見出し画像

上等でユニーク、永坂更科布屋太兵衛の立喰コーナー

とてもユニークな立喰そばの店がある。

場所は新宿のメトロビルという商業ビルの地下。
永坂更科布屋太兵衛という老舗そば店の立喰コーナー。
実は隣に同じ屋号でテーブルサービスの店がある。
天ぷらそばやおかめそば。
そばも更科、生粉打ち、御膳そばといわゆる普通のそば屋のメニュー。
ちょっと上等なお店で、お客様もおじさま、おばさまが中心。
ちなみに永坂更科布屋太兵衛といえば、創業寛政年間。200年を超える歴史を誇る名店。

そのお店の隣に立喰コーナーがあるのですネ。
カウンターには12人ほど立てるでしょうか。
立喰だから回転はよく、人がぎっしり並んでいてもちょっと待てばすぐに空く。
隣のテーブルサービスの店も人気のお店で満席になってしまうことがままあって、そうするとかなり待たなきゃいけない。
だから、テーブルサービスのお店で…、と思って来たけど腹が減ったから立喰コーナーでいいやという人もかなりいる。

オモシロイのが調理のシステム。
カウンターの中にいるのはおばちゃんスタッフ。
手元にあるのは揚げ置きの天ぷらと温かいかけツユと冷たいつけダレ。
ネギやわさび、七味などの薬味はカウンターに置かれててメニューはなくて券売機にて先払い。
食券渡すとお店の人が壁に開いた小さな小窓から「かけ一杯」とか「ざる一枚」とかって声をかける。
その四角い窓の向こう側は隣のテーブルサービスの店の厨房で、麺はそこで茹でられる。
茹でた麺を丼に入れたりせいろにのせたりしたものがその小窓から職人さんが手渡しし、お店の人は汁をかけたりタレをつけたりし、必要に応じて天ぷらをのせて提供するだけというもの。
今日は穴の間から向こうのお店の職人さんと目があった(笑)。

品揃えは個性的。
海老天だとか野菜天とかいわゆるそば屋の定番天ぷらはほとんどなくて、あるのは肉天、春菊天のかき揚げものが2種類とイカ天だけ。それ以外は月見、きつね、わかめと本当に最小限。
肉天、春菊天ともに分厚くボリュームたっぷりで、肉天の肉は茹でた分厚い豚バラ肉をサイコロ状にカットしたものを筒切りのネギと一緒にざっくり揚げたもの。
春菊天にはエビが6尾ほども混ぜて揚げたもの。

ここで好きなのはその春菊天。
オキニイリの食べ方は、まずそばをかき揚げの上にたぐりあげ大きなかき揚げを汁に沈めて蕎麦だけ食べる。
更科らしい極細の麺。ばっさり歯切れて散らかる感じは立喰コーナーでも変わらず健在。
麺を堪能しているうちに、春菊天の衣が汁をゴクゴク吸って徐々にふくれてとろけてちらかる。衣の油が汁にまじってそれが蕎麦にからんで味わい濃厚になる。
春菊の合間からエビがゴロゴロ、小さいながらも6尾ほど転がりだしてくるのがうれしく、汁が徐々に春菊色になっていくのもおゴチソウ。

そばや汁は永坂更科布屋太兵衛のものです。
かなり上等。けれど具材がボリュームたっぷりでお腹いっぱいになるのがいいのでしょうネ…、若い人たちから大食いの中年紳士までがずらりとならんでにぎわう。
ちなみに値段はどれもが700円前後というちょっと上等価格でそれでも流行っているのが本物ならでは。オキニイリ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?