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医学概論NO.9 ソーシャルワークを極める講座 循環器系



今回の内容は、YouTubeで視聴できます。


心身機能と身体構造の概要の続き


(5)循環器系


心臓の構造と循環器系について見ていきます。

循環器系とは、血管系リンパ管から成っています。
リンパ管は、静脈のバイパスのような働きをしています。


1)血管系


血管系とは、血液を身体全体に送るためのシステムです。
具体的には、心臓と、血管系である動脈、毛細血管、静脈の3つからなるシステムを指します。

動脈とは、心臓から末梢に向かう血液の通る血管を言います。

静脈とは、末梢から心臓に戻る血液の通る血管を言います。

毛細血管とは、動脈と静脈の間をつないでいる血管です。

循環には、体循環と肺循環がありますが、体循環では、血液は動脈を通り、全身の臓器(脳、肝臓、腎臓、胃、腸、筋肉、骨、皮膚など)に運ばれますが、そこの部分に毛細血管が存在します。
毛細血管では、細胞との間で、(酸素と栄養)、(二酸化炭素と老廃物)を交換します。
その後に静脈に繋がっていく形になります。

心臓から拍出された血液は、動脈→毛細血管→静脈の順で流れます。

循環とは、一巡りして、もとへ戻ることを繰り返すことを言います。
より具体的に言うと、循環は、体循環と肺動脈を繰り返すということになります。


このように血液が循環しているということは、実は、近代医学の大発見(ウイリアム・ハーベー 1628年の血液循環説「血液は心臓から出て、動脈経由で身体の各部を経て、静脈経由で再び心臓へ戻る」という説)でした。ここから近代医学が始まったと言われています。

では、それまではどのように考えられていたか?

ギリシャ時代から、「肝臓で血液が発生して人体各部に移動してそこで消費される。」と考えていました。

話を戻しますが、全身の循環システムについては、大別すると、体循環と肺循環があって、二重に循環をしています。

ここのところは、ネットとか、参考書の血液の循環図を見ながら、確認をして欲しいところになります。
私の方でも、簡略化した図を作成してみましたので、この図を見ながら確認してください。なお、この図はかなり簡略化したものですので、実際の心臓の構造は、参考書等で確認しておいてください。


まず、体循環は、血液が①左心室から始まり、そして、大動脈を通って、②全身を巡って③右心房に帰ってくる。

次に、肺循環は、血液が④右心室から始まって、肺動脈を通って、⑤肺(毛細血管)の方に行って、そして、肺静脈を通って、⑥左心房に帰ってくる。

ですので、簡単に言うと、体循環は、綺麗な血液、つまり酸素や養分を多く含んだ血液である動脈血(どうみゃくけつ)が全身を巡って、そして、汚れた血液、つまり二酸化炭素や不要物を多く含んだ血液である静脈血(じょうみゃくけつ)が帰ってくる。
これに対して、肺循環は、汚れた血液が肺を巡って、肺を巡ったことによって綺麗になった血液が、肺静脈を通り、心臓に帰ってくるということです。

まとめると、循環は、体循環と肺循環を繰り返すということになります。そして、体循環の目的は、全身の組織に酸素や栄養を届け、そして、二酸化炭素や老廃物を回収することです。
肺循環の目的は、二酸化炭素を身体の外に捨てて、酸素を身体の中に取り込むことです。

ここで注意を要するのは、基本的には、動脈には動脈血、静脈には静脈血が流れていますが、肺動脈・肺静脈は、これが逆になっております。ここの部分はひっかけ問題が出題されそうな部分になります。

肺動脈には静脈血が、肺静脈には動脈血が流れています。

これは、肺循環においては、まずは汚れた血液が肺に行き、肺で血液が綺麗になり、その綺麗になった血液が心臓に戻っていくからです。
図では、青色が静脈血、赤色が動脈血を表しています。


第33回第2問

心臓と血管の構造と機能に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 肺と右心房をつなぐのは、肺静脈である。

