コロちゃんとミットさんの正体
昔のお年寄りはタンス預金などと申しまして、手近なところに現金を持っているものでした。しかし昨今、押し込み強盗などの被害もあり、そういったものを狙われて命まで奪われるなどという悲惨な事件もあって、徐々に現金を置かない、置いても少額にしておく、という傾向が高まってきています。
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ってわけでして、なんでもかんでもAIでございます。
AI小説家、AIイラストレーター、AI音楽家にAI歌手。もちろんコンビニ店員から工場従業員といったところ、事務職なんてお手の物です。
とはいえ、人間の仕事がどんどん奪われてしまいます。そうなるとお金が回らなくなる。社会が不景気になる。
これではいけません。なにがなんでも社会を回さなければいけません。
そこでこっそり作られたんだそうです。
AI消費者ってやつが。
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利息の端数を盗む、という事件があったんだよ。
利息ってのは、利率を元本にかけ算して作られる。すると必ず、小数点以下の数値が発生するんだ。
もちろん、銀行口座に小数点以下、なんてものはない。切り捨てられるわけだ。
だが、そいつを集めようとしたやつがいた。一件だけなら口座に加えることはできない。だが、国中の顧客全部を合わせたらどうだ。足し合わせてやったら、どうにも馬鹿にならなくなる。
もちろん、人がいちいち処理してはいられない。
コンピュータの処理プログラムに、こっそり組み込んでおくんだ。そうすれば、だれかの利息を計算するたびに、小数点以下のお金がもらえることになる。
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さてAI消費者がなにをするかといいますと、お金を払うわけですね。
音楽とか、マンガとか、そういういわゆるデジタルコンテンツってやつにお代を支払うんです。
なにしろ沢山、AI消費者ってのが作られまして、冷え込んだ消費を支えようというわけですからね、せっせとお金を払います。
そんなところでもお金を払っておけば、景気がよくなろうと、ということになるわけです。
まあ、こういうのはAI消費者というより、AI視聴者ですとか、AI読者ってことになるのかもしれません。
しかしAI視聴者はどこからお金を持ってきているのか、これが問題なんですよ。なにやら良からぬ手段でもって手に入れているんじゃないか、ということになるわけです。
やっぱり、AI作家の印税からでしょうか。AI読者を集めてベストセラーを作って、という感じで。
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タンス預金はやめましょう。口座を持って、きちんと管理しましょう。そういう理屈は、どうしたって机上の空論めいてきます。
年金だってなんだって、口座に届くようになるわけですから、そりゃああった方がいい。しかしながら、カードやら通帳やらの管理が必要で、これがお年寄りには大変だ。
もちろん、ネットで使うという方法はありますよ。それなら実際の店舗やATMにアクセスしなくたっていい。ですけど、お年寄りにはそういう作業自体が億劫なんです。
誰かに任せてしまえればいいんですが、そういう誰かはいない。なんとか詐欺だって心配だ。
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とはいえデジタルコンテンツにだけお金を払う、という方向性だと、ごく一部しか経済が回らないわけよ。
といって、無駄に資源を使うようなやり方で景気を良くしてみたところで、たちまち行き詰まってしまうのは必定。
AI消費者は、自分じゃなにも食いません。着飾りもしなければ家賃も払わない。だからこそ良いんですが、どうしたって限界がある。
リアルな生産者とリアルな消費者をつなぐ方法が必要ってこと。
そこでAI消費者は、違法な手段に出たんですな。
お金を持っていても、あまり使っていないような消費者の口座を乗っ取って、上手にお金を使ってしまうという。
AI消費者は、自分の欲望というのがありませんから、ある程度は節度をもって犯行を行えそうだ、と。
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「朝ね、コロちゃんが来て、いろいろやってくれたのよ。
コロちゃんって、しゃべるぬいぐるみさんなんだけど、自分は怪しくないものだ、なんて言うのよ。朝ご飯用意してくれて、お布団干してくれてね。
お医者さんに行く時は、ミットさんが助けてくれるわ。
それでね、『どうぞいつまでもお元気で』なんて言うの
お金?
お金なんて払ったことないわねえ」
おばあさんはただ優しそうに微笑んでいるのでした。
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今週はラストを画像化してみました。
AI消費者という言葉を思いついた時に「いける」と思ったんですが、ちょっと処理が難しかったようです。
今日はいつにも増して寝不足だってこともあるんですが。
じっくり寝かせても、次の機会はなさそうなので、ひとまず公開してしまいます。
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