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40点を目指す講義NO.12 建築基準法の全体像



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1.建築基準法の全体像

(1)建築基準法の目的

第1条(目的)
「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」

例えば、建築物に関する規制がない場合、どんな大きな建物でも木造で建築できてしまいます。しかし、地震や火事などの場合に、木造建築だと簡単に燃えてしまいます。そうなると、多くの人がお亡くなりになるというおそれがあります。このような事態を未然に防ぐため、建築基準法では、最低限の基準を定めているわけです。

(2)建築基準法の最低の基準の定め

大別すると、単体規定と集団指定の2つに分類できます。

単体規定とは、日本全国のどこでも適用される規定です。

集団規定とは、原則として、都市計画区域・準都市計画区域等の中だけで適用される規定です。ですから、地域によってルールが異なります。

(3)建築確認

建築基準法の最低の基準の定めは、建築にあたり、予め建築確認を受けてもらう形になっています。
というのは、きちんと守ってもらう必要があるからです。

(4)建築協定

建築基準法の最低の基準の定め以外に、建築協定というものがあります。
これは、地域の住民同士による建築規制になります。

建築基準法の体系図

2.建築基準法上の用語の定義(第2条)

(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨こ線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
二 特殊建築物 学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。
三 建築設備 建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう。
四 居室 居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。
五 主要構造部 壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。
六 延焼のおそれのある部分 隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が五百平方メートル以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線(ロにおいて「隣地境界線等」という。)から、一階にあつては三メートル以下、二階以上にあつては五メートル以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、次のイ又はロのいずれかに該当する部分を除く。
イ 防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分
ロ 建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、当該建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのないものとして国土交通大臣が定める部分
七 耐火構造 壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能(通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
七の二 準耐火構造 壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、準耐火性能(通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。第九号の三ロにおいて同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
八 防火構造 建築物の外壁又は軒裏の構造のうち、防火性能(建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼を抑制するために当該外壁又は軒裏に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄網モルタル塗、しつくい塗その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
九 不燃材料 建築材料のうち、不燃性能(通常の火災時における火熱により燃焼しないことその他の政令で定める性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
九の二 耐火建築物 次に掲げる基準に適合する建築物をいう。
イ その主要構造部が(1)又は(2)のいずれかに該当すること。
(1) 耐火構造であること。
(2) 次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあつては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。
(i) 当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
(ii) 当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。
九の三 準耐火建築物 耐火建築物以外の建築物で、イ又はロのいずれかに該当し、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロに規定する防火設備を有するものをいう。
イ 主要構造部を準耐火構造としたもの
ロ イに掲げる建築物以外の建築物であつて、イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの
十 設計 建築士法第二条第六項に規定する設計をいう。
十一 工事監理者 建築士法第二条第八項に規定する工事監理をする者をいう。
十二 設計図書 建築物、その敷地又は第八十八条第一項から第三項までに規定する工作物に関する工事用の図面(現寸図その他これに類するものを除く。)及び仕様書をいう。
十三 建築 建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することをいう。
十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
十五 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。
十六 建築主 建築物に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。
十七 設計者 その者の責任において、設計図書を作成した者をいい、建築士法第二十条の二第三項又は第二十条の三第三項の規定により建築物が構造関係規定(同法第二十条の二第二項に規定する構造関係規定をいう。第五条の六第二項及び第六条第三項第二号において同じ。)又は設備関係規定(同法第二十条の三第二項に規定する設備関係規定をいう。第五条の六第三項及び第六条第三項第三号において同じ。)に適合することを確認した構造設計一級建築士(同法第十条の三第四項に規定する構造設計一級建築士をいう。第五条の六第二項及び第六条第三項第二号において同じ。)又は設備設計一級建築士(同法第十条の三第四項に規定する設備設計一級建築士をいう。第五条の六第三項及び第六条第三項第三号において同じ。)を含むものとする。
十八 工事施工者 建築物、その敷地若しくは第八十八条第一項から第三項までに規定する工作物に関する工事の請負人又は請負契約によらないで自らこれらの工事をする者をいう。
十九 都市計画 都市計画法第四条第一項に規定する都市計画をいう。
二十 都市計画区域又は準都市計画区域 それぞれ、都市計画法第四条第二項に規定する都市計画区域又は準都市計画区域をいう。
二十一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域、特別用途地区、特定用途制限地域、特例容積率適用地区、高層住居誘導地区、高度地区、高度利用地区、特定街区、都市再生特別地区、居住環境向上用途誘導地区、特定用途誘導地区、防火地域、準防火地域、特定防災街区整備地区又は景観地区 それぞれ、都市計画法第八条第一項第一号から第六号までに掲げる第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域、特別用途地区、特定用途制限地域、特例容積率適用地区、高層住居誘導地区、高度地区、高度利用地区、特定街区、都市再生特別地区、居住環境向上用途誘導地区、特定用途誘導地区、防火地域、準防火地域、特定防災街区整備地区又は景観地区をいう。
二十二 地区計画 都市計画法第十二条の四第一項第一号に掲げる地区計画をいう。
二十三 地区整備計画 都市計画法第十二条の五第二項第一号に掲げる地区整備計画をいう。
二十四 防災街区整備地区計画 都市計画法第十二条の四第一項第二号に掲げる防災街区整備地区計画をいう。
二十五 特定建築物地区整備計画 密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(以下「密集市街地整備法」という。)第三十二条第二項第一号に規定する特定建築物地区整備計画をいう。
二十六 防災街区整備地区整備計画 密集市街地整備法第三十二条第二項第二号に規定する防災街区整備地区整備計画をいう。
二十七 歴史的風致維持向上地区計画 都市計画法第十二条の四第一項第三号に掲げる歴史的風致維持向上地区計画をいう。
二十八 歴史的風致維持向上地区整備計画 地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(以下「地域歴史的風致法」という。)第三十一条第二項第一号に規定する歴史的風致維持向上地区整備計画をいう。
二十九 沿道地区計画 都市計画法第十二条の四第一項第四号に掲げる沿道地区計画をいう。
三十 沿道地区整備計画 幹線道路の沿道の整備に関する法律(以下「沿道整備法」という。)第九条第二項第一号に掲げる沿道地区整備計画をいう。
三十一 集落地区計画 都市計画法第十二条の四第一項第五号に掲げる集落地区計画をいう。
三十二 集落地区整備計画 集落地域整備法第五条第三項に規定する集落地区整備計画をいう。
三十三 地区計画等 都市計画法第四条第九項に規定する地区計画等をいう。
三十四 プログラム 電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。
三十五 特定行政庁 建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。ただし、第九十七条の二第一項又は第九十七条の三第一項の規定により建築主事を置く市町村の区域内の政令で定める建築物については、都道府県知事とする。

