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40点を目指す講義NO.15 建築物の敷地と道路の関係



今回の内容については、YouTubeで視聴できます。


1.建築基準法上の道路との接道義務


(1)接道義務

接道義務とは、建築物を建てる敷地は、原則として、建築基準法上の道路に2m以上の幅で接しなければならないということを言います(建築基準法第43条)。

通路がなく、建築物を建てられない場合

接道義務を満たし、建築物を建てられる場合


接道義務はなんのためにあるのか?

敷地内で火事が発生した場合、住んでいる人が道路を利用して他の場所に避難できるようにし、また、消防車が止まれる道路がないと消火活動ができないからです。

この接道義務があることから、接道義務を満たしていない敷地は、原則として建物を建てることができず、すでに建物がある場合は、増築や再建築ができないわけです。
よくあるのが、接道義務を満たしていないことから、袋地が売れなくて困っているとか、せっかく土地を相続しても、家を建てることができないとかというケースになります。


(2)建築基準法上の道路(建築基準法第42条)

建築基準法上の道路は、原則として、道路幅が4m以上必要になります(第1項)。なお、地下道は除きます。

原則として、道路幅が4m以上必要とされるのは、自動車や歩行者、自転車等が追い越したり、すれ違ったりするためです。

幅員4m以上の道路には5つの種類があります。

①道路法による道路(国道、都道府県道、市区町村道)

但し、自動車専用道路(例えば、高速道路)は、建築基準法上の道路であっても、接道義務の対象となる接する道路には該当しません。というのは、高速道路に避難しても危ないですから、役立たないということです。

②開発道路(都市計画等の開発許可などにより作られた道路)

例えば、広大な土地があって、その土地の開発をする際に、土地の右側の10区画と土地の左側の10区画の間を通っている道路のこと

③都市計画区域や準都市計画区域に指定された際に、既に存在していた道(建築基準法が施行された昭和25年より前からある道=既存道路)等

なお、既存道路は、一般的には公道ですが、私道の場合もあります。

④現在は道路ではなく計画段階であるが、都市計画法、道路法等で2年以内に道路をつくる事業が予定され、かつ特定行政庁(知事や市町村長)が指定したもの=計画道路

⑤ ①から④以外の私道であり、かつ敷地としての一定の基準に適合するもので、特定行政庁からその道路の位置指定(許可)を受けたもの=位置指定道路

以上が原則です。
しかし、幅員が4m以上なくても建築基準法上の道路となる例外があります(第2項)。これを「2項道路」とか、「みなし道路」と呼んでいます。

⑥幅員が4m未満の道路で、③の既存道路の場合で、すでに建築物が立ち並んでおり、特定行政庁が指定したもの

つまり、日本の国土は狭く、建築基準法が施行された当時は狭い道路が一般的でした。そのような狭い道路の周りにすでに建築物が立ち並んでいたとしても、特定行政庁が建築基準法上の道路であると指定したものであれば、2項道路として、建築基準法上の道路となるということです。建築基準法上の道路となるということは、幅員が4m未満の道路でも、敷地が2m以上の幅で接していれば、接道義務を満たし、建築物を建てることができるということになります。


(3)2項道路に接している敷地についての道路と敷地との境界線

接道義務の規定を設けた趣旨、つまり、敷地内で火事が発生した場合、住んでいる人が道路を利用して他の場所に避難できるようにし、また、消防車が止まれる道路がないと消火活動ができないことから、消火活動ができるような道路を確保したいということから、建築基準法上は、道路は4m以上あるのが理想であるとの前提があります。ですから、道路幅が4m未満の道路についても、将来的には、道路幅を4m以上にしたいと考えているわけです。

そこで、2項道路については、道路幅が4m未満であるので、2項道路に接している敷地に関しては、原則として、道路の中心線から水平距離2mの線が、その道路と敷地との境界線とみなされます。これを「後退距離(セットバック)」と言います。
この結果、道路の中心線から2m以内は、道路とみなされるので、自分の所有する土地であっても、敷地面積に含めることができず、建物を建築できません。


セットバック部分は、道路とみなされるので、建物の建築や塀の築造は認められません。
また、建蔽率や容積率の計算上、セットバック部分は、「敷地面積」に算入されず、180㎡として計算することになります。

では、例外的な場合として、道路の反対側が、川、崖、水路であった場合には、4m未満の道路の中心線から川側には道路をつくれません。では、どのようにして道路の境界線を引くのか。

このような場合でも、将来的には道路の幅を4m以上にしたいわけですが、川などにセットバックをすることはできないので、川などの境目から4m入ったところに境界線をもってくることになっています。



