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40点を目指す講義NO.20 防火地域・準防火地域



今回の内容は、YouTubeで視聴できます。


1.前提事項


防火地域や準防火地域は、主として都市計画で指定され、火災を防ぐ目的のため、建築制限が行なわれる地域地区になります。

例えば、駅前などで人口・建物が密集している地域は、いったん火災が発生するとたくさんの人の命、財産などに害を与えます。そこで、建築基準法は、人や建物が集まる地域を特に指定して、建物を建てるときには、燃えにくい建材等を使用しなければならないことなどを内容とした規制を定めています。

防火地域・準防火地域内の規制については、地域と建築物の種類ごとの規制をしています。
そこで、まずは、地域と建築物の種類を確認します。

*防火地域が最も建築物が密集している地域になります。下に行くほど密集度は下がっていきます。
例えば、防火地域としては、都市部の駅前の商店街など。準防火地域としては、都市部の住宅街などになりますが、防火地域の周辺エリアになります。


古河市の場合

防火地域 古河駅周辺の商業地域
準防火地域 古河駅周辺の商業地域、近隣商業地域の一部及び古河駅東部地区の近隣商業地域


*技術的基準適合建築物とは?

木造であっても、防火性能が高くつくられている建築物を指します。

「技術的基準適合建築物」の基準というものがあります。

・外壁と軒裏を防火構造とする
・屋根を不燃材料でふく
・外壁の開口部に防火戸を設置する
・木造の柱・梁は一定以上の太さとする、または石膏ボードなどで覆う

以上の基準を満たす建築物が、技術的基準適合建築物です。


2.建築物の規制(建築基準法第61条)


「防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ二メートル以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。」

上記「政令で定める技術的基準」としては、建築物が所在する地域(防火地域か、準防火地域か)とその建築物の規模の関係によって、3つの段階の規制が予定されています。

*耐火建築物相当とは、耐火建築物、耐火建築物に相当する一定の基準に適合している建築物(延焼防止建築物)を指します。

*準耐火建築物とは、準耐火建築物、準耐火建築物に相当する一定の基準に適合している建築物(準延焼防止建築物)を指します。

*1500㎡のイメージとしては、テニスコート6面分程度の面積です。


防火地域での建築制限


*色がはみ出している部分は、「超える」ことを表現しています。


準防火地域での建築制限



平成28年問題18

建築基準法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 防火地域にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。

2 高さ30メートルの建築物には、原則として非常用の昇降機を設けなければならない。

3 準防火地域内においては、延べ面積が2,000平方メートルの共同住宅は準耐火建築物としなければならない。

4 延べ面積が1,000平方メートルを超える耐火建築物は、防火上有効な構造の防火壁によって有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000平方メートル以内としなければならない。



解説

選択肢3は、誤りです。
準防火地域内においては、延べ面積1500㎡超の建築物は、耐火建築物相当にする必要があります。


3.その他の制限(建築基準法第62条から第64条)


(屋根)
第62条 防火地域又は準防火地域内の建築物の屋根の構造は、市街地における火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関して建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

(隣地境界線に接する外壁)
第63条 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。

(看板等の防火措置)
第64条 防火地域内にある看板、広告塔、装飾塔その他これらに類する工作物で、建築物の屋上に設けるもの又は高さ三メートルを超えるものは、その主要な部分を不燃材料で造り、又は覆わなければならない。


*耐火構造とは、耐火性能のことで、通常の火災が終了するまで、建築物の倒壊や延焼を防止するために必要な性能を指します。

ちなみに、防火構造とは、防火性能のことで、周囲で発生する通常の火災による延焼を抑制するために必要な性能を指します。

*民法では、境界線から50cm以上離して建築しなければならない、ということになっています。しかし、建築基準法では、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができるとして、特別な規定を置いています。こちらの建築基準法の方を優先します。

ここでの試験でのポイントは、共通の制限と個別の制限があり、その区別をしっかりと理解できていることになります。
看板等の規制のみ、防火地域での規制になります。準防火地域での規制はありません。


平成15年問題20

防火地域内において、地階を除く階数が5(高さ25m)、延べ面積が800㎡で共同住宅の用途に供する鉄筋コンクリート造の建築物で、その外壁が耐火構造であるものを建築しようとする場合に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 当該建築物は、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によって有効に区画しなければならない。

