旅先のどこか。
　夜、旅館の外に出ると、街の灯りがほとんど無く、真っ暗だった。でも安心、懐中電灯を持っている。
　懐中電灯と言ったが、昔ながらの円筒形で先端で電球が光るタイプではなく、女性用の小さい（小さすぎる）ハンドバッグくらいの大きさと形の、四角いボディに取っ手が付いていて側面全体が光るタイプのものだった。
　旅行先がかなりの田舎だったので、こういうこともあろうかと前もって購入しておいたのだ。だから夜道も安心、と思っていたのだが。箱から出して即、旅行カバンに入れたので、いざ使おうとしたら操作方法が分からず、適当にスイッチを押してみても点灯しない。取扱説明書も持ってくればよかった。
　幸い、月と星の明かりで道は見えるので、照明無しで歩いていく。
　線路沿いの道だった。しばらく歩くと、小さな駅があった。ホームにドラえもんの、等身大以上の大きさの像が立っていた。多分、プラスチック製。何かキャンペーン中なのだろうか。
　スマホで写真を撮っておこうと、レンズを向けてシャッターボタンを押そうとしたところ、画面が勝手に動きだして、ドラえもん像が歩いたり、ドラえもん列車がホームに入ってきたりする。そういうアプリをインストールしているわけでもないのに、特殊効果が出てしまっている。