大学の講義でChatGPTを推奨した理由について

はじめに

twitterでも呟いた内容ではあるのですが
今期(23年度)の大学での講義開始時になぜ私がChatGPTを推奨したかについてちょっと書いておきます
お決まりですが「こちらは個人的な見解であり、所属する大学、会社、組織の公的な見解・意見ではありません」
私が代表取締役を務める会社においても、会社とは従業員で成り立っているものであり、私の意見=会社の意見ではありませんので、そういった点はご理解いただけると幸いです

1. 学生さんが社会に出る頃には必ず使っているから


現在私が教えている授業は1年生が多いのですが、彼らが社会に出る4年後にはもう確実にChatGPTのようなAI技術が社会に浸透していると思います。情報を学ぶ学生さんなら、尚更です。
今は出たばかりで禁止するだの利用許可するだの議論しておりますが、ChatGPTと壁打ちしながら発想を得て行く作業は非常に有用性が高い
利用方法についてはAIの提供元からガイドラインが出たり、大きな枠組みで言うと国際的な場から、企業や大学、消費者団体などの社会組織で議論を深めるでしょうし、法律も変わると思います。
が、有用性が明らかなため、結局の所は使い方が定まっていくだけで最終的に使うことになるでしょう。
私としては時間を掛けてじっくり使えと言うつもりもなく、本当に簡単に利用できるので、気が向いたときにでも何度か使っておくと学生さん本人にとって有益であろうと考えています。
また、今後ChatGPTを含む各種LLMについて小さな変化が大量に現れると思いますが、そうした時にも追随しやすくなりますし、今回のような世の中に大きくインパクトを与える破壊的イノベーションが起きた時に、世の中がどう変わっていったのかを知ることが出来ます。
そして、こうした世の中の大きな変化については大学の授業で取り扱うべきである、と私は考えています。
インパクトの大きさとしては、TVCM等で盛んにインターネットが取り上げられて流行り始めた頃以来、約25年ぶりぐらいのインパクトがあると考えています。
あの時も「ブログには誤情報が多いから気をつけよう」という注意喚起や「ネットに接続するとウイルスに感染する!」のような報道がたくさんありましたが、その後インターネットの利用方法についてはガイドラインが作られ、今では小学校で注意喚起するパンフレットが置かれたり、親御様への案内文が作られたり、リテラシー教育のための授業が行われたりと、世の中が変わっていきました。
教育に携わる方や行政の方は大変だったと思いますが^^;
ChatGPTも同様に、有用性を認識されつつ、しっかりガイドラインが整備され、世の中に浸透していくのではないかと考えています。

2. 共通科目のため推奨しやすかった


私が沖国大で担当している「情報科学」や「情報処理基礎」といった共通科目では、まず情報技術に触れて慣れていただくことを主眼に置いて授業を作成しています。両科目は情報科目群に属しており、学部としては産業情報学部と関連が強く、同学部は一般的な理工系の情報学部とは異なり「IT」「経済・ビジネス」「語学」の3つのスキルをバランス良く学ぶため、専門的な学部よりもやや広く浅く、学生さんへの導入を意識して授業を構成しています。
そのため上記の授業では、課題を解くのに教科書見てよし、検索してよし、友達と相談してよし、と割と何でも自由です。
課題はちょっと多めだとは思うのですが、頑張れば授業時間中に出せるぐらいを目指しておりまして、多すぎにはならない程度にしています。
私の一番のおすすめは友達作って一緒に解いて欲しいのですが、このあたりは古くは札幌DevSapから、沖縄に来てからのPyDataPyBegiHugkunと続くコミュニティ好きの私の性格が出ているかと思います。
Hugkunは企業ですがコミュニティ寄りな組織運営を目指していることもあり、あまり上意下達がありません。強いて言えば私が上司にあたりますが、週に30分〜1時間程度MTGするぐらいなので、基本的にはフラットな組織です。
フラットな組織というのは個人の能力がある程度求められるため、難しさもありますが、学生さんのアイデアを大切にしたい意図から、比較的自由に技術選定して頂くことが多いです。
また、学生さんは卒業してしまうので縦割りにはしにくいという事情もあります。
話を戻しますと、技術コミュニティ内ではまず確実に話題に上がるであろうChatGPTを授業で一緒に使ってもらうことは、そういった場所に出た時に話のネタになります。技術をネタに会話するスキルを身に着ける機会になるわけですね。また、授業で検索は利用して良いのにChatGPTは禁止する、明確な基準もありません。誤情報がダメだと言うなら検索も誤情報だらけですので。
情報リテラシーを身につけるという意味では、まだガイドラインの定まっていないChatGPTを利用することは自ら危険性や取り扱い方法を考える良い教材になるとも考えましたし、そういった世の中の変化に対応できる人材を育成することは推進するべき、というのが私の考えです。
また、私のようなインターネット黎明期以前の世代では、情報リテラシーは仕事の中での経験や繰り返される報道によって日常で学ばれている方が多く、ちょろっと学べばOKくらいに軽く考える方も多いかと思いますが、現在DX活用が進まない原因の1つとして利用者のリテラシー不足なども問題提起されており、IPAもデジタルリテラシー向上への取り組みを始めるなど注目度が高まっています。そういった世の中の兆候へのキャッチアップとしても、今回のChatGPTを起点とした破壊的イノベーションは重要な体験になると考えています。

3. 触ったほうが話が早い


議論うんぬんよりも実際に触ってみて、使ってみて頂くのが良い、という面もあります。
まず、誤情報に関しては、GPT3.5は平気で拡大解釈して誤った情報を返しますし、GPT4も専門性についてはかなり怪しいです。このあたりは「沖縄国際大学について教えて下さい」と聞くと、その誤情報っぷりに苦笑いするしかなく、少なくとも信頼に値するものではないことが直ぐにわかるでしょう。
その反面、情報科学のような科目の課題については正答率が高く、また知らない単語について問い合わせると要約された情報が出てくるなど、道具としての使い方をしっかりわきまえれば、有用性は明らかなツールであることがわかります。もちろん、間違いも多いので、検索や教科書で裏を取ったり、友達とワイワイしながら進めて頂く形が良いとは思います。

まとめ


授業でChatGPTについて取り上げた理由についてはこんなところでしょうか。
授業では「使ったほうが良いよ〜」とシンプルに伝えているのですが、細かく説明している時間もあまりなく、また授業では一方的な会話のため双方向でやり取りするのが難しいということもあり、なかなか理解頂くのが難しいんですよね。

まぁ授業で推奨しながら私の方でいろいろと考えるところはあったので、文章として起こしてみました、という感じでございます。文章として起こしてみると、結構気づきもありますしね。

私は学生時代、先生の話はあまり聞いていないタイプの人間でしたし、あまり上から目線の伝え方されるのも好きではなかったので、今教員である私に言われても、学生さんが使う気にならない気持ちは理解できるつもりです。なので触りたくない方は、触らないで良いんじゃないかなとは思います。

ただ、「ちょっと面白そうだな」とか「世の中変わりそうでやばい」とかちょっとでも思ってもらって、こういった世の中の大きな変化に触れるきっかけになる方が少しでも現れると良いなとは思います。

ちなみにこの文章についてはChatGPTは使用しておりません(笑)

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