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40点を目指す講義NO.13 建築基準法単体規定



今回のテーマの内容をYouTubeで視聴できます。


1.単体規定

単体規定とは、防火、耐震、衛生等の観点から、日本全国のどこでも適用される規定です。
そして、単体規定の特徴として、単体である建物自体に関する建物の安全性等を確保するためのルールであるということがあります。
これに対し、集団規定は、適切な街づくりをするための、建物と周辺の環境との関係に関するルールであるという点に特徴があります。

単体規定はたくさんあるところ、ここでは、特に重要なものに絞って確認をします。


(1)構造耐力(建築基準法第20条)

建築物は、自重、積載荷重(せきさいかじゅう 床の上に置く物の重さ)、積雪荷重、風圧、土圧(どあつ 地盤内における土における圧力)及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものである必要があります。

そして、安全な構造のものであるための技術的基準があり、建築物は、同基準に適合するものでなければなりません。
また、①高さが60メートルを超える建築物、又は、②高さが60メートル以下の建築物のうち、一定規模のものは、一定の構造計算によって安全性が確かめられなければならないことになっています。


(2)大規模建築物の主要構造部(床、屋根、階段を除く 建築基準法第21条)


一 地階を除く階数が4以上である建築物
二 高さが16メートルを超える建築物
三 別表第一(い)欄(五)項又は(六)項に掲げる用途に供する特殊建築物(倉庫、自動車車庫、自動車修理工場等)で、高さが13メートルを超えるもの

一から三のいずれかに該当する建築物は、原則として、
・その主要構造部を通常火災終了時間(建築物の構造、建築設備及び用途に応じて通常の火災が消火の措置により終了するまでに通常要する時間をいう。)が経過するまでの間、当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために主要構造部に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること
・国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの等とすること
が必要です。

要するに、火災になっても、直ぐに倒壊や延焼をしないような性能が求められています。


(3)防火(建築基準法第25条、第26条)

これは、防火壁又は防火床の設置義務に関する規定です。
この規制の趣旨は、火災発生時に火が燃え広がることを防止し、大規模な延焼を防止するところにあります。

規制の内容

延べ面積が1000平方メートルを超える建築物については、

防火上有効な構造の防火壁又は防火床により有効に区画すること

各区画の床面積の合計をそれぞれ1000平方メートル以内としなければならない
⇒例えば、延べ面積が1400平方メートルの場合、各区画の床面積をそれぞれ1000平方メートル以内とする必要があるので、防火壁を使って、700平方メートルと700平方メートルとかに区画する必要があります。

国土交通省の資料を確認してください。
元々は、防火壁による縦切り区画のみでしたが、防火床による横切り区画が追加されています。

但し、例外があって、耐火建築物や準耐火建築物は除きます。というのは、耐火建築物や準耐火建築物は、元々耐火性の強い素材で出来ているからです。

2019年10月31日に、那覇にある首里城が火災で焼失しました。

正殿内部から発生した火災によりあっという間に9施設が焼失してしまいました。首里城は、世界文化遺産に登録されている重要文化財になります。ですから、建築基準法の適用がなく、防火に関する単体規定の適用がなかったわけです。このような事情から、あっという間に火が燃え広がって、正殿をはじめとする9施設が焼失してしまったということがありました。このようなエピソードも合わせて覚えておくと理解が深まると思います。


(4)居室の採光と換気(建築基準法第28条)

これは、居室の窓等の開口部の規定になります。

この規制の目的は、採光と換気になります。

採光と換気のために、居室には、床面積に対して、一定の割合以上の開口部を設けなければなりません。

居室とは、居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室を言います(建築基準法第2条第4項)。
要するに、人が長時間利用する可能性のある部屋のことです。
ですから、人が一時的に利用する部屋は居室扱いにはなりません。
例えば、廊下などは居室ではありません。

①採光のため(第1項)

床面積に対する一定割合以上は、住宅の居室であれば、1/7以上の窓その他の開口部の設置が必要です。
但し、一定以上の照度を確保できる照明器具を設置していれば、1/10以上に緩和できます。

なお、採光のための窓等は、実際に日光が当たることまでは求められません。
ですから、窓のすぐ横に塀があって、日光が部屋の中に差し込まなくても建築基準法違反にはなりません。

②換気のため(第2項)

