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医学概論NO.7 ソーシャルワークを極める講座 消化器系



今回の内容は、YouTubeで視聴できます。


心身機能と身体構造の概要の続き

(3)消化器系

消化と吸収について見ていきます。

消化器は、消化管(直接消化に関わる口腔、咽頭⦅これは、結構長くて、鼻の奥の部分から食道に至るまでの食物や空気の通り道になります。⦆、食道⦅咽頭から胃をつなぐ管⦆、胃、小腸、大腸、肛門に至る約9mの長さに及ぶ部分)と消化液を分泌する肝臓、胆嚢、膵臓のグループに分けられます。

消化器

・食べ物が実際に通る消化管

・消化管に付随した肝臓、胆嚢、膵臓

からなる器官です。

国立研究開発法人国立がん研究センターのホームページより

食物を体内に取り込み、消化、吸収し、最終的には不要物を排泄するまでの役割をになう器官が消化器です。


①消化管


消化器のうち、まず消化管を見ていきます。

消化器のうち、食物や水分の通り道となる部分が消化管です。

消化管には、まず口腔(こうくう)があります。
口腔というのは、口の中です。
食物が口に入ると消化が始まるということになります。
口の中には、唾液腺があって、この唾液腺から出た唾液が出ます。
唾液は、口腔内を清潔に保つ役割があります。
また、唾液には、アミラーゼという消化酵素が含まれています。
このアミラーゼは、糖質(炭水化物)を分解します。

ちなみにこの唾液腺は、3つからなります。
耳の下にある耳下腺(じかせん)・あごのしたにある顎下腺(がっかせん)・下ベロのしたにある舌下腺(ぜっかせん)です。

厚生労働省のホームページより

高齢になると、唾液は出にくくなります。
唾液が減少すると、口腔内が乾燥するようになります。そして、口の中の細菌が増加し炎症を生じ、粘膜自体も脆弱となって傷付きやすく、感染しやすくなります。

なお、唾液を出しやすくするための唾液腺マッサージというものもありますので、興味のある方はググってみてください。


第32回第3問の選択肢

消化器の構造と機能に関する問題で、「唾液には、消化酵素は含まない。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は誤りです。
唾液には、アミラーゼという消化酵素が含まれています。このアミラーゼは、糖質(炭水化物)を分解します。
白米を長く咀嚼すると、甘い味がしませんか。これは、アミラーゼによりでんぷんが分解されることからきています。


②食道


消化管には、食道があります。
先ほども説明しましたが、食道は、のど(咽頭、喉頭)から胃をつなぐ管になります。
ちなみに、咽頭と喉頭を俗に「のど」と呼んでいます。


食道のとなりにあるのが、気管ですが、この食道(緑線部分)と気管(赤線部分)が隣り合わせになっています。

気管の入り口には、喉頭蓋(こうとうがい)という軟骨がありまして、嚥下、つまり食べ物を飲み込む際には、喉頭蓋が閉じ、気管への誤嚥を防いでいます。
食べ物や唾液などは、本来であれば食道に入ること、つまり嚥下が予定されているものですが、喉頭蓋がしっかりと閉じないと、誤って気管内に入ることがあります。これを誤嚥と言います。
誤嚥は、高齢者の肺炎の原因として大きな割合を占めるものになります。この場合の肺炎を誤嚥性肺炎と言います。
特に要介護高齢者は、複数の病気をもっていることが多く、栄養状態も良くないことから、誤嚥性肺炎などの感染症は重篤化しやすい状態にあります。

この誤嚥にならないようにする予防策が大事になってきます。
予防策としては、例えば、嚥下時に頸部を前屈させるということがあります。頚部を前屈させる姿勢が誤嚥になりにくい姿勢になります。ぐっと顎を引いて頚部を前屈させると喉頭蓋がぴょんっと閉まりやすいわけです。
逆に、誤嚥になりやすい姿勢としては、上を向いた姿勢です。上を向くと喉頭蓋が閉じにくくなるわけです。ですから、上を向いたような格好ですと、誤嚥になりやすいわけです。