2 左心房と左心室の間には、大動脈弁がある。

3 血液は、左心室から大動脈へと流れる。

4 上大静脈と下大静脈は、左心房に開口する。

5 血液は、大動脈から肺に流れる。



解説

選択肢1は、誤りです。
肺静脈で繋がっているのは、肺と左心房です。


選択肢2は、誤りです。
左心房と左心室の間にあるのは、僧帽弁です。


選択肢3は、正しいです。
左心室から出た血液は、大動脈へと流れ、その後、全身の器官に動脈血を巡らせて大静脈に行き、右心房に辿り着きます。これを体循環といいます。


選択肢4は、誤りです。
下半身の血液を集める下大静脈と上半身の血液を集める上大静脈は、右心房に開口します。
自分の心臓のあたりを触りながら、きれいな血液は左、汚れた血液は右と覚えておきましょう。
同じような問題が、第29回第3問でも出題されています。


選択肢5は、誤りです。
血液は、肺動脈から肺に流れます。



第29回第3問の選択肢

心臓の正常解剖に関する問題で、「肺静脈の中の血液は静脈血である。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は誤りです。
肺循環においては、まずは汚れた血液が肺に行き、肺で血液が綺麗になり、その綺麗になった血液が心臓に戻っていくということになります。なので、肺動脈には静脈血が、肺静脈には動脈血が流れています。よって、この選択肢は誤りになります。

動脈 心臓から血液を送り出す血管

静脈 毛細血管から発生した静脈血を心臓に送るために使われる血管

ポイント 心臓から出る血管か、心臓に戻る血管か

心臓から血液を送る血管が動脈で、心臓に戻る血液を送る血管が静脈

動脈血 綺麗な血液、つまり酸素や養分を多く含んだ血液

静脈血 汚れた血液、つまり二酸化炭素や不要物を多く含んだ血液

ポイント 血液が、綺麗なのか、汚れているのか

綺麗な血液が動脈血で、汚れた血液が静脈血



第24回第2問の選択肢

人体の器官の構造と機能に関する問題で、「心臓から末梢に向かって血液を送り出す血管を動脈といい、静脈血は流れない。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は誤りです。
確かに、心臓から血液を送り出す血管を動脈と言います。しかし、肺動脈については、注意が必要で、全身から戻ってきた静脈血が流れています。
よって、動脈に静脈血は流れないとする部分は誤りになります。


第32回第1問の選択肢

人体の構造と機能に関する問題で、「肺でガス交換された血液は、肺動脈で心臓へと運ばれる。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は誤りです。
肺から心臓に行くのは肺静脈です。

では、もう一度、血液循環の順番を見ていきます。


順番としては、まず体循環として、心臓(①左心室)→大動脈(動脈は、心臓から血液を送り出す血管のことです。)→肺以外の②全身(脳、臓器、筋肉等)→末梢部毛細血管→大静脈(心臓へと血液を戻す血管のこと。これには、下半身の血液を集める下大静脈(かだいじょうみゃく)と上半身の血液を集める上大静脈(じょうだいじょうみゃく)があります。)→心臓(③右心房。ですから、全身を巡ってきた血液は、下大静脈と上大静脈を通じて右心房に戻ります。)。
で、ここからは肺循環になって、→心臓(④右心室)→肺動脈→⑤肺→肺静脈→心臓(⑥左心房)へということで体循環として戻るという流れになります。

簡単に言うと、血液は心臓によって加圧され、動脈を通じて全身へ送られる。毛細血管に達すると、細胞との間で栄養分等を交換し、静脈を経て心臓へと戻るわけです。


では、循環の仕方として、肺以外の循環と肺への循環の二重に循環しているのはなぜか?
要するに、肺を特別扱いしているわけですが、これはなぜか?

これは、肺で酸素を取り入れ、その後、身体に酸素を送るためです。
二重の循環ではなく、仮に直列の循環にすると、肺のところで、血液の勢いがなくなり、血液が止まってしまいます。ですから、血液が止まってしまわないために、直列ではなく、二重に循環させているわけです。

ちなみに、通常、静脈は青い。これに対し、動脈は赤いです。
ただ、注意を要するのは、肺静脈は、動脈血が通っているので、赤く、また、肺動脈は、静脈血が通っているので、青いという点もあわせて押さえておいてください。
さらに言うと、左心房と右心房、左心室と右心室の間は、それぞれ中隔(ちゅうかく)と呼ばれる壁で仕切られております。なぜこんな構造になっているのか?