大規模の修繕について

例えば、主要構造部の1つである屋根を補修する際に、屋根面積の50%を超える場合。


3.建築基準法の適用除外(第3条)

(1)文化財等

昔からある重要文化財等について、建築基準法の適用を除外(建築基準法第3条第1項)するのは、専ら文化遺産としての特殊性を考慮するためのものです。

第3条(適用の除外)
この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 文化財保護法の規定によつて国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建築物
二 旧重要美術品等の保存に関する法律の規定によつて重要美術品等として認定された建築物
三 文化財保護法第百八十二条第二項の条例その他の条例の定めるところにより現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物(次号において「保存建築物」という。)であつて、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定したもの
四 第一号若しくは第二号に掲げる建築物又は保存建築物であつたものの原形を再現する建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得てその原形の再現がやむを得ないと認めたもの

先ほど、建築物に関する規制がない場合、どんな大きな建物でも木造で建築できてしまい、万が一、火事があったら、多くの人が亡くなる可能性があると言いました。しかし、重要文化財などは、木造で大きな建物であることが多く、もし建築基準法の適用をしてしまうと、重要文化財としての価値がなくなってしまいます。

過去問 平成11年問題20-4

(2)既存不適格建築物

建築基準法および同法に基づく命令・条例の施行や適用の際にすでに立っている建築物(工事中の建築物を含む)について、新たな改正法令にマッチするように強制することは無理があることから、これも適用除外になります。

但し、その後に、建替、増築、改築、移転、大規模の修繕、大規模の模様替を行う場合は、新しい規定に従う必要があります(建築基準法第3条第3項第3号)。

過去問 平成24年問題18-1


平成11年問題20

建築基準法の確認に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1.木造3階建て、延べ面積が300㎡の建築物の建築をしようとする場合は、建築確認を受ける必要がある。

2.鉄筋コンクリート造平屋建て、延べ面積が300㎡の建築物の建築をしようとする場合は、建築確認を受ける必要がある。

3.自己の居住の用に供している建築物の用途を変更して共同住宅(その床面積の合計300㎡)にしようとする場合は、建築確認を受ける必要がない。

4.文化財保護法の規定によって重要文化財として仮指定された建築物の大規模の修繕をしようとする場合は、建築確認を受ける必要がない。


解説
選択肢4は、〇
建築基準法第3条第1項第1号
適用除外に1つとして、「文化財保護法の規定によつて国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建築物」が含まれています。
同じような問題が、平成14年問題21-3でも出題されています。


平成24年問題18

建築基準法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.建築基準法の改正により、現に存する建築物が改正後の建築基準法の規定に適合しなくなった場合、当該建築物は違反建築物となり、速やかに改正後の建築基準法の規定に適合させなければならない。

2.事務所の用途に供する建築物を、飲食店(その床面積の合計250㎡)に用途変更する場合、建築主事又は指定確認検査機関の確認を受けなければならない。

3.住宅の居室には、原則として、換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、25分の1以上としなければならない。

4.建築主事は、建築主から建築物の確認の申請を受けた場合において、申請に係る建築物の計画が建築基準法令の規定に適合しているかを審査すれば足り、都市計画法等の建築基準法以外の法律の規定に適合しているかは審査の対象外である。


解説

選択肢1は、✖
建築基準法の施行や適用の際にすでに立っている建築物(既存不適合建築物)については、新たな改正法令にマッチするように強制することは無理があることから、改正後の規定は、適用除外になります(建築基準法第3条第2項)。



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