第25回第3問の選択肢

人体の器官の構造と機能に関する問題で、「嚥下時には、喉頭蓋が開くことによって誤嚥を防止している。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は誤りです。
喉頭蓋は、気管の入り口にある軟骨になりますが、通常は、呼吸のために開いています。呼吸時に喉頭蓋が開いていて、気管から肺に酸素を送ったりしているわけです。しかし、食べ物などを嚥下する際は、この喉頭蓋は、ぴったりと閉じて誤嚥を防ぐ構造になっています。よって、嚥下時に喉頭蓋を開くとする選択肢は誤りになります。


③胃


次に、消化管には、胃があります。

国立研究開発法人国立がん研究センターのホームページより

胃は、横隔膜の下にあります。横隔膜は肺の下にある筋肉です。

胃の内側にある粘膜からは胃液が分泌されます。
この胃液は、胃酸を含んでいて、強酸性の消化液になります。胃液は、アルカリ性ではありません。
体調が悪くて、食べた物を戻してしまうことがある人は、思い出してください。胃から逆流してくると、酸っぱいものがでてきます。これが胃酸を含んだ強酸性の消化液です。胃酸は、とても強いパワーを持っていて食べた物をばらばらにして粥状液(かゆじょうえき)にしてしまいます。金属さえ溶かすほど強いといわれています。また、食べ物と同時に入ってきたウイルスや細菌の増殖をおさえたり、殺菌する「働き」があります。

*ここで、酸性やアルカリ性というのは何?と思われている方もいると思いますので、この点を深掘りしておきます。
酸性やアルカリ性は、水溶液(物質を水に溶かした液)の性質の名前になります。食酢(しょくず)や果汁のように、すっぱい味のものは酸性です。
草木(くさき)を燃やしたあとにできる灰を水に溶かした灰汁(あく はいのしるのこと)のように、苦い味のものはアルカリ性になります。

話を戻します。
胃液の成分ですが、主に粘液(ねんえき 胃の保護)、消化酵素であるペプシン(タンパク質の分解)、塩酸(胃酸のこと 殺菌作用)からなります。

胃酸は、食べ物の消化を助けたり、食べ物と一緒に入ってきたウイルスや細菌の増殖をおさえたり、殺菌する働きがあります。ただ、胃酸は、非常に強い酸性でパワーが強いので、胃粘膜もやられてしまいます。そこで、粘液で胃を保護する必要があるわけです。


この胃液によって、食塊(しょっかい 食べ物を口で噛み砕いて、食道から胃に入ってきた塊です。)をばらばら分解して、粥状液(かゆじょうえき)にして、十二指腸という小腸の入り口に送っていきます。
粥状については、「おかゆ」とか、「ヨーグルト」のような状態を思い浮かべてもらえばよろしいかと思います。


第32回第3問の選択肢

消化器の構造と機能に関する問題で、「胃粘膜からは、強アルカリ性の消化液が分泌される。」との内容の正誤が問われています。







この選択肢は誤りです。
胃の内側にある粘膜からは胃液が分泌されます。この胃液は、胃酸を含んでいて、強酸性の消化液になります。胃液は、アルカリ性ではありません。
ちなみに、胆汁や膵液は、アルカリ性の液体です。



第30回第2問の選択肢

人体の各器官に関する問題で、「胃は横隔膜の上にある。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は誤りです。
胃は横隔膜の下にあります。上ではありません。


④腸


それから、消化管の範疇に入る腸ですが、腸は、小腸と大腸に分けられます。

腸の長さ
・小腸  約6m
・大腸  約1.6m

小腸は、十二指腸、空腸、回腸の3つの部分に分けられます。

腸管は、口腔より、咽頭、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸の順序になっています。
難病情報センターのホームページより

十二指腸は、太さが約5センチ程度、長さは約25~30センチ程度です。ちょうど指を12本横に並べた程度の長さなので、この名前で呼ばれています。

小腸の役割は、消化・吸収で、消化・吸収を90%以上を行うという最重要部分になります。
小腸の粘膜(ねんまく)には、腸絨毛という無数の突起があり、ビロード〈やわかい布の一種〉の絨毯(じゅうたん)のようになっています。腸絨毛があることによって、表面積が大きくなり、より多くの栄養素を吸収できます。

小腸の中でも、消化・吸収をメインに行うのが空腸になります。
回腸は、免疫反応をメインに行っています。実は小腸は消化吸収を担うだけでなく、免疫反応を行う重要な器官でもあるのです。全身の免疫細胞のうち70%が腸に存在するとも言われています。
腸管には食物と一緒に細菌やウイルスが入ってきてしまいます。それらを退治するために免疫反応を起こす必要があるわけです。

ちなみに、空腸では平滑筋が発達しています。平滑筋が収縮することで内容物を運ぶ役割を担っています。平滑筋が発達しているため、空腸の中身はすぐに押し出されてしまって空っぽであることが多いんです。このような特徴から「空」腸という名前がつけられています。

では、十二指腸の役割は?