2 当該建築物について確認をする場合は、建築主事又は指定確認検査機関は、建築物の工事施工地又は所在地を管轄する消防長又は消防署長へ通知しなければならない。

3 当該建築物には、安全上支障がない場合を除き、非常用の昇降機を設けなければならない。

4 当該建築物は、外壁を隣地境界線に接して設けることができる。




解説

選択肢4は、正しいです。
防火地域または準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができます(建築基準法第63条)。
同じような問題が、平成28年問題18でも出題されています。


令和3年10月問題17

建築基準法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 居室の内装の仕上げには、ホルムアルデヒドを発散させる建築材料を使用することが認められていない。

2 4階建ての共同住宅の敷地内には、避難階に設けた屋外への出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が2m以上の通路を設けなければならない。

3 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が防火構造であるものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。

4 建築主は、3階建ての木造の共同住宅を新築する場合において、特定行政庁が、安全上、防火上及び避難上支障がないと認めたときは、検査済証の交付を受ける前においても、仮に、当該共同住宅を使用することができる。




解説

選択肢3は、誤りです。
防火構造ではなく、耐火構造です。正しくは、「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造であるものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。」となります。


令和元年問題17

建築基準法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 特定行政庁は、緊急の必要がある場合においては、建築基準法の規定に違反した建築物の所有者等に対して、仮に、当該建築物の使用禁止又は使用制限の命令をすることができる。

2 地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができ、当該区域内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは当該条例で定めることとされている。

3 防火地域内にある看板で建築物の屋上に設けるものは、その主要な部分を不燃材料で造り、又はおおわなければならない。

4 共同住宅の住戸には、非常用の照明装置を設けなければならない。




解説

選択肢3は、正しいです。
防火地域内にある看板又は広告塔などの工作物で、建築物の屋上に設けるもの又は高さ3mを超えるものは、主要部分を不燃材料で造り、又は覆う必要があります(建築基準法第64条)。


4.建築物が防火地域等の内外にわたる場合(建築基準法第65条)


第1項
建築物が防火地域又は準防火地域とこれらの地域として指定されていない区域にわたる場合においては、その全部についてそれぞれ防火地域又は準防火地域内の建築物に関する規定が適用されます。
但し、その建築物が防火地域又は準防火地域外において防火壁で区画されている場合においては、その防火壁外の部分については、この限りではありません。

第2項
建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合においては、その全部について防火地域内の建築物に関する規定が適用されます。
但し、建築物が防火地域外において防火壁で区画されている場合においては、その防火壁外の部分については、準防火地域内の建築物に関する規定が適用されます。

上記のように、原則として、最も厳しい地域の規制が適用されるのはどうしてか?

燃えやすい素材で建物をつくると、防火地域の方へも燃え移っていくからです。


令和2年12月問題17

建築基準法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合においては、その全部について、敷地の属する面積が大きい方の地域内の建築物に関する規定を適用する。

2 倉庫の用途に供する建築物で、その用途に供する3階以上の部分の床面積の合計が500㎡であるものは、耐火建築物としなければならない。

3 高さ25mの建築物には、周囲の状況によって安全上支障がない場合を除き、有効に避雷設備を設けなければならない。

4 高さ1m以下の階段の部分には、手すりを設けなくてもよい。




解説

選択肢1は、誤りです。
建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合、その全部について防火地域内の建築物に関する規定が適用されます(建築基準法第65条第2項本文)。
選択肢では、「敷地の属する面積が大きい方の地域」に関するルールが適用されるとありますが、この点が誤りです。


平成16年問題20

建築基準法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 建築物の敷地が第一種住居地域と近隣商業地域にわたる場合、当該敷地の過半が近隣商業地域であるときは、その用途について特定行政庁の許可を受けなくとも、カラオケボックスを建築することができる。

2 建築物が第二種低層住居専用地域と第一種住居地域にわたる場合、当該建築物の敷地の過半が第一種住居地域であるときは、北側斜線制限が適用されることはない。

3 建築物の敷地が、都市計画により定められた建築物の容積率の限度が異なる地域にまたがる場合、建築物が一方の地域内のみに建築される場合であっても、その容積率の限度は、それぞれの地域に属する敷地の部分の割合に応じて按分計算により算出された数値となる。

4 建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合、建築物が防火地域外で防火壁により区画されているときは、その防火壁外の部分については、準防火地域の規制に適合させればよい。





解説

選択肢4は、正しいです。
防火地域と準防火地域にわたる場合、建築物が防火地域外で防火壁により区画されているときは、その防火壁外の部分については、その区域の制限に従います(建築基準法第62条第2項但書)。よって、本選択肢では、準防火地域の規制に適合されればよいことになります。


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