんだよね。結構いってて思い入れあったと思うんだけどさ、うーん。大人になったってことなのかな」

B「でも、段々、その悲しくなれないって気持ちに悲しくなってさ。もうみんなの思い出から消えていくんだなーって思ったら、悲しくなってきたんだよね。」

B「俺らでさ、お金貯めて、銭湯作らない?もうなんか誰もこないだろってカンジにきったねえ浴槽でさ、ちっさサウナつくって。あ、番台は可愛い子雇おう、例えるなら、深キョンみたいな。あ、でも深キョン歳結構いってるか、でもいいよね深キョンなら」


A「なんか」

A「やりたいことってある?」

B「やりたいこと?」

A「うん」


B「え、わかんない。夢はあるけどね。さっきの銭湯の」

A「そう」


B「なに」


A「なんか、なんとなくで生きてきて、やりたいことってなんもないよな、と思って。」

B「あー」

A「なんか、みんな、さ、やりたいことあってさ、夢があってさ、なんか、幸せそうでさ、なんか、わかんないんだよね、それで、なんか、みんな俺のこと置いていって、置いて行かれてるような気持になってさ」

B「お前ってさ」

B「泣き顔ブスだよなー」


A「えェ」


B「なんか、わかんないけど。うん。」


A「えェ」


B「俺、人生経験まだ浅い方だと思うし、わかんないんだけど。他の人よりちょっとだけ自分は特別って思ってればいいんじゃないかな。」

A「他の人よりちょっとだけ特別」

B「なんか、なんでもないんだけどさ、どこにでもいそうだし、なんかすごいわけじゃないんだけど、でも、ちょっとだけ特別。そしたら、なんか、わかんないけど、何でも出来そうじゃん。わかんないけどね。」


A「未来ー!」

A「最高ー!」

B「未来ー!」

A「未来ー!」

B「最高ー!」



B「銭湯行こ」

A「ジャンケン負けたら」

B「コーヒー牛乳?」

A「今日はコーラでしょ」

シーン15 エンディング


曲がかかり、照明変化


A、B、おもむろに服を脱ぐ。

体重をはかり、太ったね、とか言い合って、はしゃぎ合う。

D、一般客のように現れ、服を脱ぐ。

D、ABのじゃれ合いに交わる。

ABD、踊る。


C、従業員のようでたわし等をもち、作業に入る。


ABCD、全員で踊る。

ABCD、疲れて床に突っ伏してしまう。

ABCD、なんだかんだ、良かったねと

今が良ければ、それでいいんじゃないのって

思いながら、笑い合う。

暗転

カーテンコール


補足

※ 衣装は基本的に黒スーツ、白シャツ、黒ネクタイ。

  演者一人一人微妙な差異はあってもいい。

※ 小道具における消え物は基本的に本物を用いる。

  ただしタバコは演技によるものとする。

※ 演出により、文字の投影を行う。

  場所は舞台中央、奥、フォントはゴシック体に限る。

キャラクター設定


A 主人公。

やりたいこともやる気もない。見つからない。わからない。不安とプライドの塊。


B 純粋さ。無邪気さ。本能。本当はこうしていたいという現実的側面。


C 色欲的。恰好を付けていたい。自分を良く見せたいナルシシズム的側面。


D 理性。本来こうあるべきだという理想的側面。


ABCDが合わさり、かけたり、優劣があることで
個性のある人間になる。
そのどれも忘れるべきではない。


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