胃で消化した食べ物を胆汁や膵液という消化液と混ぜて空腸に運ぶ役割を果たしています。



一方で、大腸は、盲腸、結腸、直腸に分けられます。

国立研究開発法人国立がん研究センターのホームページより

大腸は、食べ物の最後の通り道になります。小腸に続いて、右下腹部から始まり、おなかの中をぐるりと大きく回って、肛門につながります。

大腸の役割としては、小腸のように消化作用はほとんどなくて、水分と電解質を吸収して、糞便(ふんべん)を形成し、これを肛門まで運搬し、排泄するのがその役割になっています。

なお、腸管である小腸でも水分を吸収しています。
小腸と大腸とで水分をどのくらい吸収しているのかについてですが、水分の大部分が小腸で、一部は大腸で吸収されます。
その結果、便中に残存して体外に失われる水分は、1日わずか100から200ml 程度という風に言われています。
要するに、小腸と大腸でほとんど水分の吸収が行われます。

なお、下痢の場合は、柔らかい糞便が肛門から出てきますが、大腸での水の再吸収が阻害されているためで、下痢は、脱水の原因になりますので、脱水にも気を付ける必要があります。


第32回第1問の選択肢

人体の構造と機能に関する問題で、「腸管は、口側より、空腸、回腸、十二指腸、大腸の順序である。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は誤りです。
腸管は、口側(くちがわ より口に近い側)より、まず小腸である十二指腸と空腸と回腸、それから大腸の順序になっています。選択肢では、十二指腸が3番目になっており、この点が誤りになります。



第30回第2問の選択肢

人体の各器官に関する問題で、「大腸は空腸と回腸に分けられる。」との内容の正誤が問われています。







この選択肢は誤りです。
大腸は、食べ物の最後の通り道です。小腸に続いて、右下腹部から始まり、おなかの中をぐるりと大きく時計回りに回って、肛門につながります。更に言うと、大腸は、小腸のあるところの外側にぐるりと取り囲んでおり、盲腸・結腸・直腸に分けられます。 選択肢にある空腸と回腸は小腸になります。小腸は十二指腸、空腸、回腸の3つの部分に分けられます。よって、この選択肢は誤りになります。

覚え方

小腸に十二指腸、空腸、回腸があることは、「ショートは12本空振りかい」

大腸に盲腸、結腸、直腸があることは、「大きく盲腸結んで直す」

というゴロで覚えてください。



第25回第3問の選択肢

人体の器官の構造と機能に関する問題で、「大腸は、腸絨毛(ちょうじゅうもう)によって栄養素を効率よく吸収している。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は誤りです。
小腸の粘膜(ねんまく)には、腸絨毛という無数の突起があり、ビロード〈やわかい布の一種〉の絨毯(じゅうたん)のようになっています。腸絨毛があることによって、表面積が大きくなり、より多くの栄養素を吸収できます。で、この腸絨毯によって栄養素を効率よく吸収しているのは、小腸になります。大腸は、主に水分や電解質を吸収します。ちなみに小腸でも水分は吸収されます。



第32回第3問の選択肢

消化器の構造と機能に関する問題で、「小腸は、水分を吸収しない。」との内容の正誤が問われています。







この選択肢は誤りです。
小腸でも水分を吸収しています。小腸だけでなく、大腸も水分を吸収します。小腸と大腸とで水分をどのくらい吸収しているのかについてですが、水分の大部分が小腸で、一部は大腸で吸収されます。



⑤肝臓


次に、消化器の一つである肝臓です。

肝臓は、体内で一番大きい臓器になります。

肝臓の機能としては、いろいろあります。
・胆汁の生成を行い、脂肪の消化・吸収を助けます。
・糖をエネルギーの源であるグリコーゲンとして蓄えたり、分解します。
・タンパク質や糖質の合成および分解をします。なお、タンパク質分解の際に生じるのが有害なアンモニアになります。
・解毒作用。つまり、アンモニアを尿素に変換し、解毒します(この解毒された尿素は、腎臓で濾し出されて尿として排出されます。)
など多種多様な役割を担っています。


