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赤坂一龍別館に夏の滋養をとりにいく

滋養をつけようと思って赤坂「一龍別館」。ソルロンタンを食べにくる。

今日も朝からもう暑い。ずっと歩いてこようかと思ったけれど途中で挫けてしまいそう。まず地下鉄で四谷まで行き、そこから歩く。
20分で2000歩ほどのほどよい散歩。腹が鳴る。
赤坂の町の南の外れのビルの一階。
テーブル3つに板間の小上がりに3テーブル。小さな店にオモニが2人、厨房の中に2人いる。
お店の言葉は韓国語。
24時間営業、年中無休。眠らぬ町と呼ばれた赤坂ならではのソルロンタンの専門店。
同じビルの5階に一龍本館って店があり、そこもソルロンタンがおいしいと人気の店だけど他にもビビンパのような気軽な韓国料理も揃う。

ところがここはほぼソルロンタンだけの専門店。他にあるのはスユックという茹でた牛すじ肉だけだった。
夜にくるとスユックとチャミスルで飲み、〆にソルロンタンというのが50年以上かわらぬここの楽しみ方だったのだけど、数年前にチヂミやチャプチェが増えた。

一龍別館もとうとう日本の韓国料理店風になっちゃうのか…、って心配したけど、ほとんどの人はソルロンタンを食べにくるそれまで通りを通せてる。
お店に入るとすかさずオモニが「ソルロンタン?」って聞いてくる。
注文をとるというよりもうちに来たっていうことはソルロンタンを食べに来たんだろう…、って確認作業。それでよし。
雪濃湯でソルロンタン。一龍特製の牛頬肉のスタミナスープという謳い文句に朝のお腹がキュンとする。

テーブルの上に料理がテキパキ並んでいきます。

キムチにカクテキ、韓国海苔におかずが8つ。もやしやゼンマイのナムルにキャベツのおひたし、にんにくの茎とおでんの煮物とどれもやさしい味わいのもの。ご飯がすすむオゴチソウ。

そしてまもなくソルロンタン。

象牙色です。
「雪濃湯」と称されるのがうなずけるうつくしさ。

牛肉や牛骨、野菜をひたすら炊いてできたスープで、おいしい肉と脂の香りがふわりとわきたつ。
匂いだけで、もうおいしい。

茹でた牛すじ肉のぶつ切りと春雨がスープに混じり、ネギがパラリと浮かんで風味を添えている。
塩と胡椒を使って好みの味に仕上げて食べる。
肉のうま味と脂の甘みでスープはどっしり濃厚味。飲み続けると唇や口の中がスベスベしてくる。スープに溶け込んだコラーゲン質のなせる技。
スープをたっぷり飲み込んだ牛すじ肉がまた旨い。
噛むとクチャっと潰れてく。ゼラチン質がムチュンと粘り、スープや脂を吐き出しとろける。肉感的なおいしさにウットリします。
すべすべとした春雨もスープをまとってなんともなめらか。口の中でにげまわる。

スープを飲んで、ご飯を口に含むとご飯までもがスベスベしてくる。
おかずもおいしい。季節、季節で種類は変わっていくけれど必ずあるのは卵焼きに黒豆にじゃこ。スープをたっぷり吸い込んだケランチムのような卵はしっとりなめらか。硬めに炊けた黒豆はコツコツ奥歯を叩いて壊れ、ピリ辛味の揚げジャコは顎においしいオゴチソウ。

キムチはゴリゴリ歯ごたえ痛快、キムチは若干甘めでなんともみずみずしい。キムチをのっけたご飯を海苔でくるんでパクリと食べる。そしてソルロンタンをゴクリと飲めば、思わず顔がほころんでいく。
パクリ、ゴクリ、ときおりズルリ。おいしいモノでお腹が満ちるシアワセにウットリしながら器は空っぽ。

ソルロンタンの鉢の底にはたっぷり胡椒が沈んでた。なのに辛みを感じなかった…、それだけ濃厚味だったということでしょう。体に元気がみなぎった。


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