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自然科学としての心理学とは

1. いわゆる"心理学"との違い

1-1 ≠ 自然科学としての心理学は、人の心を読むことや人生語りではない

自然科学としての心理学は
-「 えっ心理学勉強してるの?私の考えてること分かっちゃう!?」とか
- 「あの子の心をつかむには♡」とか「説得力を持たせる方法」とか
- 「得意なことは人間観察と人間分析です、キリッ」とか
- 「人間ってこうだよね〜」とか「人生ってこういうもんだよ〜」
などではない。
そういったものは、人間心理についての考察や個人の経験や意見である。

そういった考察を、仮説として立てて科学的に検証し再現可能にして、エンピリカルな(実証された)エビデンス(知識)として構築することが、自然科学としての心理学の仕事である。
簡単に言うと個人の感想の「人間ってこうだよね〜」を、実験などを通して数値化して、人間という生物の一般法則 (Allgemein gültige Gesetzmäßigkeit)として見つけていくこと。つまり、個人が日常生活で経験してることが「数値上でもみんな同じこと経験してますよ、人間ってこうですよ〜」と出てくる。
なので自然科学としての心理学の研究結果を見ると、「えっそうなの!?」という新しい発見よりも「あ〜そうだよね〜てか当たり前だよね〜今さら?」という感想になることが多い。

それでも、人間に関するさらなる考察を深めていくために大事なのである、データを積み重ねていくことが。

1-2 ≠ 自然科学としての心理学は、哲学や文学としての心理学ではない

- フロイトやユングの心理学アプローチは含まない
- 精神分析や夢分析、深層心理など「科学的に検証することができない」(数値化してデータを積み重ねていくことができない)分野は含まない。ただし自然科学の対象外というだけで、別に否定しているわけではない

2. 学問と自然科学

2-1 学問とは (academic discipline)

哲学や歴史学などを含む人文学、経済学や教育学などを含む社会科学など、様々な知識分野を総括する。その中の1つの分野が自然科学。

2-2 自然科学とは (natural science)

物理学・化学・生物学、そしてなんと心理学!
えっそこで心理学?なんで?
そもそも自然科学ってなんだっけ?と思ったでしょう。
ここでwikiの定義を参照

1. 自然に属するもろもろの対象を取り扱い、その法則性を明らかにする学問
2. 自然における観測可能な対象やプロセスに関する科学あるいは知識のこと

心理学は
- 人間という一つの生物("自然に属する")の、特に心の動きを客観的な対象とし
- 人間がどういう生物であるかという、人間一般に当てはまる法則性を
- 科学的手法によって("観測可能")
明らかにする学問なので、自然科学の定義に当てはまる。

[補足]
・医学が人間の身体を対象にする科学であるのに対し、心理学は人間の心の動きを対象にする科学。
・人間自体を対象にしているのであって、人間が生み出した芸術や社会などは対象としていない (それは人文学や社会科学などが扱う)
・なんと数学は自然科学ではない。観測できず科学的手法で研究されないため。
・狭義では物理や化学が自然科学とされ、実際心理学が自然科学に分類されるかは議論の余地あり。

3. 科学的手法

科学的に検証するとは、仮説を立て、実験や観察を通してデータを集め、データを分析し、出てきた数値から何が言えるのか、何が言えないのかを解釈すること。

自然科学としての心理学では、このプロセスと知識はすべて論文としてまとめられ出版される。たくさんの論文によって裏付けされ研究されてきたトピックは理論として構築され本になって出版される。
つまり、心理学の論文や本を本当に理解するためには、科学の基礎知識や考え方、そして科学的手法 (実験デザインやデータ分析など) を理解していることが必要だ。
それはただ心理学の本を読んで、知識として人間ってこうなんだ、ふ〜んと思うだけのことではない。自分が能動的に人間について考え、人間についての知識を検証していく体験のこと。

次のnoteでは科学的手法について、特に心理学を理解する上で大事な点も含め、解説しようと思う。







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