見出し画像

【Starlight Destiny#6】誘拐犯と結託

私の父は一代でかなり手広く商売をやっていたため
当時としては珍しく5階建ての家に住んでいた。
何かあるごとに「いいわね~お金があって」「社長のむすめさん」と言う
異名をつけられていた。そんな自分が大嫌いだった。
食料品店に言ってもすべてツケで買い物し、欲しいお菓子は
その場で食べても妹や弟はお金を払っていなかった。
私だけは違うと決めていた

ある日家に勤めていた人に「ここちゃん、お父さんが大変なんだよ」と
幼稚園まで迎えに来た。私は普段からその人のことを「888」と
呼んでいた。それは彼が乗っている車の車番だった。
先生も顔を知っている人だったのでそのまま私を引き渡し下校し
車中「のどが渇いたでしょ」と高級ジュースを紙コップに入れてくれて
飲んだ。そのあと急に眠くなった。そのまま寝てしまった。

どれだけ時間が経ったんだろう。暗い倉庫の中に手足を縛られていた。
「う、動けない」どうしよう。何が起きているのかさっぱり
わからなかったが、そういえばこの前両親からかたくなに止められている
見てはイケない刑事ドラマであった。
そう予期しているかのようにたまたま祖父の部屋で寝静まっているのを確認してから見ていた。
「誘拐」私はまさにそれにあっているのかもしれない。

静かに目を開けたら
迎えにきてくれた888が黒い電話の前で頭を抱えていた。
「888・・・ここはどこ?」と聞いた。
「ごめんね。ここちゃん。こうするしかなかった。お金が必要で」
なんとなくわかったのはお金が欲しいということだけ
「今ね。お父さんに電話してここちゃんを返して欲しければ100万円用意してくれと電話しようとしてたんだけど急に怖くなってね」
「今なんじなの?」
「15時半をすこし過ぎたところだよ」
「まだ、何もしてないんだね」
「うん」
「じゃ、何もしないで私をここから出していいこと考えたから」
「・・・」
「ここ!前から888には大型免許取ってお金いっぱい持って帰ってもらいたかったからお父さんに言ってみるよ」
「なにを言ってるの。誘拐したんだし、ここちゃんがお父さんにいままでのこと話したら終わりだよ」
「ばか!888の仲間だよ!絶対に大型免許取るんだよ。それで大きなトラックに乗って日本中を走って毎月のお給金をいっぱいにすれば100万なんてあっという間にたまるはず」

当時大型1・2種をもっている人が希少な時代だった。
運転センスはうまくて誰もが憧れる存在が888
「絶対にだれにもいわないから!!」

普段から捨てられている犬をもって帰って世話したり、転んで泣いている
見知らぬ子どもの家までおんぶして連れて帰ってくれる優しい888
私も妹・弟に手がかかる母から「お姉さんでしょ我慢しなさい」と
わかりきったセリフで我慢させられてよく会社の隅っこで泣いていた
いつも888が声をかけてくれてコロッケを半分づつわけて笑ってくれた。
そんな888になんとかしてあげたいだけの心意気気で父のもとへ走っていった。
888に開放されてからお父さんに888に大型免許取らしてあげてとお願いしていた記憶がある。父もちょうど888にお願いしようと思っていたらしくあっさり決まった。

夜改めて888の家に行き、父が事情を話したら崩れ落ちるように大泣きしていたそうだ。自分でも888に会ってはいけないのではないか?と思うようになり曽祖父の家から小学校に通っていた。その後風の便りで無事に大型免許を取りそれから数年父のもとで働いてから独立して今は自分が社長になっている。
この前、何十年かぶりにたまたま888とスーパーの駐車場で会った。
「ここちゃん覚えてる?888だよ」
「ははは!お互いに年をとったね。お元気ですか?」
「まだ子供だったここちゃんに怒られておじさん本当に反省したんだ」
「なんのこと?たしかハイクラウンキャラメルをもらって帰ってきた日だよね」
「あははは・・・約束は守ってくれているんだね」

私は知っています。あなたが毎月父の祥月命日にお墓参りに行ってくれてること。先々代・先代・今の住職によく聞かされていました。
目印はいつも車の形は代わろうが888の車番

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?