疑問に思われると思いますが、これは、動脈血(どうみゃくけつ)と静脈血(じょうみゃくけつ)が交わらないようにするためです。
ちなみに、左心室の心筋は右心室の心筋の約3倍の厚さがあります。


2)心臓の構造


あと、心臓の構造について、心臓の弁についても確認しておきます。

心臓の大きさは、握りこぶし大の大きさです。重さは、250~300グラム程度です。ですから、リンゴ1個くらいの重さです。

心臓の位置は、左右の肺に挟まれて、身体の中心よりやや左側にあります。

心臓は、筋肉でできた袋状の器官です。

心臓の内部は、4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)に分けられています。
心臓には弁があって、この弁には、大別して、房室弁(ぼうしつべん)と動脈弁があります。


まず、房室弁は、左右で構造が異なります。
左房室弁には、左心房と左心室の間に二つの弁尖からなる僧帽弁があります。
右房室弁には、右心房と右心室の間に三つの弁尖からなる三尖弁があります。
僧帽弁や三尖弁は、血液の逆流を防いでいます。

次に、動脈弁には、左心室と繋がる大動脈弁と右心室と繋がる肺動脈弁があります。
大動脈弁や肺動脈弁は、血液の逆流を防いでいます。

心臓の弁の役割ですが、僧帽弁や三尖弁は心房と心室の間、大動脈弁や肺動脈弁は心室と動脈との間で血液の逆流を防ぐ役割を担っています。


第29回第3問の選択肢

心臓に関する問題で、「右心房と右心室の間の弁を僧帽弁という。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は誤りです。
右心房と右心室の間の弁は、僧帽弁ではなく、三尖弁になります。


3)冠状動脈


それから、冠状動脈についても確認しておきます。

心臓においては、心臓の栄養血管である、つまり心臓に栄養や酸素を与える冠動脈(冠状動脈)があります。
この冠状動脈が、大動脈起始部より分岐(ぶんき)して、右冠状動脈(みぎかんじょうどうみゃく)と左冠状動脈へと分かれ、心臓を取り囲むようにして位置しています。


そして、冠状動脈から心臓の筋肉に栄養を届けた血液は、今度は、冠状静脈に流れ込みます。このように冠状動脈が冠状静脈に流れて、最後には冠状静脈洞に行き着くわけです。
心臓を後ろから見た場合、心臓に栄養を届けた後の血液である静脈血が集まる冠状静脈洞(カンジョウジョウミャクドウ)が走行しているのが確認できます。
これが、今度は、右心房へと開口し、流入していきます。エンジ色の部分が、冠静脈洞が右心房へと流入する時の入口部分です。その後は、肺動脈を通って、肺に行き、綺麗な血液になるわけです。

心臓とか、血管のそれぞれの組織の部位については、ネットとか、参考書等のイラストを見るなどして、イメージできるようにしておいて下さい。


第29回第3問の選択肢

心臓に関する問題で、「冠状動脈は大動脈起始部より分岐する。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は正しいです。


第29回第3問の選択肢

心臓に関する問題で、「冠静脈洞は左心房に開口する。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は誤りです。
冠状静脈洞は、心臓を養った、老廃物等を含んだ血液である静脈血が集まることになりますので、静脈血として心臓に戻すことになります。ということは、右心房に流入するということになります。


4)心筋の刺激伝導系


次に、心筋の刺激伝導系について確認しておきます。

脈拍というのは、左心室から駆出(くしゅつ)される血液によって生じる動脈の拍動を指します。

そもそも心臓の拍動は、心臓内のペースメーカーのような働きをする心筋である洞結節で作られる電気信号によって自動的にコントロールされています。
洞結節では、1分間にビンビンと約70回、電気信号が作られています。
この電気信号が、心臓内の電気回路に伝わり、心臓をリズミカルに収縮させたり、拡張させたりしています。


