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過去の恋愛や現在の恋愛を思い、ダメージを受けてしまう映画『花束みたいな恋をした』感想文

映画を観たんです

映画『花束みたいな恋をした』を観た。

『花束みたいな恋をした』
主演:菅田将暉・有村架純
脚本は『カルテット』や『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』『東京ラブストーリー』の坂元裕二
監督は『カルテット』や『いま、会いにゆきます』『罪の声』の土井裕泰

今を生きるすべての人へ――――
坂元裕二脚本で送る、終電後に恋に落ちた2人の忘れられない5年間
出典:『花束みたいな恋をした』公式サイト
https://hana-koi.jp/

元々菅田将暉さんが好きであり、ほぼ毎週オールナイトニッポンも聴いているし、「菅田みたいな服着たいなーーー!!」と思って過ごしているところ、たまたま目にしたのが以下の予告映像だった。

いつもなら絶対にキラキラ恋愛映画みたいな予告で観る映画はチョイスしないのだけれども、今回は妙に気になってしまった。

その理由が、予告映像で流れる本作のインスパイアソング『Awesome City Club / 勿忘』である。

この曲が流れた瞬間に物語に寂しさや哀しさが色づいて、途端に胸を刺すようになってしまった。
恋愛の甘さ以外の何かを繊細に感じ取れる予告映像となっている。

音楽でぶん殴られた結果、観てみたいと純粋に思った。

観た

鑑賞後の率直な感想

「ヤバイ」

とにかくその一言に尽きる。
エンドロールを最後まで眺めてしまったが、エンドロール後に何かが起こることを期待したわけではない。

立てなかった

完全にダメージを負ってしまっていた。


キラキラ恋愛映画のような予告編とは異なり、いわゆる「イケてる奴」ではないサブカル好きな21歳の男女が終電を逃すことで出会い、共通の趣味で盛り上がった二人は友達から恋人の関係へ…

そこから始まるのは「普通の恋愛」である。

大きな奇跡が起きるわけでも、大病を患うわけでも、デスゲームに参加させられるわけでも、イケメンが転がり込んできて振り回されるわけでもない。

21歳の一般的な恋愛がそこから映し出されるのである。

日常生活、就職活動、夢、未来、結婚、理想、現実、考え方、心…
リアルだからこそ共感してしまう部分や、自分の中の何かを思い出してしまう部分がふんだんに盛り込まれている。

計算された映像の表現や丁寧で繊細なモノローグの言葉のチョイスによって、彼ら二人の考え方や気持ちの変化が顕在化され、観客の胸に突き刺さる。

二人が経験した5年間の恋愛は奇跡でもなんでもない。
そして、僕自身や多くの人が奇跡でも何でもない恋愛をしている。

だからこそ、思い出してしまう。

過去の失敗や、自分の気持ちの変化、その時隣にいた人の気持ちの変化、今隣にいる人に対して向き合えているのか…

自分にしか触れられない自分の恋愛に関する柔らかい部分(人によっては恥部なんじゃないかと思うレベル)にズブズブ刺さっていく。

映画の中盤に差し掛かるころから最後までずっと胸が苦しかった。
心臓をキュッと掴まれて、深い呼吸ができなくなっているように感じた。

僕自身も、主人公たちと同年代の20~21歳から約5年間の恋愛をして、その時の彼女とはお別れをした経験がある。

環境の変化に順応していくにつれて、受け入れられないものが増えていってしまっていたかもしれない。
彼女のことを理解する努力を怠っていたのかもしれない。
自分のことを彼女に伝える努力を怠っていたのかもしれない。
彼女の前で素直に笑えなくなってしまって、いつの間にか一緒にいるのが一番楽しい人じゃなくなってしまって、彼女がいることがどんどんプラスに思えなくなってしまって…

元々創作物で自分と向き合ってしまうタイプなので、ことさら雪崩のように自分のダメだった部分や、終わりに向かっていく恋愛模様を思い出してしまう。

そして、僕もいわゆるサブカル男子にカテゴライズされる人間だった。
今もそうかもしれないけれど。

映画を見ている間はあまりにも自分と被る部分が多く、純粋で深刻なダメージを負ってしまい、気持ちの切り替えがうまくいかず、今は自分の部屋で稚拙な感想文を書いている。

もう一度『勿忘』を聴きながら、物語の余韻に浸りたい。

冷蔵庫は大きいほうがいいでしょう