⑥胆嚢


次に、消化器の一つである胆嚢です。

胆嚢は、肝臓の下にある臓器になります。

胆嚢は、肝臓と膵臓の間にある消化器官で、肝臓がつくる胆汁という消化液をためています。

難病情報センターのホームページより

胆嚢は、消化酵素である胆汁(たんじゅう)を一時貯めておく場所になります。
胆汁は、アルカリ性の液体です。

この胆汁の役割は、脂肪を吸収しやすい形に分解することです。

実は、肝臓はだらだらと一日中胆汁を生成しています。しかし、これだと食物がないときもだらだらと胆汁が流れるので、食物に十分な消化酵素が混ざらずに無駄に流れてしまいます。これでは無駄が多いわけです。そこで、何も食べてないときには胆汁は胆嚢の中に貯留され、食事をした時だけ、食物が十二指腸を通過する刺激によって、胆嚢が収縮し、十二指腸に胆汁が流れるようになっています。物凄く効率的にできていますね。
このように胆汁の出荷調整をしているのが胆嚢です。

この胆嚢の中に、胆石ができたりします。

では、どうして胆石ができるのか?

胆嚢は、食事の度に収縮と拡張を繰り返し、このようなタイミングで胆汁を送り出すことで、自分自身の内腔(ないこう 袋状の器官の内側の空間)の洗浄もしています。しかし、この収縮と拡張が十分に行われないと、胆汁が胆嚢内で渋滞します。そうすると、茶碗にたまった茶渋のように溜まることがあります。これが固まって、大きくなって、砂や石のようになって、これが「胆石」と呼ばれるわけです。


第32回第3問の選択肢

消化器の構造と機能に関する問題で、「胆汁は、胆のうで作られる。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は誤りです。
胆汁は、肝臓で作られます。肝臓で作られた胆汁が貯蔵されるのが、胆のうです。よって、この選択肢は誤りになります。



⑦膵臓

次に消化器の一つである膵臓です。

膵臓は、胃の裏の下側に位置する臓器です。

難病情報センターのホームページより

形は、菓子パンのコロネのような形をしています。
美味しんぼの人は、膵臓はコロネみたいな感じということで、これなら直ぐに覚えられますね。

さて、膵臓には、外分泌腺(がいぶんぴせん)と内分泌腺があります。

外分泌腺は、消化酵素を含む膵液を消化管腔(かんこう 実は、これは外部環境の延長とも言えるので、身体の外とみなされます。このことから外分泌腺として分類されます。)に分泌する腺のことです。
膵液は、アルカリ性です。
胃から十二指腸に入ってきたばかりの内容物は、強い胃酸のために酸性を示します。内容物が酸性のままでは小腸の消化に関係する消化酵素の働きが鈍ります。この消化酵素は、弱アルカリ性の環境でよく働くことから、アルカリ性の膵液によって中和しています。


内分泌腺は、血糖を下げるインスリンなどのホルモンを血液に分泌する腺になります。

内分泌腺は、インスリンなどを血液に分泌することの覚え方

インスリンは、「イン」なので、内分泌腺

では、まず外分泌腺の方から見ていきます。

膵臓は、膵液という消化酵素を生成しています。
この消化酵素ですが、主なものとしては、(1) アミラーゼ、(2) トリプシン、(3) リパーゼがあります。
エネルギー源になる栄養素として、糖質・タンパク質・脂質があり、これらを3大栄養素といいますが、この3大栄養素を何が分解するのかを確認しておきます。


アミラーゼは、糖質を分解する消化酵素です。


トリプシンは、タンパク質を分解する消化酵素です。


リパーゼは、脂肪を分解する消化酵素です。

覚え方


では、次に、内分泌腺を見ていきます。
膵臓には、内部にランゲルハンス島という小さな細胞の塊が散在しています。


ランゲルハンス島には、α細胞、β細胞などといった内分泌細胞が存在します。

α細胞では、グルカゴンというホルモンがつくられています。
グルカゴンには血液中の糖分を増やし、血糖値を上げる働きがあり、血糖値が低下すると分泌されます。

一方、β細胞からは、グルカゴンと反対の作用を持つインスリンが分泌されます。インスリンには血液中の糖分を減少させる働きがあり、食べすぎた時などにも血糖値が上がりすぎないように調整しています。

