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日暮里の一由そば。太い、おいしい、オキニイリ

上野で仕事が終わる。ひさしぶりに「一由そば」に行ってみようと電車に乗った。
上野からたったふた駅。東京からでも6つ目の駅というのにすごく遠くにやってきたような感じがしちゃう。
ひさしぶりに降りた駅の駅舎は立派に様変わり。京成電鉄のスカイライナーがここから成田直結で、大きなカバンを転がす人たちでごった返してなんともにぎやか。

駅前じゃなくて駅近。
しかも住宅街に入った路地というわかりにくい場所なんだけど次々、お客さまがやってくる。
表通りから路地に入った途端に、ゲソを揚げる香ばしい香りがただよってくるのネ。

ここはげそ天が売りの店。
メニューは豊富でカウンターの上に宙吊りされたショーケースの中にはさまざまな天ぷらが並べられてる。でもほとんどの人がゲソ天そばをたのむんですネ。

小さな空間。半分ほどが厨房で10人も入ればいっぱいになるんじゃないのかなぁ…、壁に向かって置かれたひとり用のテーブルが偶然空いてた。

一等席でございます。

太麺の小にジャンボげそ天、げそ寿司をつけ〆てたったの490円!
料理はテキパキできあがる。
料理を運んでお水を汲んで食べる準備がととのいました。テーブルの上には刻んだ赤唐辛子がおかれてる。

七味の直接的な辛みと違って、汁にじんわり辛みが溶け出す感じが好きで、こういう店はオキニイリ。
目を奪うのは大きなゲソ天。そばをすっかり覆うボリューム。でも実はこれでも実際の半分程度の大きさで残り半分は汁の中に浸かってる。タイタニックを沈めた氷山のごとき大きさ。箸をつっこみたぐっていくと麺がでてくる。

これが太い!
色黒。
そして角がクッキリ立った仕上がり。
さすがにスルスル啜り上げることができぬ重さで、ズルンと大きく息吸いながら口へと運ぶ。
一緒に汁が空気にのってやってきて、口の中がおもしろいほどにぎやかになる。

麺は硬くてちょっとモサっとするのだけれど、バッサリ歯切れて散らかっていく。噛むと徐々にとろけて粘り、そばならではの香りや軽いえぐみがおいしい。
汁がこれまたうまいんですネ。うまい。けれどいやらしいほど主張する不自然な旨みではなく自然なおいしさ。そばの風味を邪魔せぬていどのかえしの風味が出汁の味わいをひきたてて、ほどよき酸味が後口キリッとひきしめる。

ぶつ切りにしたゲソをつかったかき揚げ状のゲソ天は汁に浸かって崩れてちらかる。ゲソはクニュクニュ、食感たのしく衣はぽってり、汁を含んでとろけて麺に絡みつく。天ぷら油が汁に溶け出しコクがでるのもまたうまい。
ユニークなのがゲソ寿司で、ご飯に刻んだ紅生姜を混ぜて酢飯のように仕上げて上に刻んだゲソを押し付け押し寿司状に仕上げたもの。

酸っぱく香りもさわやかで、ゲソがパラパラ口の中を転げ回る感じもたのしい。こんな料理を作る発想がどこから湧いてくるんだろう…、って感心しながらパクリズルリとお腹が満ちる。

オキニイリ。


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