床面積に対する一定割合以上は、原則として1/20以上の開口部(窓、換気口)の設置が必要です。
これは、建築材料に含まれる化学物質が原因となるシックハウス症候群を予防するための規制です。

これは、フード付換気口になります。


(5)石綿等の飛散等に対する衛生上の措置(建築基準法第28条の2、施行令20条の5)


これは、衛生上有害な物質である建築資材の使用に関する制限になります。

衛生上有害な物質の代表的なものが、耐火材や断熱材に利用される石綿(アスベスト)になります。それ以外にもクロルピリホス、ホルムアルデヒドがあります。
これらの物質は、いずれも空気汚染を引き起こし、健康に有害な影響を与えてしまうと言われています。
アスベスト被害によって、肺がやられます。肺がんのリスクが高まります。
クロルピリホス、ホルムアルデヒドでは、シックハウス症候群として、倦怠感 ・ めまい ・ 頭痛 ・ 湿疹 ・のどの痛み・ 呼吸器疾患 などの症状があらわれたりします。

規制の内容は、以下の通りです。

一 建築材料に石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定める物質(次号及び第三号において「石綿等」という。)を添加しないこと。
二 石綿等をあらかじめ添加した建築材料(石綿等を飛散又は発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを除く。)を使用しないこと。

また、居室を有する建築物については、以下の規制が追加されています。

三 居室を有する建築物にあつては、前二号に定めるもののほか、石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質(クロルピリホス、ホルムアルデヒド)の区分に応じ、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること。

クロルピリホスは、シロアリを駆除する目的で、従来は建築資材に使用されていました。しかし、クロルピリホスは特に人体への影響が強いということから、居室を有する建物では使用が禁止されています。

ホルムアルデヒドは、接着剤や合成樹脂の原料になっているものです。フローリングや天井、また家具にも広く使用されています。
このようにホルムアルデヒドは広く使用されているため、使用の禁止は現実的ではなく、居室を有する建物では使用を制限するという対策がとられています。

以上をまとめると以下の表の通りになります。


(6)中高層建築物(建築基準法第33条、第34条)


これは、建築設備の設置義務に関する規定です。

第33条第1項本文
「高さ20メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。」

避雷設備は、建物の屋上に立っている棒みたいな設備になります。

第34条第2項
「高さ31メートルをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)には、非常用の昇降機(エレベーター)を設けなければならない。」

昇降機の設置を義務付けるのは、はしご車が届かないような高所に消防隊を迅速に送り込むためです。
高さ31mという半端な数字になっているのは、建築基準法制定当時のはしご車のはしごの長さに由来しています。当時、一般的なはしご車のはしごの長さは、最大で30mだったようです。そこから人が手を伸ばして届く範囲が高さ31mだったとのことです。
要するに、外部から消防隊を送り込めるぎりぎりの高さが31mだったということです。
ですから、31mを超える場合は、非常用の昇降機の設置が義務付けられたということです。
以上のようなエピソードを絡めて覚えれば、暗記しやすいと思います。


(7)天井の高さ(施行令第21条第1項)


「居室の天井の高さは、2.1メートル以上でなければならない。」

では、天井の高さが異なる場合はどのようにすればよいのか?

「2 前項の天井の高さは、室の床面から測り、一室で天井の高さの異なる部分がある場合においては、その平均の高さによるものとする。」



平成25年問題17

建築基準法に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア 一室の居室で天井の高さが異なる部分がある場合、室の床面から天井の一番低い部分までの高さが2.1m以上でなければならない。

イ 3階建ての共同住宅の各階のバルコニーには、安全上必要な高さが1.1m以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。

ウ 石綿以外の物質で居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質は、ホルムアルデヒドのみである。

エ 高さが20mを超える建築物には原則として非常用の昇降機を設けなければならない。

1.一つ

2.二つ

3.三つ

4.四つ


解説

ウは、誤りです。
石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質には、ホルムアルデヒド(接着剤)の他にも、クロルピリホス(シロアリ駆除剤)があります(建築基準法28条の2、令20条の5)。

エは、誤りです。
非常用の昇降機を設置することが義務付けられるのは、高さが20mではなく31mを超える建築物になります(建築基準法34条2項)。
ちなみに、高さ20mを超える建築物に要求されるのは、避雷設備の設置になります(建築基準法33条)。これとのひっかけ問題です。