β細胞からインスリンが分泌されることの覚え方

βはギリシャ文字の2番目なので、同じく、あいうえおの2番目だということで、インスリンと覚えておきましょう。

α細胞は、グルカゴンの覚え方

「プラスαだから、グルになって血糖値を上げる」ということで覚えておきましょう。

このように、膵臓は、内部にランゲルハンス島という分泌組織を持っています。
ランゲルハンス島が、血糖値(血液中のブドウ糖、つまりグルコースの濃度)を上げるグルカゴンというホルモンと血糖値を下げるインスリンというホルモンを分泌しているわけです。

このホルモンは血液に放出されています。血液は身体の内側とみなされますので、内分泌腺と言います。

膵臓のホルモンのまとめ

ちなみに、血液中のブドウ糖を深掘りしておきます。
私たちが毎日の食事で摂取する糖質(ごはん、パン、お菓子、果物など)は、唾液や膵液、腸液に含まれる消化酵素によって、そのほとんどがブドウ糖となります。ブドウ糖は、身体のエネルギーの源です。

まずはブドウ糖を細胞(脳、筋肉、肝臓など)に取り込みます。
この糖を細胞に取り込むときにインスリンが必要となります。
インスリンが細胞の扉にくっついて、その扉を開けると、糖が細胞に入るという仕組みになっています。
細胞内に糖が入ると、細胞で糖を燃やして、これがエネルギーになります。

ところが、このインスリンが少なくなると、糖が細胞に取り込めなくなります。そうすると、栄養が届かなくなるので、身体が痩せてくるわけです。
糖尿病になる人は、糖尿病になるまでは肥満なんですが、糖尿病になると痩せるんですね。がりがりになります。糖尿病患者は、糖を細胞に取り込めないので、血液に糖が溜まってくる。血液に糖が留まり続けると、血管がやられてしまうわけです。

また、ホルモンというのは、身体のさまざまなはたらきを調節する化学物質になります。
ホルモンは、身体の外側・内側で環境の変化が起きても、身体のはたらきを常に同じになるように保つはたらきをしています。
このホルモンは血液によって全身に送られ、内臓の機能や身体の調子を整えるような、さまざまなはたらきをしています。
ホルモンが必要な時期に必要な量が作られることにより、身体のバランスは保たれているわけですが、多すぎたり少なすぎたりすると、さまざまな病気を引き起こします。


第32回第3問の選択肢

消化器の構造と機能に関する問題で、「膵臓には、内分泌腺と外分泌腺がある。」との内容の正誤が問われています。






これはその通りです。



第24回第2問の選択肢
人体の器官の構造と機能に関する問題で、「膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞は、インスリンを分泌する。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は誤りです。
血糖値を下げる作用のあるインスリンを分泌するのは、β細胞です。
α細胞は、血糖値を上げる作用のあるグルカゴンを分泌します。

覚え方としては、「プラスαだから、グルになって血糖値を上げる」と覚えておきましょう。


もう一度、整理すると、健康な人であれば、食事をすると血糖値が上昇して、これに対しては、すい臓からインスリンというホルモンが分泌されて、血糖値が過剰に上がり過ぎないように保たれています。
ところが、糖尿病の人は、このインスリンの分泌の量が少なかったり、インスリンの反応が悪かったりして、食後2時間経過しても、血糖値が下がらない状態が続きます。
血糖値が上昇したままだとどうなるかと言うと、細胞から有害な活性酸素が発生して、最終的には血管の動脈硬化を進行させます。その結果、血管壁(けっかんへき)、つまり、血管のかべが壊れて切れたり、詰まりやすくなったりと、危険な状態になるわけです。
これで、インスリンと糖尿病の関係が分かって頂けたと思います。
ちなみに、糖尿病の名付けの由来ですが、血中の糖の濃度がある程度高くなると、今度は尿の中にブドウ糖が漏れてくることがあるんですね、そのため、「糖尿病」と名づけられたということです。
この糖尿病は、内分泌疾患の代表的なものになります。
我が国の国民の国民病とも言われている生活習慣病と糖尿病は深い関りがあると言われています。なので、糖尿病の治療をされている方が非常に多いということがあります。社会福祉士、精神保健福祉士は、糖尿病の基本的なことを押さえておく必要があります。