(4)接道義務その2

(1)の部分において、接道義務とは、建築物を建てる敷地は、原則として、建築基準法上の道路に2m以上の幅で接しなければならないということであると説明しました(建築基準法第43条)。

要するに接道義務を満たし、その敷地に建物を建てることができるためには、
①建築基準法上の道路であること
②上記道路に2m以上接していること

の2つの要件を満たす必要があります。

但し、これには例外があります。ここでは、この例外について説明します。

例外1

その敷地が幅員4m以上の道(これは、建築基準法上の道路ではない道を指しています。例えば、農道)に2m以上接し、利用者が少なく、特定行政庁が、交通上、安全上、防火上および衛生上支障がないとみとめるもの

要するに、建築基準法上の道路ではなくても、その敷地が幅員4m以上の道(これは、建築基準法上の道路ではない道を指しています。例えば、農道)に2m以上接し、利用者が少なく、特定行政庁が、交通上、安全上、防火上および衛生上支障がないとみとめるものは、例外的に、その敷地に建物を建ててもOKであるということです。
この場合には、建築審査会の同意は不要です。この場合には、道が幅員4m以上あるので、建築審査会の同意までは不要だと覚えておいてください。

例外2

建築基準法上の道路がその敷地から離れたところにあって、その敷地が建築基準法上の道路とは接していないが、避難という観点から、敷地の周囲に広い空き地を有する建築物その他一定の基準に適合する建築物で、特定行政庁が、交通上、安全上、防火上および衛生上支障がいないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの

例外1は、建築審査会の同意は不要ですが、例外2は、建築審査会の同意が必要です。


(5)接道義務その3 制限の付加

地方公共団体は、延べ面積が1000㎡超の大規模な建築物など一定の建築物の敷地が接する道路の幅については、避難又は通行の安全の目的を十分に達成することが困難であると認めるときは、条例で必要な制限を付加して、より厳しくできます(建築基準法第43条第3項)。
例えば、2mではなく「3m以上接することが必要である」と定めるとか。

なお、ここのところは、制限の付加なので、緩和ができません。


2.建築制限


(1)道路内の建築制限(建築基準法第44条)

道路は、人や車両が頻繁に通ります。なので、原則として、道路内に建物などの建築物を建築することはできません。

例えば、建物の庇が道路の部分にはみ出してるとか、塀が道路内に設置されているとか。このような建築物は、道路内の建築制限の規定に抵触します。


しかし、一定の例外があります。
通行の妨げにならない場合、一定の必要性がある場合には、例外が認められています。

道路内の建築制限の例外としては、4つあります。

①地盤面下に建築する建築物(第1号)

例えば、都会の駅の地下街、地下駐車場など

②公衆便所、巡査派出所、その他これらに類する公益上必要な建築物で、特定行政庁が、通行上支障がないと認めて、建築審査会の同意を得て許可したもの(第2号)

③地区計画の区域内の自動車専用道路又は特定高架道路等の上空又は路面下(ろめんか)に設ける建築物のうち、当該道路に係る地区計画の内容に適合し、かつ、政令で定める基準に適合するものであって、特定行政庁が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの(第3号)

例えば、トンネルの上にある建物、高架下にある飲み屋街など

④公共用歩廊(ほろう 例えば、アーケード)などの一定の建築物で、特定行政庁が、予め建築審査会の同意を得て、安全上、防火上および衛生上問題がないと認めて許可したもの(第4号、第2項)

例えば、商店街のアーケード(建物間を覆う屋根状の構造物)、歩道橋など

4つの例外の覚え方

商店街のアーケードを通り抜け、高架下の飲み屋街に行き、飲んだら公衆便所に行きたくなり、その後、駅の地下街を通り抜けて帰宅した。


(2)私道の変更または廃止の制限(建築基準法第45条)

私道とは、個人が所有する道路のことを言います。

私道であっても、所有者以外の人が利用している場合もあります。ですから、たとえ個人の所有する道路(私道)でも、勝手に道路以外のものにしたり、幅員を狭くするされたりすると道路を利用している人(特にBからE)が接道義務を満たせなくなり、困ってしまいます。
そこで、特定行政庁は、私道の変更や廃止によって接道義務違反となる場合には、私道の変更や廃止を禁止したり、制限することができます。


(3)壁面線の指定および制限(建築基準法第46条、第47条)

特定行政庁は、建築物などの位置を綺麗に揃える目的で、壁面線の指定をすることができます。この場合においては、あらかじめ、その指定に利害関係を有する者の出頭を求めて公開による意見の聴取を行わなければなりません。

壁面線の指定がされた場合は、建築物の壁またはこれに代わる柱や高さ2mを超える門または塀は壁面線を超えてつくってはなりません。
ですから、高さ2m以下の門または塀は壁面線を超えてつくることができます。

