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40点を目指す講義NO.14 建築基準法の集団規定



今回のテーマの内容をYouTubeで視聴できます。


1.集団規定とは

集団規定は、適切な街づくりをするための、建物と市街地における周辺の環境との関係に関するルールになります。

では、どうして集団規定が必要となるのかと言うと、建築物は都市を形成する大きな要素になります。ですから、建築物は、周辺の環境も考慮して建てる必要があるからです。

集団規定は、適切な街づくりをするための、建物と市街地における周辺の環境との関係に関するルールになりますから、その適用があるのは、特定のエリアに限られています。

原則となるエリアとしては、都市計画区域・準都市計画区域内等になります(建築基準法第41条の2)。

都市計画法において、日本の国土は大きく3つに分けられます。

例外となるエリアとしては、都道府県知事が指定する区域内になります(建築基準法第68条の9)。

ちなみに、単体規定は、防火、耐震、衛生等の観点から、日本全国のどこでも適用される規定です。
そして、単体規定の特徴として、単体である建物自体に関する建物の安全性等を確保するためのルールであるということです。


2.用途制限

用途制限とは、それぞれの用途地域にマッチした建築物を建ててもらうために、建築物の用途(利用目的)に制限をかけることです。

用途制限の一覧表

この一覧表を見た人は、ほとんどの人が面食らってパスしたくなると思います。
しかし、合格するには、ここの部分を効率よく覚えて得点源にする必要があります。

覚え方としては、いろいろな工夫が従来から言われています。ポイントは、主に4つあります。

①建築物のイメージや用途地域のイメージから考えていくと覚えやすい

例えば、病院は、いろいろな場所から来て、多くの人が出入りし、また、救急病院であれば、ピーポーピーポーとサイレンを鳴らす救急車が頻繁に行きかうことになります。
このような病院は、閑静な住宅街には馴染みません。
なので、低層住居専用地域、田園住居地域では、病院は自由に建築はできません。

また、病気を治す病院は、環境上好ましくない工業地域、工業専用地域では、自由に建築はできません(建築基準法第48条、別表第2)。

なお、医療機関には、病院の他に診療所(一般的に、●●医院とか、●●クリニックなど)があります。

病院と診療所の違いは、ベッド数の違いです。

病院は、ベッド数が20床以上のものを指します。

診療所は、ベッド数が19床以下のものを指します。

②特徴的なものに注目すると覚えやすい

・すべての用途地域でつくることができるもの

⇨宗教施設(神社、寺院、教会等)
⇨保育所
⇨公衆浴場
⇨診療所
⇨巡査派出所(交番)
⇨老人福祉センター 老人の相談に応じたり、レクリエーションや交流の場を提供
児童厚生施設(児童館など)
など

これらは、暮らしに必要な建築物であることから、すべての用途地域でつくることができることになっています。

・ほとんどの種類の建築物をつくることができる地域

⇨商業地域、準工業地域

この場合の覚えるコツですが、基本的に建築できることになるので、例外である建築できないものから覚えることです。
例外としては、商業地域では、危険性が大きいか、または著しく環境を悪化させるおそれがある工場は建築できません。また、準工業地域では、個室付浴場業に係る公衆浴場(ソープランド)、危険性が大きいか、または著しく環境を悪化させるおそれがある工場は建築できません。

③共通のものはまとめると覚えやすい

・住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿

・兼用住宅のうち店舗・事務所等の部分が一定規模以下のもの
 ⇒店舗でも住宅と兼用であれば一定規模以下のものであれば建築できます。

・老人ホーム、障害者のための福祉ホーム等

・図書館等 ⇦静かな場所で住宅の近くにあるとよい施設なので、住宅とセット

以上は、人が住むための建築物であるということで、同じ規制(工業専用地域以外の用途地域でつくることができるもの)になっています。
ここで注意すべきは、人が住むための建築物である住宅等について、環境を悪化させるおそれのある工場を建てることが許された工業地域でも建築ができるという点です。ここの部分は、感覚的に違和感があるところなので、注意して覚えるようにしてください。

また

病院と大学・高等専門学校・専修学校は、同じ規制になっています。
というのは、大学・高等専門学校・専修学校は病院と同じようにいろいろなところから多くの人が出入りするところだからです。また、病院は救急車のサイレンが騒がしいし、大学・高等専門学校・専修学校は、わいわい騒ぎ、騒がしいという点でも同じです。

ちなみに、学校というくくりで考えると、大学・高等専門学校・専修学校以外の小学校、中学校、高校についてはどうなのか。

この点、小学校、中学校、高校は、基本的に児童が通うところであることから、自宅の近くにあるとよいということで、大学・高等専門学校・専修学校とは異なり、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、田園住居地域でも建築できるようになっています。
なお、小学校、中学校、高校、大学・高等専門学校・専修学校のいずれも環境上好ましくない工業地域、工業専用地域では、自由に建築はできません。

④ごろ合わせだと覚えやすい

用途制限の一覧表


3.用途制限に関する留意事項

(1)例外的な建築許可(建築基準法第48条)

特定行政庁が許可をした場合には、禁止されている用途の建築物でも建築することができます。

(2)建築物の敷地が用途地域の内外にわたる場合の措置(建築基準法第91条)

