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ダイヤモンドオフェンス(削除した章)〜終末のワルキューレから学ぶ:相手のプレーを読む!〜Vol.2

前回のダイヤモンドオフェンス (削除した章)〜即興プレーの構造〜Vol.1の続きから書く。

書籍「ダイヤモンドオフェンス :サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法」にはページ数の都合で、どうしても入れことができなかった章がある。


今回は、最近観たアニメから学んだことをこの章に入れることにした。なぜなら、その方がより「相手のプレーを読む」ということがイメージしやすいのではないかと思ったからだ。


終末のワルキューレ:佐々木小次郎の千手無双


どのようにして相手のプレーを読むのかについて、佐々木小次郎から学んだことがある。

先日、Netflixでアニメ「終末のワルキューレ」を観た。その章では、海の神ポセイドン 対 佐々木小次郎(剣豪。宮本武蔵と決闘したことで有名)の闘いが描かれていた。



佐々木小次郎は、ポセイドンとの死闘の中で「千手無双」という技を使った。


千手無双:相手のあらゆる動きを正確に予測する技


佐々木小次郎が、今まで長きにわたり闘ってきた相手の剣技を頭の中でイメージして何回もシミュレーションをすることで、千を超える攻撃パターンを記憶する。それが相手を読む、予測する「千手無双」につながるのだ。なぜなら、どのような相手の攻撃も、千を超える攻撃パターンと類似したものになるからだ。

ポセイドンの歩き方や呼吸法など、肉体が発するわずかな情報を読み取り、頭の中でポセイドン像をイメージ(構築化)する。佐々木小次郎は、相手の攻撃が見えているのではなく、すでに経験していることなので「相手のプレーを読む」ことができるのだ。

実際の決闘の場面で佐々木小次郎は、ポセイドンの怒涛の攻撃に対して、今まで経験してきた、数多の強者の攻撃パターンの中から、瞬時に直感的にその状況に対応する攻撃を繰り出すことができた。

佐々木小次郎は、ポセイドンとの闘いの最中にも、相手の技を学び、次の攻撃に生かしていた。闘えば闘うほど進化するのだ。これは自己組織化(創造的かつ自然発生的な順応思考の振る舞い)だ。


例えば、メッシは佐々木小次郎のように千住無双ができる世界最高の選手だ。メッシも今まで多くの試合を経験することで、膨大な攻撃パターンが頭の中にあり、瞬時に直感的に、そのプレー状況に最適なプレーを、類似した攻撃パターンの過去の記憶の成功体験の中から選択している。

クラックと呼ばれる超一流選手は相手のプレーを読み、予測する力に優れている。過去の試合から多くのことを学び、自然と多種多様な攻撃パターンを身につけ、その状況に最適なプレーを直感的に選択している。試合中にも相手チームや対峙する相手について学び、その局面を打開する力、進化する力、自己組織化する力を持っている。それが即興プレー、創造的なプレーとなって表出するのだ。


ここから、本に入れることができなかった章になります。


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どのようにして相手のプレーを読むのか?


著名人の言葉:
チンパンジーは現在の状況や実際に見える世界に重点を置いて行動するのに対し、人間はその構造を一部犠牲にし、現在の状況のみに依存するのではなく、過去の経験を生かし未来の状況を予測する情報統合の機能(記憶の過去、現在、未来の三位一体)を獲得したと考えられる。一瞬にして、過去の世界から未来の世界まで、時空間を操作できる機能である。
塚田 稔(工学博士、医学博士、脳科学研究者)


人間は、チンパンジーとは異なり、現在のプレー状況(短期記憶)を認知し、過去の記憶(長期記憶)から未来を予測する能力を有している。選手は現在のプレー状況から次に起こること、プレーをする環境、相手、チームメートとの相互作用を予測することができる。これが「相手のプレーを読む」ということだ。

過去のプレー記憶(長期記憶)の中から、瞬時にプレーオプションを無意識的に探し、直感的に現在のプレー状況と類似した最適なプレーオプションを選択する。これが未来のプレーを創造する能力を持つということであり、即興プレーである。


サッカーの試合の状況例:
【記憶の現在】
選手が試合中にスペースと時間を認知する(ボールを受ける前。短期記憶)。どこにオープンスペースがあるのか、現在プレーをしている場所でボールを受けた場合、相手との距離によってどのくらいのプレー時間があるのか。

【記憶の過去と未来】過去の記憶のプレーオプションから、現在の状況に最適なオプションを予測し選択する。これは実際にプレーをしている状況、実行である。ボール保持者、もしくはボールを保持していない選手の戦術的アクションである。相手のプレーを読み、長期記憶の中にある、現在のプレー状況と類似した状況から最適なオプションを選択する。         

【記憶の現在】
ボールをパスした後、ボール保持者ではない選手が特定のアクションを実行した後。現在のプレー状況を認知し(短期記憶)、スペースと時間を再認知する。


この繰り返しがサッカーの試合で起こっていることだ。これが相手のプレーを読み、予測する、記憶の三位一体(記憶の過去、現在、未来)であり、選手間の相互作用を通じて集団戦術を最適化するということである。

相手のプレーを読み、予測し、その状況に最適な即興プレーを実行するという部分において、佐々木小次郎の剣技(千手無双)とサッカー選手の戦術的アクションは同様な部分があることに気がつかされる。

佐々木小次郎とメッシは、相手のプレーを読む、予測する、記憶の三位一体(記憶の過去、現在、未来)を体現している。ダイヤモンドオフェンスを実行する際の考え方の根本がここにある。

試合中の選手の内部(頭の中)で起こっていること。それが相手のプレーを読み、予測し、チームメートとの相互作用から即興プレーを創造することなのだ。


次回に続く

次回は「スペースと時間」について


参考文献

坂本 圭. ダイヤモンドオフェンス 〜サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法. 日本文芸社(2021)

終末のワルキューレ④. 作画:アジチカ 原作:梅村真也 構成:フクイタクミ. ゼノンコミックス(2019)





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