⑧消化器疾患について


・肝炎

肝炎
肝臓に炎症が起きている肝炎の原因として、肝炎ウイルスに感染して肝臓が炎症する場合、またアルコールの長期摂取による場合が比較的よく見られます。

肝炎が持続すると、肝硬変(かんこうへん)、さらには肝がんへと進行するリスクがあります。なので、肝炎の治療は大事になってきます。

・便秘

とりわけ高齢者で課題となる便秘の原因については、やはり腸液の分泌量そのものが、加齢に伴う老化によって減少してくるということ、またとりわけ水分の摂取量そのものが少なくなることがあります。
例えば、夜間頻尿を押さえるために水分の摂取を控えてしまうということがあります。

・消化器のがん

消化器のがんは、症状が出たときには既にかなり進行していることが一般的には多いです。
何らかの検査でたまたま見つかった時にはがんは進行していないということはありますが、症状が出てから検査をする場合にはがんが進行していることが一般的です。

食道がんは、過度のアルコール摂取と喫煙が危険因子となります。

胃がんの原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が特に言われています。
ピロリ菌は、胃の粘膜に生息する細菌です。

日本における胃がんの原因の98%はピロリ菌関連とされており、日本人全体のピロリ菌感染率は約5割といわれています。

ピロリ菌は、金属も溶かすと言われている胃酸にも強く、胃酸があってもへっちゃらです。昔は、胃酸によってすべての菌が殺菌されるので、胃の中には菌はいないと考えられていましたが、このピロリ菌は例外だったわけです。このことが、30年くらい前から分かってきたようです。そして、このピロリ菌が胃がんの原因ではないかと考えられるようになります。


ピロリ菌は、胃酸により殺菌されません。このピロリ菌が、胃の粘膜にぐいぐい食い込んできます。そうすると、殺菌しようとして、さらに胃酸がでます。でも、胃酸ではピロリ菌は殺菌できません。そのうち、白血球が寄ってきます。白血球が異物をバクバク食べるわけですが、その際に炎症が起きます。これが胃炎です。そうすると、その部分がえぐれてきます。そして、もっと胃酸が出てきて、その部分を溶かしてしまって、胃潰瘍にもなります。人間の身体は、これを修復しようとして、細胞の増幅の作業に入っていきます。細胞の核の中にはDNAが入っていて、このDNAが細胞分裂を促していくことになります。その際に、DNAが正常に機能していればよいのですが、DNAに傷が付いたりすると、細胞の増幅が止まらなくなり、そこががんになり、胃がんになる。こういうメカニズムで、ピロリ菌が胃がんの原因だと言われるわけです。

最近の傾向として、胃がんの死亡率は低下しています。
その原因としては、ピロリ感染胃炎の除菌が保険適用になったことがあります。
保険適用になってから8年で約1000万人が除菌されたことにより、胃がん死亡者数は、2013年が48427人、2014年が47903人、2015年は46659人、2016年には45509人、2018年には44189人、2019年には42931人、2020年には42318人と減少しています。

大腸がんは、高脂肪食、高たんぱく食、低繊維食の欧米型食生活が危険因子になります。
脂肪の多い食物は、腸内で胆汁酸や腸内細菌が作用しあって発がん物質ができ、それが大腸の粘膜と長期にわたって接触するうちに粘膜が壊れていき、炎症が生じ、細胞が壊れていくことになりますが、その際、細胞の核にある二重らせんのDNAが細胞の再生をしていくことになります。通常は、適度に細胞が再生されて元通りになります。しかし、DNAが壊れて誤作動を起こすと、細胞の増殖に歯止めがきかなくなり、がんが発生します。
また、便秘と大腸がんには深い関わりがあります。大腸がんができやすい部位は約7割が肛門に近い直腸とS状結腸です。直腸とS状結腸は、便が長時間留まりやすい部位であることから、便が長く留まれば留まる程、発がん物質である便が直腸やS状結腸に長く貯留して、発がんの危険性が高まると考えられています。