令和2年10月問題17

建築基準法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.階数が2で延べ面積が200㎡の鉄骨造の共同住宅の大規模の修繕をしようとする場合、建築主は、当該工事に着手する前に、確認済証の交付を受けなければならない。

2.居室の天井の高さは、一室で天井の高さの異なる部分がある場合、室の床面から天井の最も低い部分までの高さを2.1m以上としなければならない。

3.延べ面積が1,000㎡を超える準耐火建築物は、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によって有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000㎡以内としなければならない。

4.高さ30mの建築物には、非常用の昇降機を設けなければならない。


解説

選択肢2は、誤りです。
居室の天井の高さは、2.1m以上でなければなりません。そして、「一室で天井の高さの異なる部分がある場合においては、その平均の高さによる」ことになります(建築基準法施行令第21条)。

選択肢3は、誤りです。
建築物が耐火建築物又は準耐火建築物の場合は例外扱いで、防火壁等で区画する必要がありません(建築基準法第26条第1号)。

「延べ面積が千平方メートルを超える建築物は、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によつて有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ千平方メートル以内としなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。
一 耐火建築物又は準耐火建築物

選択肢4は、誤りです。
非常用の昇降機を設置することが義務付けられるのは、高さが30mではなく31mを超える建築物になります(建築基準法第34条第2項)。
同じような問題が、平成25年問題17でも出題されています。


平成16年問題21

建築基準法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.準防火地域内においては、延べ面積が1,200㎡の建築物は耐火建築物等としなければならない。

2.木造3階建て、延べ面積500㎡、高さ15mの一戸建て住宅について大規模の修繕をする場合は、建築確認を受ける必要はない。

3.特定行政庁は、仮設店舗について安全上、防火上及び衛生上支障がないと認める場合には、一定の場合を除き、1年以内の期間を定めてその建築を許可することができる。

4.居室を有する建築物は、住宅等の特定の用途に供する場合に限って、その居室内においてホルムアルデヒド及びクロルピリホスの発散による衛生上の支障がないよう、建築材料及び換気設備について一定の技術的基準に適合するものとしなければならない。


解説

選択肢4は、誤りです。
居室を有する全ての建築物は、ホルムアルデヒド及びクロルピリホスの発散による衛生上の支障がないよう建築材料及び換気設備について一定の技術的基準に適合させる必要があります(建築基準法第28条の2第3号)。選択肢にあるように、「住宅等の特定の用途に供する場合」に限られるわけではありません。


令和3年12月問題17

建築基準法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 居室の内装の仕上げには、ホルムアルデヒドを発散させる建築材料を使用することが認められていない。

2 4階建ての共同住宅の敷地内には、避難階に設けた屋外への出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が2m以上の通路を設けなければならない。

3 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が防火構造であるものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。

4 建築主は、3階建ての木造の共同住宅を新築する場合において、特定行政庁が、安全上、防火上及び避難上支障がないと認めたときは、検査済証の交付を受ける前においても、仮に、当該共同住宅を使用することができる。


解説

選択肢1は、✖
建築基準法は、アスベスト(石綿)やクロルピリホス(シロアリ駆除剤)、ホルムアルデヒド(接着剤)の使用を規制しています(建築基準法28条の2、令20条の5)。
このうち、アスベストはすべての建築物について、その使用が禁止されています。
クロルピリホスは、居室を有する建築物について、その使用自体が禁止されています(建築基準法28条の2、令20条の6)。
それに対し、ホルムアルデヒトについては、居室を有する建築物について、使用面積の規制というアプローチがとられており(令20条の7)、使用自体を禁止しているわけではありません。
本選択肢の「使用することが認められていない」とする点が誤りです。


令和3年12月問題17

建築基準法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1.4階建ての建築物の避難階以外の階を劇場の用途に供し、当該階に客席を有する場合には、当該階から避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段を設けなければならない。

2.床面積の合計が500㎡の映画館の用途に供する建築物を演芸場に用途変更する場合、建築主事又は指定確認検査機関の確認を受ける必要はない。

3.換気設備を設けていない居室には、換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して10分の1以上としなければならない。

4.延べ面積が800㎡の百貨店の階段の部分には、排煙設備を設けなくてもよい。


解説

選択肢3は、誤りです。
建築基準法28条2項では、「居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。」と規定されています。




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