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台無しなのにおいしい料理

東北から東京に戻って来ました。
北の寒さに比べれば、東京の冬はあったかい…、って思ったりする。
最近、食材の買いためをなるべくしないようにしてる。数日で使い切るだけの食材しか買わないことが、ダイエットに案外良かったりするので、その習慣が身についた。
だから冷蔵庫の中にはほぼ何もなく、家に帰る前に東京駅で夕食をとる。
どこにしようかなぁ…、と悩む。
長い間、バビーズヤエチカに行ってないなぁ。
今日みたいな日にはオーバカナルのオニオングラタンスープも捨てがたい。
温まるといえば玉丁の味噌煮込みうどんも捨てがたい。
あれこれ迷うも、今日はご飯をもりもりかきこみたい気持ち。日本料理のお店がいいなぁ…、と思案する。
そうだ、矢場とん!

味噌かつならばご飯をもりもり食べられる。昼にはいつも行列でかなり待たなきゃいけないお店。夜はどうかと来てみれば行列はなくすぐに座れる。ありがたい。

ここに限らず、コロナ以降の飲食店は夜の集客に苦労する。昼食を外食する人も夜には家で…、という傾向。
特にビールは家で飲めばいいじゃないって人が増えたからアサヒビールは売上減に歯止めがかからぬ。スーパードライは外食ブランド。一方、サントリーは業績がよい。モルツは家飲みビールのイメージが強いものネ。緊急時には何が利するかわからない。
鉄板ひれとんかつを選んでたのむ。

冷たい緑茶の入ったピッチャー。味噌が飛び散らないようにと紙のエプロン。ウスターソースに胡麻に一味にマスタードと、カウンターの上はにぎやか。快適に食べてもらいという気持ちが伝わる。

そして鉄板がやってくる。
鉄板の上に千切りキャベツ。
そしてひれかつ。
バチバチ音を立ててキャベツが焼けるおいしい匂いが漂い鼻をくすぐる。
匂いと一緒におびただしい量の蒸気が湧き出て視界を曇らす。

味噌だれをかけさせていただきます…、って声と一緒にザーッと味噌だれが注がれる。瞬間、スゴい勢いで湯気があがって味噌が焦げる匂いがしてくる。

味噌だれは常温。だからしばらくすると鉄板の温度が下がって湯気は失せ、味噌かつの全容があらわになってく。分厚いヒレかつが味噌だれをまとってツヤツヤ光る。千切りキャベウハ焦げてぐっしょり。

これほどの台無し感をもった料理は他にあまりないんじゃないかなぁ…。パン粉衣は千切りキャベツが発した蒸気でしんなりしてるし、千切りキャベツもすっかり熱が入ってしんなり。

でもその台無し感がおいしいんですよね…。蒸したようになった衣はさっぱりしてて、肉はふっくら。すりおろしたごまをたっぷり、芥子を塗って風味をつける。

肉の噛みごたえ、食感をたのしみながらも味はすっかり味噌の味。かつを食べようが千切りキャベツを食べようがほぼ同じ味がするのがオモシロイ。

桜漬けの食感、酸味で口がスッキリ。出汁のしっかりきいた赤だしでお腹をあっため満ちました。


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