国立研究開発法人国立がん研究センターのホームページより

ちなみに、厚生労働省による2022年(令和4年)の人口動態統計では、がんの主な部位別にみた死亡数をみると、女性については、大腸がんの死亡率が39.8%となっていて、がんのうち、大腸がんが第1位となっています。また、男性でも、第2位となっています。


第33回第4問

日本におけるがん(悪性新生物)に関する問題で、「近年の傾向として、胃がんの「死亡率」は低下している。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は、正しいです。
その原因としては、ピロリ感染胃炎の除菌が保険適用になったことがあります。



第35回第4問(改題)

次のうち、2022年(令和4年)における、がん(悪性新生物)の主な部位別にみた死亡数で女性の第1位として、正しいものを1つ選びなさい。
1 大腸がん
2 胃がん
3 膵臓がん
4 乳がん
5 肺がん




解説

選択肢1が正しいです。
厚生労働省による2022年(令和4年)の人口動態統計では、がんの主な部位別にみた死亡数をみると、女性については、大腸がんの死亡者が2万2989人(死亡率が39.8%)となっていて、がんのうち、大腸がんが第1位となっています。
女性は便秘の人が多いので、大腸がんになりやすいのではないかと思います。



⑨消化管の出血


消化管出血とは、口から肛門までの消化管のどこかで出血が起こった病態のことです。
消化管出血は、吐血と下血の2つに分けることができます。

・吐血

吐血は、上部消化管(食道・胃・十二指腸)で起こった出血が原因で起こりますが、食道から口腔を経て排出されるものを指します。

・下血

下血は、消化管のいずれの部位での出血でも起こりますが、排便時などに肛門から排出されるものを指します。

では、ここで、消化器のまとめをしておきます。

口から食べた食物(しょくもつ)は、食道を通って胃に溜まります。で、胃で細かく砕かれて分解(これを消化と呼びます。)しやすくされ、今度は、十二指腸などの小腸で消化され、栄養分が吸収されます。その後は、大腸でさらに水分が再吸収され、残りは便になって排泄されるというわけです。
これに関連する一連の臓器を「消化管」と言いますが、この消化管は、一本の管でできています。

それから、肝臓や膵臓では、胆汁や膵液と言った消化液というものが作られていて、この消化液が十二指腸へ送られ、ここで食物と消化液とが十二指腸で混じりあうという仕組みになっています。

で、食物からの栄養はどのように身体に吸収されていくのかということですが、食物は小腸で吸収されて、小腸の粘膜下に広く分布する毛細血管の中に流れ込みまして、それが栄養として役立っていくという仕組みになっています。
ただ、食物(でんぷん、たんぱく質、脂肪などの状態)のままでは分子が大きすぎて、小腸で吸収することができません。大きすぎて、毛細血管の中に入ることができません。栄養素が毛細血管の中に入るためには、食物の中の栄養素を「ブドウ糖」「アミノ酸」「遊離脂肪酸」といった小さい分子に分解して吸収する必要があります。この分解することを「消化」と呼んでいます。
ところが、栄養素が消化されるためには、化学反応をさせるための物質、つまり消化酵素が必要になってきます。この消化酵素こそが、膵臓で生成される膵液(すいえき)になります。
なお、肝臓で生成される胆汁は消化酵素を含みません。ここは勘違いしがちなので注意です。
胆汁は、消化する能力はないかわりに、消化を助けるはたらきをしています。
この「消化を助けるって? なに?」と思っている方がいると思いますので、深掘りしておきます。
そもそも栄養素が消化されるためには、水に溶ける必要があります。しかし、栄養分のうち、脂肪は水に溶けないんですね。そこで、胆汁の出番になります。胆汁は、脂肪を乳化(「乳化(エマルション:Emulsion)」とは、油や水分のように本来混ざり合わないものが均一に混ざり合う状態のことです。)して水に溶けやすくします。乳化されてはじめて膵液中のリパーゼが、水に溶けた脂肪を分解する、というしくみになっています。脂肪を直接分解するのはリパーゼですが、胆汁はその分解を助けているという関係にあります。

話を戻しますが、食物からの栄養の吸収には、この消化酵素が、食物が小腸に到達するまでに混ざりあう必要があるわけです。
以上が、消化器系のお話になります。


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