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恋せよオトナ!恋愛レボリューション21

「最近、恋してますか?」



どうも。おじさんです。これから貴重な1分間とあなたの視力を奪います、返しません。


恋って聞くと、貴方は何を思い浮かべますかね?青春時代?男女の色恋沙汰?酸いも甘いも?鳴りやまぬ胸の高鳴り?


もし自分が今胸の高鳴りが鳴りやまなかったら気つけ・動悸かな?って素直に心配になりますが、恋は素晴らしいものだったはずなんです。



かつて友人と居酒屋に行くなんてなったら迷う事なく、直近の恋愛事情に花を咲かせていたはず。「気になるあの子がさ」とか、「元カノがさ」とか。「そうなんだ、大変だね」などの定番のフレーズを交えながらホッケに食指を伸ばしていたあの日あの時。


友人の話を聞きつつも、意識の水面下では昨日のA子ちゃんとの情事を思いだしたり次のデートプランを考えたりしながら唐揚げをほおばっていたあの夜。途中で合流した異性の友人と飲み比べをし、タクシーに消えた財布の中身



それが今はどういうことでしょうか。





「なんだかヒザが痛い」

「むなやけがすごい」

「首が痛くて」

「腹が出ちゃってね」

「支払いに追われてて」

「職場でどうの」

「上司がどうの」

「でっかいプロジェクトが」

圏央道ができたね



と色味にかけた会話。いつしか言葉のキャッチボールは、投げるつもりも無いのに勝手に変化球となったり、投げても相手に届かなくなったり。拾いに行くスピードにも全くキレが無く、気づけば遠くに転がるボールを眺めるだけのような時間を過ごすようになってしまった。


かつて、何度こすったんだって程にした恋愛話も気づけば押し入れの奥。大掃除の際に「あれ?こんなところにこんなんあったんやなぁ」って思い出す程度の存在にまで成り下がり、「まあもういらんしな…」と慣れた手つきでジモティへ出品しておりませんでしょうか?買いますよアタシ



だからこそ、おじさんはおじさんと呼ばれるようになり、いつしかキラキラ感を失い、「ゲハハハ」と下品に笑うようになっていくのではないでしょうか?少なくとも私はそう思う。なんせ恋なんてもう何年もしていないから(嘘です、テレビつけるたびに女子アナに恋してます。すぐ名前忘れるけど




先日、とあるバーのはしっこで私は一人の若者と出会った(もちろん知人だが)


その若者は、かつては連れの女性とこの場所に通い詰めていたいわゆる常連客だ。だが、今日この場には彼の姿しか無かった。


「どうだい?最近の調子は」

131キロの(気持ち的にはストレート)のスローボールを放り込む。ミットのど真ん中におさまった。バシンッ!


「まぁまぁですね」

150キロくらいに思える直球が返ってくる(気持ち的にはスローボールだったのだろう)あまりにも早いのでボールをとりこぼす。


私「これ何飲んでるんだろうね」

若者「えっ?」


あまりにもトンチンカンな事を発してしまった。自分で注文したドリンクを相手は知る由も無い。とんでもないナックルボールを放ってしまった。大きくすっぽ抜けバックネット側にボールが転々と

若者「これ変な味がするんすよ、飲んでください」

とんでも無い返球が来た。

私があまりにもとんでもないボールを投げたから激怒したのだろうか。バックネット側に転がったボールを拾いに行った私の顔面目掛けて「オオタニサン」よろしく158キロのストレートが(なお、現在大谷将平はこの球速は出ない)


私「どれどれ…」

ボール…では無く、顔面に近づけられたグラスに口を付ける。変な味どころか味がしなかった。コロナだったのだろうか私は


私「よくわかりませんね、そもそも味がしません。もしかしたら私はコロn

若者「僕はフラれたんですよ…きっと…」


急展開だ




マウンド(若者)から放たれたボールは大きくシュート回転を刻みながらキャッチャーミットに吸い込まれた。打者である私は大きくのけ反ってそのボールを避けたが審判の判定は「ストライクーーーッ!!」


私「ーーーというと…?」


若者「こないだから連絡が来なくなってね。それっきりさ。」



聞くところによると、何度も告白をしては断られていたが飲みにはいつも一緒に来てくれていたとのこと。そのたびにたくさんの話を交わし、たくさんの時間を共有してきた。ところが最近


若者「『気になる人ができた』って・・・言われましてね・・・」


「それってもしかして俺?」と、茶化してみたものの無視されてしまったという彼の顔に浮かぶ笑みは、強張っていた。私は手に握っていたグラスを口に運ぶ。ホントに気になるが私が飲んでいるコレはなんなのか


若者「その日を最後に、連絡がつかないんです。今日だっていつものように・・・ほら、こうして誘ったというのに」


彼の言葉は私の眼前で落ちた。その時の私は、自分の舌の上に広がる液体の存在の正体を掴みかけていたからだ。

「なんとなくだが…これはウーロン…?」


若者「わかってはいたんですけどね。アイツの気持ちも。こうなる日も。」


私もわかってはいた。これはウーロンだと。だって色黒いし



若者「まあ、しょうがないっすよね。ずっと。わかってはいました。」


そう言葉を吐く彼の投げるボールに、もう先ほどまでの球速は無かった。


でも、間違いなく言えるのはーーー



先日までの彼の人生は間違いなくキラキラしていたという事。恋という感情は人生にとってのブースター。恋が日常に色を付け、日々消費される時間1秒1秒に価値をくれる。


今はまだマウンドにも立たず、ブルペンで投球練習をしているだけに違い無い。近いうちにまた現れるよ、マウンドから本気でボールを投げられる相手に。


私「お互い…何を飲んでるかわからないし、一発ショットでも飲みますか」

若者「いいですね、飲みましょう」

私「ガソリン入れて、明日から元気にいきませんか?」




「何飲んでいるかわからないーーー」と言った彼はきっと、想い出の中にあったいつもの味が今日は涙で薄まっていただけなんだろうな、頑張れ青年!おじさんは応援してるぞ、と門出のショットを振舞うことにした。私が投げたこのボールは間違いなく、彼の構えたミットのど真ん中に突き刺さった。最近で一番いいボールだった。






私「・・・あっ・・・財布に・・・電車賃しか無いや・・・」




若者「・・・なんですかそれ・・・笑」



おじさんはね、もう恋の仕方なんてわからないのよ。マッチングアプリからはじめてみますか、とりあえず。


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