そして、通常は、脈拍数=心拍数になります。

心拍数というのは、左心室から血液が駆出(くしゅつ)される回数になります。
しかし、末梢に十分な血液量が届かないと、心拍と脈拍との間に不一致が生じ、ここでは、心拍数が脈拍数よりも多くなるのですが、これを脈拍欠損と言います。

成人期の安静時の脈拍数の目安としては、1分間に60回から80回です。

1回の拍出量は、70~80ml程度になります。イメージとしては、ヤクルトが、65mlなので、一回の拍出で、ヤクルト一本分強の血液が拍出されるという感じになります。

なんらかの原因で心臓内の洞結節で作られる電気信号に異常が起きると徐脈や頻脈などの不整脈が発生します。

そして、徐脈(じょみゃく 脈が遅くなる不整脈)というのは、1分間に60回未満になることが目安になります。

徐脈の自覚症状としては、息切れやだるさ、足のむくみ、めまい・失神などがあります。

頻脈というのは、1分間に脈拍数が100回以上ということが目安になります。

頻脈の自覚症状としては、ドキドキする動悸や息切れ、もっと酷くなると、胸痛やめまい、失神などの症状があります。

なお、小児は、脈拍は、成人に比べて多く、高齢者は、成人に比べて少ないです。


創作問題

「成人期の安静時の脈拍の目安としては、1分間に100回から120回である。」〇か✖か。





この選択肢は誤りです。
成人期の安静時の目安として、1分間に60回から80回です。1分間に100回以上であれば、頻脈と判断してもよいでしょう。


5)リンパ管


リンパ管とは、組織からの老廃物の搬出を担う管を指しています。

組織からの老廃物の搬出は、多くは体循環の毛細血管と静脈によって行われます。しかし、一部はリンパ管によっても担われています。

毛細血管は、動脈と静脈の間をつなぎ、細胞との間で、(酸素と栄養)、(二酸化炭素と老廃物)を交換しますが、細胞から老廃物などを受け取った組織液の一部(10~20%)が血管に再吸収されずにリンパ管に流入します。

リンパ管は、静脈に絡みつく形で全身を巡っています。
各組織から発したリンパ管は、枝分かれと合流を繰り返しながら、最終的には心臓の近くで静脈に合流する形になっています。
リンパ管は、静脈のバイパスのような働きをしています。
リンパの流れを作り出しているのは、いろいろな臓器の動きや歩行などによる骨格筋運動などです。臓器の動き、筋肉の収縮・弛緩によるポンプ作用で心臓に戻りますが、安静状態ではその移動はほとんどありません。
リンパの流れを良くするためには、適度な運動やリンパマッサージが有効です。


リンパ管の途中には、多くのリンパ節があります。
リンパ節は、リンパの濾過器(フィルター)としての役目をしています。このリンパ節が、体内に侵入した異物や細菌の処理に関与しています。

では、リンパ節はどこになるのか。

・脇の下(腋窩部 えきかぶ)
・足の付け根(鼠径部)
・首の付け根(頸部)
・腹部
・骨盤部
など

例えば、風邪をひいた時などには、体内への侵入物の処理が活発に行われます。リンパ節には、白血球、とくにリンパ球が豊富に存在し、リンパ液の中の細菌やウイルス感染細胞などの異物をとらえ、貪食します。白血球だけに白衣をした医者のように細菌などの異物を退治してくれます。
これは、生体を守るための免疫機能の一種といえます。
細菌やウイルス感染細胞を攻撃することで、リンパ節は炎症を起こして腫れ上がります。




創作問題

「リンパ節には、赤血球、とくにリンパ球が豊富に存在し、リンパ液の中の細菌やウイルス感染細胞などの異物をとらえ、貪食する。」〇か✖か






この選択肢は誤りです。
リンパ節には、赤血球ではなく、白血球が存在するというのが正しいです。
赤血球の役割ですが、その大部分を占めるヘモグロビンは、肺から全身へと酸素を運搬したり、二酸化炭素の運搬に関与するというような役割を担っております。


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