建築物の敷地が規制の異なる複数の地域に跨る場合には、原則として、過半が属する敷地の規制に従わなければなりません。

例えば、建物(住宅)を建てようとする敷地(300㎡)が、工業地域と工業専用地域に跨っている場合を考えましょう。

工業地域 ➡ 住宅建築〇

工業専用地域 ➡ 住宅建築✖

過半が属する敷地(200㎡)が工業専用地域であれば、工業専用地域の規制に従うことになります。なので、住宅は建築✖

では、過半に属する敷地(200㎡)が工業専用地域になっているが、住宅を建てる場所が工業地域の敷地(100㎡)内であった場合は、住宅を建てることができるでしょうか。

これは建てることはできません。というのは、過半が属する敷地の規制に従うことになるからです。建物をどこのエリアに建てるかは問題になりません。重要なのは敷地です。


平成12年問題23

建築物の用途制限に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、特定行政庁の許可については考慮しないものとする。

1 病院は、工業地域、工業専用地域以外のすべての用途地域内において建築することができる。

2 老人ホームは、工業専用地域以外のすべての用途地域内において建築することができる。

3 図書館は、すべての用途地域内において建築することができる。

4 大学は、工業地域、工業専用地域以外のすべての用途地域内において建築することができる。

解説

選択肢1は、✖
病院は、低層住居専用地域、田園住居地域、工業地域、工業専用地域以外のすべての用途地域内において建築することができます。
例えば、病院は、いろいろな場所から来て、多くの人が出入りし、また、救急病院であれば、サイレンを鳴らす救急車が頻繁に行きかうことになります。
このような病院は、閑静な住宅街には馴染みません。
なので、低層住居専用地域、田園住居地域では、病院は自由に建築はできません。

選択肢2は、〇
ここで注意すべきは、人が住むための建築物である老人ホーム等について、環境を悪化させるおそれのある工場を建てることが許された工業地域でも建築が許されているという点です。ここの部分は、感覚的に違和感があるところなので、要注意です。

選択肢3は、✖
図書館は、原則として、工業専用地域においてのみ建築できない。
図書館は、静かな場所で住宅の近くにあるとよい施設ということで、住宅とセットになっています。

選択肢4は、✖
大学は、低層住居専用地域、田園住居地域、工業地域、工業専用地域以外のすべての用途地域内において建築することができます。
そして、病院と大学は、同じ規制になっています。
というのは、大学は病院と同じようにいろいろなところから多くの人が出入りするところだからです。


平成22年問題19

建築物の用途規制に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、用途地域以外の地域地区等の指定及び特定行政庁の許可は考慮しないものとする。

1 建築物の敷地が工業地域と工業専用地域にわたる場合において、当該敷地の過半が工業地域内であるときは、共同住宅を建築することができる。

2 準住居地域内においては、原動機を使用する自動車修理工場で作業場の床面積の合計が150㎡を超えないものを建築することができる。

3 近隣商業地域内において映画館を建築する場合は、客席の部分の床面積の合計が200㎡未満となるようにしなければならない。

4 第一種低層住居専用地域内においては、高等学校を建築することはできるが、高等専門学校を建築することはできない。

解説

選択肢1は、〇
工業地域   ➡ 共同住宅建築〇
工業専用地域 ➡ 共同住宅建築✖

2つの地域にまたがる場合、過半が属する敷地が工業地域であれば、工業地域の規制に従うことになります(建築基準法第91条)。なので、共同住宅は建築できます。

選択肢2は、〇
準住居地域内においては、原動機(モーター)を使用する自動車修理工場で、作業場の床面積の合計が150㎡を超えないものは建築することが可能です。

作業場の床面積の合計が150㎡以下の自動車修理工場(表の下段)

選択肢3は、✖
近隣商業地域内においては、映画館は建築可能です。床面積の規制はありません。

選択肢4は、〇
高等専門学校は、大学と同じ扱いです。
いろいろなところから多くの人(成人の者も相当数在籍する)が出入りするところで、イメージとしてワイワイ騒ぐようなところであることから、閑静な住宅街には馴染みません。なので、低層住居専用地域、田園住居地域では、高等専門学校は、自由に建築はできません。
これに対し、高等学校は、基本的に児童が通うところであることから、自宅の近くにあるとよいということで、大学・高等専門学校・専修学校とは異なり、第1種低層、第2種低層、田園住居地域でも建築できるようになっています。

国立高等専門学校機構のホームページより


平成29年問題19

建築基準法(以下この問において「法」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 都市計画区域又は準都市計画区域内における用途地域の指定のない区域内の建築物の建蔽率の上限値は、原則として、法で定めた数値のうち、特定行政庁が土地利用の状況等を考慮し当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て定めるものとなる。

2 第二種中高層住居専用地域内では、原則として、ホテル又は旅館を建築することができる。

3 幅員4m以上であり、法が施行された時点又は都市計画区域若しくは準都市計画区域に入った時点で現に存在する道は、特定行政庁の指定がない限り、法上の道路とはならない。

4 建築物の前面道路の幅員により制限される容積率について、前面道路が2つ以上ある場合には、これらの前面道路の幅員の最小の数値(12m未満の場合に限る。)を用いて算定する。

解説

選択肢2は、誤りです。

「ホテルハオーーークラ」 ということで、第2種中高層住居専用地域までは建築できません。よって、第二種中高層住居専用地域内では、原則として、ホテル又は旅館を建築することができません(建築基準法第48条、別表第2)。


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