但し、例外があります。

地下の部分と特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可した柱などの場合は、壁面線の制限はありません。



平成12年問題24

建築基準法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 道路法による道路は、すべて建築基準法上の道路に該当する。

2 建築物の敷地は、必ず幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない。

3 地方公共団体は、土地の状況等により必要な場合は、建築物の敷地と道路との関係について建築基準法に規定された制限を、条例で緩和することができる。

4 地盤面下に設ける建築物については、道路内に建築することができる。

解説

選択肢1は、✖
道路法上の道路であっても、幅員が4m未満の道路は、原則として、建築基準法上の道路には該当しません。
原則として、幅員が4m以上の道路が、建築基準法上の道路に該当します(建築基準法第42条)。

選択肢2は、✖
「必ず」という部分が誤りになります。
幅員が4m未満でも特定行政庁が指定したもの(2項道路=みなし道路)については、例外的に建築基準法上の道路とみなされます(建築基準法第42条第2項)。

選択肢3は、✖
地方公共団体は、延べ面積が1000㎡超の大規模な建築物など一定の建築物の敷地が接する道路の幅については、条例で必要な制限を付加して、より厳しくできます(建築基準法第43条第3項)。そして、ここは制限の付加なので、緩和はできません。

選択肢4は、〇
道路は、人や車両が頻繁に通るので、原則として、道路内に建物などの建築物を建築することはできません。しかし、一定の例外があります。
通行の妨げにならない場合、一定の必要性がある場合には、例外が認められています。
道路内の建築制限の例外としては、4つあります(建築基準法第44条第1項)。その中に、①地盤面下に建築する建築物(第1号)も含まれています。


平成29年問題19

建築基準法(以下この問において「法」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 都市計画区域又は準都市計画区域内における用途地域の指定のない区域内の建築物の建蔽率の上限値は、原則として、法で定めた数値のうち、特定行政庁が土地利用の状況等を考慮し当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て定めるものとなる。

2 第二種中高層住居専用地域内では、原則として、ホテル又は旅館を建築することができる。

3 幅員4m以上であり、法が施行された時点又は都市計画区域若しくは準都市計画区域に入った時点で現に存在する道は、特定行政庁の指定がない限り、法上の道路とはならない。

4 建築物の前面道路の幅員により制限される容積率について、前面道路が2つ以上ある場合には、これらの前面道路の幅員の最小の数値(12m未満の場合に限る。)を用いて算定する。

解説

選択肢3は、誤りです。
建築基準法が施行された時点又は都市計画区域・準都市計画区域に入った時点で現に存在する道で幅員4m以上のものは、同法上の「道路」に該当します(建築基準法第42条第1項第3号)。選択肢のように、特定行政庁の指定を受ける必要はありません。特定行政庁の指定を受けて2項道路(建築基準法上の道路)となるのは、幅員4m未満の場合になります。


平成18年問題21

建築基準法(以下この問において「法」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 法第3章の規定が適用されるに至った際、現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道路法による道路は、特定行政庁の指定がなくとも法上の道路とみなされる。

2 法第42条第2項の規定により道路の境界線とみなされる線と道との間の部分の敷地が私有地である場合は、敷地面積に算入される。

3 法第42条第2項の規定により道路とみなされた道は、実際は幅員が4m未満であるが、建築物が当該道路に接道している場合には、法第52条第2項の規定による前面道路の幅員による容積率の制限を受ける。

4 敷地が法第42条に規定する道路に2m以上接道していなくても、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて利害関係者の同意を得て許可した場合には、建築物を建築してもよい。

解説

選択肢1は、誤りです。
「2項道路」となるためには、幅員が4m未満の道路で、第3章(いわゆる「集団規定」)の規定が適用されるに至った際、すでに建築物が立ち並んでおり、特定行政庁が指定したものである必要があります。
選択肢の「特定行政庁の指定がなくとも法上の道路とみなされる」とする部分が誤りになります。

選択肢2は、誤りです。
法第42条第2項の規定により道路の境界線とみなされる線と道との間の部分の敷地が私有地である場合は、敷地面積に算入されます。

選択肢3は、その通りです。

選択肢4は、「利害関係者の同意を得て」という部分が誤りです。
敷地が法第42条に規定する道路に2m以上接道していない、つまり、建築基準法上の道路がその敷地から離れたところにあって、その敷地が建築基準法上の道路とは接していないが、避難という観点から、敷地の周囲に広い空き地を有する建築物その他一定の基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合には、建築物を建築してもよい、ということになっています(建築基準法第43条第2項第2号)。


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