自宅。
　魚を飼い始めることになった。祭りの金魚すくいか、誰かに譲り受けたのか、何しろ急に僕の手元に来たものだった。
　たまたま家に、子どもの頃に使っていた水槽があったので、これを使う。水を入れて、魚を放つ。
　能動的にではなくとも、せっかく飼うなら長生きしてもらいたいものだ。魚の飼育に関する知識は、おいおい得ていくとして、いま思い付くのは、水槽の中でぶくぶく泡を出す装置のことだった。空気を送り込むのが、魚にとっては良いのだろう。
　物置を掘り進んで、手動ポンプを見付けた。手動というか、足踏みポンプか。キャンプでエアーマットを膨らますのに使った、かすかな記憶が。蛇腹になった円筒形のポンプだ。
　これで水槽の中に空気を送り込むとしたら、ポンプを僕自身が動かし続けなければならない。せっかく探し出したものだが、あまりにも非効率なので、不採用とする。