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生きてたら59回目の誕生日だったんだよね!

タナカくんがうちに引っ越してきたときに運んできた段ボール箱。徐々に片付けていくね…、って行っていたけど何年経っても一向に片付く気配はなくってずっとそのままだった。
彼が逝ったときに、全部捨てようかと思ったけれど、これも彼の生きた証なんだなぁ…、と思って捨てずにおいた。
でも開けることができなくってネ…。
半年ぐらいはクロゼットの中に片付け、見ないことにしていたのだけど…。

気持ちが落ち着き、毎月一個。
開いて中を整理して、捨てるべきものは捨てお母さんが見ればよろこぶに違いないものは月命日に間に合うように送り続けて、そろそろ残りも数個になった。

先月開いた箱の中に、高校の卒業アルバムが入ってた。
どこにいるんだろう…、と思って探して見つけたときはうれしかった。
ボクの知らないタナカくん。
ボクの知らない時代の彼です。
太ってなくて髪の毛長くてちょっと緊張した面持ちが初々しくてね。
はじめて見るのになつかしい感じさえした。

タナカくんの写った写真をデジカメで撮ってそれはボクのものとして、アルバム自体はお母さんに送った。
電話でいろいろおしゃべりしました。

3月9日はタナカくんのおじぃさんが亡くなった日。
神さまが代わりに授けてくださったんだ…、って親戚みんなで喜んだこと。
小さいときからピアノが上手で、弾き語りをよくしてたこと。
真面目で勉強を言われなくてもしてたこと。
おしゃべりしながらいつものように泣いて笑って、また来月と電話をおいた。

50過ぎてからはずっと坊主頭にしてたけど、知り合ってからしばらくは髪を伸ばしていたんです。
巻き毛の髪で、萩尾望都が好んで描く男の子の髪みたいでしょう?って自慢をしてた。

ただ、癖が強いから髪型が決まらないのが悩みのタネ。
それで手のひらに収まる小さな象牙の櫛をお誕生日に買ってあげたことがある。

長らく行方不明だったのが、デスクを整理してたら出てきた。
お守り代わりにずっともって歩いてる。

印鑑や法人口座のキャッシュカードやら、形がまばらなものをまとめて運ぶのに、フェルトのバッグにゴム編みにしたニットの筒を合わせていつも持ち歩いてる。

折り畳んだ筒の中にタナカくんの写真を入れた携帯用の写真立て。
フェルトのバッグと筒の間が櫛の定位置。

奮発してエルメスで買った櫛です。
なめらかで毛にやさしくて肌触りもやさしかった。
本当はケースもあったんだけど、それは無くしてしまったんでしょう…、いくら探しても見つからない。
それもタナカくんらしいよなぁ…、と思って髭をすいてみた。
タナカくんに触ってもらったみたいに感じてそこだけポワンとあったかくなる。くやしいほどになつかしい。

今日は全体公開とさせていただきました。

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